東京在住の女性Ｅ様から「人と一緒にいたいのでお会いしたいなと思ってメッセージしました」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。Ｅ様は「実は全然お金がなくて坂爪さんにご馳走できない」と言った。カフェに入ってメニューを見ながら、Ｅ様は「これくらいならご馳走できます。お金はないけどカードはある。いつもギリギリで生きているけど、どうにかなってきたから、どうにかなるのだと思う」と言った。食事が運ばれてきて、一緒に食べていたら「一緒に食べてくれる人がいて嬉しい」と言って、Ｅ様は泣いた。

重度のアトピーに苦しめられて、十年以上まともな暮らしができなかった。食事をしても吐いてしまうことが多く、何も食べられなくなり、どんどん痩せた。自立しなきゃと思って家を出ても、結局うまくいかなくて家に戻ることを繰り返している。実家があることはありがたいけれど、母親から小さなことで追い詰められて、やめてと言ってもやめてくれないから、母親を殴ってしまうこともある。実は、今日も母親のことを殴ってしまった。このままじゃ危ないと思って荷物を持って家を出てきた。Ｅ様は、そのようなことを言った。

Ｅ様は言った。坂爪さんは本当に勇気があると思う。何もなくても自分を開き続けて、たくさんの人に会って、たくさんの出来事に遭遇している。その姿を見せてもらえるだけでも希望になる。自分の人生もどうにかなるのかなって信じることができる。たくさんの人に会っている坂爪さんに会うことで、自分の悩みなんて小さなものなんだって思いたくて連絡をした。あとは、海で野宿をする方法を教えて欲しい。お金がないからホテルには泊まれない。野宿はできるものなのか。蚊にさされないのか。熟睡できるのか。教えて欲しい。

私は「野宿は大変だと思うから、熱海の家に泊まりますか？」と言った。Ｅ様は「それはとても助かります」と言った。Ｅ様は「人に頼ることができたことが嬉しい」と言った。これまでもお金に困ることはあったけど、誰にも言えなかった。自分で解決しなくちゃと思っていたけど、はじめてそのことを人に言えた。人に頼ることができた。私には弱さがあるから、家族を突き放すことができなかった。母親も、父親も、それぞれの自業自得を抱えながら、甘え合って、もたれ合って生きている。坂爪さんの「家族の問題を解決すると、人生はボーナスタイムに突入する」という言葉が大好きで、自分もそろそろボーナスタイムに入れたかなと思っていたけれど、まだまだだった。だけど、今日、それに少しだけ近づけた気がする。

Ｅ様は「私もミラクルが多い人生なんです」と言った。問題はたくさん起きたけれど、その度にミラクルが起きて、どうにかなった。いつもギリギリなのは終わりにしたいけど、ミラクルに支えられて生きていると。自力をやめると他力が来る。自力を手放す瞬間は怖いが、お金がないことや、母親を殴ってしまったことなど、見栄やプライドを守るのではなく解き放つ時、他力が舞い込む。Ｅ様は海が見たいと言った。熱海の家は、海まで少し距離がある。元気な人は歩けるが、元気がない時に炎天下は厳しい。私には50ccのカブしかない。二人乗りができないから、ゲストを運ぶことが難しい。誰か、使っていない125ccのバイクをお持ちの方がいたら、カブと交換をしませんか。御礼に熱海の街をご案内致します。海沿いを走ったり、木漏れ日の中を走ったりすると、小さなことがどうでもよくなる。人生を楽しもうと思う。