なんか一人だけ世界観が違う   作:志生野柱

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 連絡通路のある三階に降りると、蒼褪めた色の膿が天井の角を這い廻っているのが目に付いた。

 どこか明確な目的地がある動きではなく、廊下の向こうまで行ったかと思えば、うごうごと蠢いて、フィリップたちのいる階段の方に向かってくる。

 

 宛ても無く彷徨っているか──何かを探しているような挙動だ。

 

 「下がりなさいフィル。私が前衛よ」

 

 フィリップもミナもとっくに抜剣していたが、戦闘陣形にはなっていなかった。

 淡々とした、いつも通りの眠そうな声の指示に、フィリップは躊躇なく従い、ミナの斜め後方で構えた。

 

 「僕は遊撃担当だね」

 「そうよ。増援、奇襲、私の想定していないあらゆる全てに警戒しつつ、致命の一撃を狙いなさい。その代わり──」

 

 ミナが対の魔剣を構えるのと同時に、その正面にティンダロスの猟犬が不明瞭な姿を現した。

 猟犬の姿は相変わらず不明瞭だったが、その身体の何処にも曲線が存在しないことと、蒼褪めた脳漿を全身から滴らせていることは分かる。鋭い歯の並ぶノコギリのような口からは、槍のような舌と青白い涎、憎悪に満ちた唸り声が漏れていた。

 

 悍ましい姿の怪物を前に、ミナは漆黒の剣に口付けし、異常に発達した犬歯を覗かせる獰猛な笑顔を浮かべた。

 

 「──きみには指一本、粘液の一滴も触れさせないわ」

 

 フィリップも同質の笑みを浮かべ、ティンダロスの猟犬に目を向けた。

 猟犬は相変わらず、その姿の全容も、細部も、何もかもが判然としない。大きさが何となく分かるくらいだ。

 

 言うまでもなく、そんな相手と戦うなんて自殺行為だ。特に、相手の一挙手一投足に気を配り、一センチ単位の間合い管理を必要とする近接戦闘に於いて、相手の全容が把握できないのは致命的と言える。

 

 だがミナの技量なら、防御に専念すれば一撃も喰らわず夜明けを迎えられるだろう。

 いや、吸血鬼という種族に疲労の概念がないことを考えると、もっとか。ミナの技量だけを考えるなら無限に、性格も考慮すると飽きるまでは戦える。

 

 「……頼もしいね」

 

 フィリップは心の底からそう言って、身体を地面に投げ出すような前傾姿勢を取った。

 

 ミナが何かの魔術を使い、廊下を毒々しい赤一色に染め上げる。

 ペンキを流したような稚拙な塗り潰しで、芸術性は皆無だ。武骨で埃っぽい石造りの方がまだ見映えは良かったが、廊下は端から端までどろりとした血に覆われて、天井の隅や建材の石なんかが持っていた『角』が消えていた。

 

 「《ブラッドコフィン》──広さはモルグだけれどね」

 

 ミナはフィリップを振り返ることなく、冗談っぽく笑った。

 

 中級魔術『ブラッドコフィン』は、血で出来た棺に相手を閉じ込める拘束魔術だ。大きさの上限は精々3メートルくらいなのだが、今は10メートル以上にまで広がっている。魔力量と演算能力に物を言わせた無茶な芸当だが、猟犬の逃亡阻止には十分だ。ついでに言えば、物音を聞き付けた生徒たちが目を覚ましても、扉は押さえつけられていて開かない。怪物同士の戦闘を目にすることはないわけだ。

 

 問題があるとすれば、猟犬の唸り声に宿る憎悪が色濃くなったことか。

 今までミナに向けていた殺意が「行きがけの駄賃だ、ついでに殺そう」くらいだったとしたら、今は完全に「邪魔者を排除する」という意識に切り替わっている。

 

 まあ、曲線時空の存在を殺すことに関して、ティンダロスの猟犬が手を抜くことはない。道中のついでだろうが障害排除だろうが、どちらにせよ全力で殺しにかかってくるので、殺意の量に大した意味は無いのだが。

 

 「すごくいい手だよ、ミナ」

 「ありがとう、フィル」

 

 フィリップとミナは楽しそうに言葉を交わす。

 

 今までの傾向から言うと、猟犬はフィリップとミナを最優先殺害対象にはしていない。

 『この時間』にまで出張ってきた理由がフィリップやミナなら、先日のエンカウントで決着をつけていたはずだ。ティンダロスの猟犬が曲線時空の住人を前にして撤退を選ぶなんて、他に誰か目的の人物が居て、そいつに逃げられそうになった時以外は有り得ない。

 

 そして今、ミナは猟犬の移動を封じた。

 “標的”の追跡を阻む、明確な敵になったわけだ。

 

 「──!!」

 

 猟犬が身も竦むような咆哮と共に、姿勢をぐっと下げる。

 『伏せ』でもするような仕草だったが、その挙動は二人とも見覚えのあるものだ。ここから千キロ以上も離れた荒野の古城で、獅子頭の悪魔マルバスが見せた奇襲の構え。

 

 「ミナ、動きを追わないで、防御を置いて!」

 「っ、!」

 

 フィリップが警告した直後、ミナが双剣を振るい、バン! と扉を蹴立てたような鈍く乾いた音と共に猟犬を弾き飛ばす。

 猟犬の攻撃は、跳躍前の構えと跳躍後の攻撃寸前しか見えなかった。途中のページが抜け落ちた本のように、切り貼りされたフィルムのように、跳んでいる最中の猟犬の姿は不自然に消えていた。

 

 「速いわけじゃない。動体視力を振り切られたのではなく、認識を阻害されたわけでもない。……気色の悪い動きだわ」

 

 攻撃を魔剣に阻まれた猟犬は、勢いよく飛び退いて元の位置に着地した。どす黒い赤の液面は一滴の雫も跳ねず、波の一つも起こらず、硝子のように凪いでいた。

 

 それから何度も、ミナはフィリップの動体視力を振り切る速度で剣を振り、その度に激突音が響いた。

 奇妙なことに、激突音は一度毎にその性質を変えていた。金属同士が擦れる耳障りな音がしたかと思えば、次の一撃はガラスが割れるような甲高い音だったし、二度続けて鈍くくぐもった音がした次には、笛のように鋭く長い音がした。プールに飛び込んだような豪快な水音がした時には、ミナの魔術が破られたか、さもなければミナが重傷を負ったのではないかと思ったほどだ。

 

 硬質な外皮を持つティンダロスの猟犬と、鉄すら切断する魔剣の衝突にしてはいやにバリエーション豊富な音の羅列。

 あのティンダロスの猟犬を──フィリップの智慧にある非神格の中では最強の神話生物を相手に、幾度となく防御を成功させている証に、フィリップは思わず口元を緩めてしまう。

 

 強い。

 人間を殺す生き物と、人間を餌にする生き物の殺し合いは、そんなシンプルな感想を強烈に抱かせるものだった。

 

 火花が散り、粘液が飛び散り、時には苦悶にも似た鳴き声が漏れる。

 ミナが押している。いや、圧倒している。猟犬の不明瞭な体には幾度も魔剣が激突しているが、ミナは一撃も喰らっていない。

 

 「フィル、今」

 「分かってる!」

 

 一見するとミナが圧倒的に有利だったが、それでも彼女には分かる何かがあったのだろう。指示する声は、フィリップと模擬戦をしている時と同じくらいには楽しそうだった。

 

 ミナが差し込んだカウンターに反応して、猟犬は大きく下がった。

 そしてもう一度──フィリップにもミナにも予測できる直線的な軌道で飛び掛かった。

 

 その行動を選択するであろう場所に追いやり、その軌道で攻撃するであろう構えを取ったミナの、言葉無き誘導によるものだ。

 

 ティンダロスの猟犬は跳躍した直後に姿が掻き消え、過程を飛ばして結論だけが現れる。猟犬はミナの前で大口を開け、真っ白で嫋やかな腕に噛みつこうとしていた。

 そして、フィリップは既に、その真横で長剣形態の龍貶し(ドラゴルード)を上段に構えていた。

 

 ミナの左手は猟犬が食らいつく寸前で霧に変わり、ノコギリのような歯の上下が虚しく噛み合わさってガチンと鳴った。奇しくも歯を食いしばる形になった猟犬の首に、龍骸の剣が振り下ろされる。

 

 フィリップの手に長剣を通して、ぎちぎちぎち、と、繊維質な干し肉に無理矢理ナイフを入れたような手応えが返ってきた。

 明らかに硬い外皮を抜いて肉を斬っているのに、血は一滴も出なかった。

 

 「──!?」

 

 しかし痛みは感じているのか、猟犬は驚愕と苦痛と、やはり憎悪に満ちた、悲鳴にも似た咆哮を上げる。

 

 ミナの右手が閃き、漆黒の長剣が龍骸の蛇腹剣を上から叩いて、更に深々と食い込ませた。

 フィリップは思わず瞠目した。それは不意の衝撃にではなく、ミナの追撃を以てしても、剣が追加で1センチほど沈んだだけだったからだ。腕に伝わる衝撃からすると、或いは岩すら砕く威力だったのに。

 

 猟犬は耐えかねたように啼くと、滅茶苦茶に動いてフィリップとミナから距離を取った。

 

 「硬い……! でも凄いね、流石だよミナ。輪郭も分からない相手と互角以上に戦えるなんて」

 「あら、殺気が読めるなら簡単な相手よ。凄く素直だもの」

 

 いつものミナなら「所詮は獣ね」なんて冷笑するところだが、口許は牙を剥き出しにする獰猛な笑顔の形だった。

 

 「なるほどね、全然分かんないや」

 

 フィリップもそう言って笑い、剣の柄にある金具を弾いた。

 小さな金属音に続き、じゃららら、と鎖の音が響く。

 

 数歩踏み込んで、足から腰に、腰から肩に、肩から腕に力を伝えていく。もう一年以上も続けている身体操作は、何も考えていなくても勝手に実行された。

 

 蠍の毒針のような動きで伸長した蛇腹剣の突端が猟犬に襲い掛かり、概ね頭頂部と思われる辺りに突き刺さる。その寸前で猟犬が更に後退し、龍骸の剣は血の棺の床で小さく跳ねた。

 

 「良い追撃よ、フィル。でも、それ以上前には出ないことね」

 

 ミナより二歩ほど前に出ていたフィリップは、その警告を聞くが早いか飛び退いた。

 直後、フィリップの頭があった位置を、青白い粘液を纏った槍が貫いた。猟犬の伸縮する舌だ。

 

 フィリップの腕より細い舌と、フィリップの前に躍り出て防御したミナの長剣の激突は、銅鑼のような太く轟く音を出した。

 

 蛇腹剣を引き戻す動きで舌を切り裂き、抉り削ごうと試みたフィリップだが、粘液のせいで刃も鑢のようなチェーンも滑って役に立たなかった。フィリップは攻撃が効かなかったことより、この後のメンテナンスのことを思って憂鬱な気分になった。

 

 「うえぇ……ねぇミナ、これって水で落ちると思う?」

 「きみの方が詳しいでしょうに……フィル、追撃」

 「ホントに?」

 

 猟犬が唸りながらミナを睨み付けている──表情どころか顔の形さえ判然としないので、なんとなくの推察だが──のを見て、フィリップは流石に躊躇った。ミナならともかく、フィリップ程度の技量で攻撃できる隙があるようには見えなかったからだ。

 

 「もう遅いわ、動かないで」

 

 ミナが呆れ交じりの声で制した直後、猟犬が飛び掛かり、剣戟のような派手な音と共に弾かれる。青白い粘液に混じって、オレンジ色の火花が飛び散った。

 

 「フィル、私の指示には何も考えずに従いなさい。きみの反応速度と運動能力くらいは計算してあげるけれど、躊躇までは読めないわよ」

 

 苛立ちを滲ませるミナに、フィリップは小さく頷いた。

 彼女の戦闘センスはルキアやステラ以上だ。こと戦闘に関して言えば、最適解を導き出す速度はステラ以上かもしれない。まぁミナは面倒だと感じたら最適解でも棄却するので、必ずしもステラより良い判断が出来る訳ではないのだが。

 

 「二歩下がって剣を伸長。追撃準備」

 

 相変わらずのページの抜け落ちた挙動で突進してきたティンダロスの猟犬を鋭い剣戟音と共に弾き返し、ミナは食卓で「調味料を取って」というような調子で指示した。

 戦意に満ちているより余程受け入れやすい声色に、フィリップは抵抗なく従う。

 

 ミナがもう一度防御したとき、猟犬は苦悶の呻きと共に、大きく姿勢を崩した。ミナの足元に、輪郭が全く判然としない、青白い膿で覆われた何かが落ちていた。

 

 今だ、と確信したフィリップは、腰から上の柔軟性を完璧に使い、自分の身体をも鞭の一部にする動きで剣を振るう。

 金属音にクリアな風切り音が混ざり、ソードウィップ形態の龍貶し(ドラゴルード)は主人の命令に忠実に、不可思議な怪物の首筋を削ぎ飛ばした。龍骸の刃は、自らを穢していた蒼褪めた脳漿を、その一撃で振るい落とした。

 

 「──!!」 

 

 先の攻撃でぱっくりと割れていた傷口を、蛇腹剣が駄目押しのように切り裂き抉り、猟犬は身の毛がよだつような絶叫を上げた。

 

 効いたのか?

 フィリップがそう思ったとき、ミナの足元に落ちている物の正体に見当がついた。細部は全く判然としないが、食肉目と偶蹄目の合いの子のような奇妙な形の肢だ。

 

 「やれる、やれるよ、ミナ! 流石だ!」

 

 フィリップは興奮して叫んだ。

 ティンダロスの猟犬については、恐ろしい情報を嫌というほど知っている。人間に限らずこの時間の存在全てを憎悪していることも、人間を狩り殺すのに十分な性能を持っていることも、あのシュブ=ニグラスとマイノグーラの末裔であることも。

 

 外神の末裔だからフィリップに敵対しない、というロジックが成立しないのは、去年の春に黒山羊に襲われたことから明白だ。それに、外神の智慧は「人間を殺すには十分すぎる相手だ」と、声高に警告している。

 

 それをフィリップが、邪神の手を借りずに倒す。

 何とも心躍る、それこそ英雄譚に描かれるべき大偉業と言えるだろう。吟遊詩人や劇作家たちには、龍狩りのことなんかより、これを題材にしてほしいほどだ。尤も、健常者にとっては狂気としか思えない記述になるし、ティンダロスの猟犬を知る者にとっても、やはり「それは無理だろ」と狂人の戯言のように思われる作品になってしまうが。

 

 ミナは冷たい薄ら笑いを浮かべ、「もう少し遊びたかったわね」と呟いた。

 

 猟犬は切断された左足を再生させると、憎悪だけでなく憤怒をも滲ませる唸り声を上げて威嚇した。

 もう勝った気でいる敵対者に、「まだ終わっていない」と継戦の意思を示すようでもあった。そして、それはただ意地を張っているだけではない。

 

 フィリップとミナは猟犬の唸り声が奇妙に引き延ばされ、鈍く、低くなっていく気がした。

 それは声そのものが変化したり、二人の耳や脳に変調があったわけではない。音を伝える空間そのものが変調を来したからだ。

 

 目の前の景色がネッカー図形のように裏返り、天井も床も壁も、周りの全てがペンローズ的な実在不可能形に捻じれた。フィリップとミナは歪曲の只中にいて、理解不能な情報の濁流で溺れていた。

 何が起こっているのか、具体的に空間がどう曲がっているのかは全く分からない。しかし二人は「ここは穢れている」と、強烈に感じた。その感情的情報だけは、何も考えられなくても体感的に取得できた。

 

 「ミナ……!」

 

 喘ぐように名前を呼んだフィリップは、数秒前まで左前にいたミナを振り返った。この歪んだ空間の中では、目の前にいる相手を見るために振り返らなくてはいけなかった。

 

 「フィル、下がれる?」

 「無理! 見て!」

 

 ミナがフィリップの方を振り返ると、フィリップの下半身は腰から下が上下逆転していた。床から腰が生え、天井に向かって足が伸び、靴底から十センチくらいのところに上半身が浮かんでいた。

 

 「……それ、痛くないの?」

 「痛くないどころか、目で見ない限り異常無しだよ! ほら見て!」

 

 フィリップの上半身が腕を振ると、天を突く両足がシャカシャカと走るように動いた。どうやら感覚や運動に問題はないらしい。切断されたように見える上半身からも、血は一滴も流れていない。

 

 「問題は動けないってことだね……ミナ、前!」

 「っ、ぐっ!?」

 

 ミナはフィリップが鋭く警告するより早く反応していたが、それでも遅かった。

 

 猟犬が前足であろう部分を振り下ろし、ミナの肩口から胸にかけて深々と切り裂いた。ミナは反応して防御しようとしていたが、剣を持ちあげるのに失敗していた。

 肘を曲げて剣を交差させるだけの動きだが、手首は肘を中心とした弧では有り得ない長大な距離を移動した。

 

 毒々しい赤色に染まった廊下は、今や直視できないほどに支離滅裂だ。

 しかしその中でも、ミナの胸元から噴き出た血液は目に痛いほど鮮やかな赤だった。

 

 胸元の傷は一瞬で塞がるが、噴出した血は戻らない。液体にあるまじき挙動で天井に向かって落下すると、そこで血溜まりになった。

 

 「ミナ、霧化して下がるんだ! というか、下がる方法を……方向を探して!」

 「駄目よ、きみが無防備になるわ!」

 

 悲鳴のようなフィリップの警告を、ミナは厳しい声で却下した。

 

 「今でも十分無防備だよ! 奴はこの空間でも自由に動ける──、ぁ」

 

 跳んでみたり、走ってみたり、横歩きしてみたり、ありとあらゆる移動を試みていたフィリップだが、一歩たりとも移動できてはいなかった。

 当然だ。腰から下は180度反転して、フィリップの足はお腹の辺りの虚空を延々と蹴っているだけなのだから。宙を蹴って移動する技を持たないフィリップが、一歩でも動けるはずがない。

 

 猟犬は自分の狩場に引きずり込んだ獲物のうち、弱い方を先に黙らせるつもりのようで、そんなフィリップ目掛けて飛び掛かった。

 

 ──死んだ、と思った。

 

 時空歪曲の内側は上下左右さえ狂う無法則空間だ。踏み出した足が自分の背中を蹴り、前に投げた石が耳から飛び出すような、混沌が支配する世界。

 猟犬にとっては領域外からの攻撃を捻じ曲げる防御であり、獲物を行動不能に陥らせる拘束でもある。辛うじて攻撃ではないが、攻撃性能なら猟犬本体が十分すぎるほど持っている。

 

 視界の端でミナが身体を霧に変え、同時に全方向に移動することで、フィリップを庇う位置に移動するにはどう動けばいいのかを最速で模索していた。

 

 だが、遅い。

 猟犬がノコギリのような歯の並ぶ顎を開き、蒼褪めた脳漿を涎のように飛び散らせながら、滅茶苦茶な軌道で──フィリップには分からない、滅茶苦茶な空間の中にある最短経路でフィリップの喉笛を食い破る。

 

 

 

クトゥルフ神話要素の強さ塩梅

  • 多すぎる。もっとナーロッパ強くていい
  • 多いけどまあこのぐらいで
  • ちょうどいい
  • 少ないけどまあこのぐらいで
  • 少なすぎる。もっとクトゥルフしていい
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