真夏の太陽の下で、熱中症ではない発熱者が着々と増えている。
発熱と咽頭痛で施設から往診依頼、新型コロナ迅速抗原検査陽性。
実はもう一人発熱者がいると、念のために抗原検査を実施するとこちらも陽性。
お二人とも昨年は新型コロナワクチンは接種していない。いずれも基礎疾患のある90代要介護高齢者。ご家族と相談し抗ウイルス薬を内服することになった。
高齢者施設での新型コロナ集団感染が増えている。
いまさら騒ぐな、という人もいるだろう。
しかしコロナが5類に移行してからの1年間、コロナによる死亡者は32576人。同期間中のインフルエンザによる死亡者(2244人)の実に15倍だ。
うち97%は高齢者。特に要介護高齢者や基礎疾患のある人にとって致死的なウイルスであることは5類に移行したからといって変わるわけではない。
一方で5類移行後、高齢者の接種率は大きく下がっている。
2025年3月時点で65歳以上の高齢者における定期接種率はなんと約20%。インフルエンザワクチンの接種率は60~70%で推移し続けているというのに。
比較的安全なインフルエンザに対するワクチン接種が高率なのに、15倍もの死亡者が出ている新型コロナのワクチン接種が進まない。なぜなのか。
昨年は「今年はワクチンは打たなくていい」「今年はインフルだけでいい」と判断する患者さんがご家族がかなり増えた印象がある。本気でmRNAワクチンが危険だと信じている人もいまだにわずかにはおられるが、多くは「もうコロナは終わった」と思っておられるようだ。数年間インフルも流行しなかったので、そっちもついでにいらないと考えている人も増えた。もちろん特例補助が打ち切られ、経済的負担が生じるようになったこともあるかもしれない(中には新型コロナは打たないけど、より高額な帯状疱疹ワクチンは打つ方というおられるが)。
ワクチンは、いわばシートベルトだ。
事故を防ぐ効果はないが、事故にあったときの被害を小さくできる。
新型コロナワクチンも感染予防効果は減弱しているとはいえ、重症化・入院・死亡のリスクを概ね半減させる。
もう充分生きた、新型コロナで死ぬというなら本望。
そうおっしゃるならワクチン接種を強く勧めたりはしない。
しかし感染してから重症化を心配して抗ウイルス薬を飲むというなら事前のワクチン接種のほうが安全だ。しかも抗ウイルス薬は高額だ。薬価改定で安くなったとはいえ5日間で86,596円。1割負担なら約9千円で済むが、残る9割(77,936万円)は公費が負担することになる。
夏が終わるとワクチン接種の季節が来る。
国や自治体はコロナワクチンの接種がもう少し進むよう補助率を上げてはどうか。財源が厳しい、インフルかコロナかの二者択一なら、むしろコロナを優先的に接種されるようにするべきではないか。
コロナは終わっていない、というか、終わるものではないのだから。