世界で最も複雑な立体都市重慶の都市構造
case | 事例
重慶は、中国の嘉陵江と長江の合流点に位置する都市であり、「山城」や「8D都市」で知られる。地形が複雑であるため、都市計画や建築の常識を覆す特徴を持つ。高密度のインフラ、多層的な都市化、人間の活動と自然景観の融合の面から、都市計画や建築の研究対象として注目されている。
この都市の最大の特徴は、立体的にゾーニングされている空間構成にある。平坦な都市では道路や建物が水平に配置されるが、重慶では地形に応じて異なる階層に建物の入口や道路が配置される。例えば、30階建てのビルであっても、道路の高さによって1階、12階、20階がそれぞれ「地上階」となりうる。こうした立体的な都市構造により、歩行者、車両、鉄道が異なる層に分かれて機能できるようになっている。都市管理の観点から見ると、重慶は国の直轄市であり、その管理範囲は農村地帯、周辺の衛星都市、自然保護区を含む広大な地域に及ぶ。中心部には経済活動の核となる地域があり、郊外には新興産業拠点が点在する。分散化された地域の経済発展をつなぎ合わせることも求められている。都心部ではかつての工場が文化施設やテクノロジー拠点に再利用され、新興エリアの両江新区では、環境に配慮したスマートシティづくりが進んでいる。
重慶の立体都市は、建築デザインだけでなく都市全体の構造から形成されてきている。中層階には住居や商業施設が配置され、低層部には主要な交通インフラが集約される。上層階には公園や文化施設が設置され、都市全体が高度別に異なる機能を果たしている。代表的な事例として、マンションの6、7階部分を駅舎として使用しているモノレールの李子壩駅や、高層ビル群の頂上を結ぶラッフルズシティのスカイブリッジなどが挙げられる。交通インフラも重慶の特徴の一つである。地下鉄やモノレールは山間部を貫通する構造となっており、道路網も立体的に整備されている。五層構造の「黄角湾インターチェンジ」を含む40以上の大規模橋梁が存在する。さらに、険しい地形に対応するため、ケーブルカーやエスカレーターも都市交通に組み込まれている。その他、定期的に発生する洪水や地滑りへの対策として、段階的な水辺整備や緑化された擁壁の導入、透水性舗装や屋上緑化を活用した「スポンジシティ」構想も進められている。
重慶は単なる「山城」ではなく、都市計画の極限を試す実験場と見ることもできる。平坦な土地が不足している中で、人口密度の課題に直面する世界の都市にとって、重慶の立体都市モデルは解決策となる可能性がある。建物を積み上げ、地形に適応し、持続可能な都市空間を創出することは、この都市から学べるであろう。
https://parametric-architecture.com/worlds-most-complex-city-chongqing/
insight | 知見
重慶市はオーストリアと同程度の面積を持つ広大な地域であるので、記事で紹介されているのは主に重慶市の都心部の立体構造になります。急峻な地形構造になっている都心部で約1,000万人の人口を安住させるには、様々な工夫が必要なのだと思います。
高層ビルを建てられるような頑丈な地質や、地震・洪水のリスクなども考慮に入れる必要があると思いますが、傾斜地そのものが都市の魅力になるので、立体的にまちをつくることについて重慶からヒントを得られるのではないかと思います。



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