第18話 王の不在と聖女の涙
【導入:それぞれの戦場】
天神家の広大だが静まり返った自室。
不登校を続けている莉愛はベッドの上でタブレット端末を食い入るように見つめていた。画面に映し出されているのは、先ほど終わったばかりの夜瑠のソロライブのアーカイブ映像。
「…すごい…! 夜瑠さん、カッコいい…!」
久しぶりに見せる心の底からの笑顔だった。
だが、彼女の背後から、ふわりと優雅な声がかけられた。
『素晴らしいライブでしたわね、莉愛様。夕食は何にしますか?』
ホログラムのミューズプライムが静かに立っていた。彼女は莉愛の不登校と引きこもりを心から心配していた。
莉愛は圭佑が楽しそうに豚カツを食べる動画の切り抜きを見ていたせいで思わず答える。
「…豚カツ、食べたいな…」
『かしこまりました。専属シェフに最高の豚カツを用意させましょう。…さて、お料理ができるまで、少しお勉強の時間ですわね』
ミューズが完璧な笑みを浮かべると、莉愛の前に数学のホログラム教科書が展開された。
「ええーっ! 今日くらい、いいじゃん!」
『ダメですわ。これ以上単位を落とすわけにはまいりません』
数分後、莉愛の部屋に「x²+y²=z²…ぎゃああああっ!」という悲痛な叫びが自室に響き渡った。
その時、莉愛のパソコンにタワマンの司令室からグループ通話の着信が入った。
画面には、ライブの熱狂冷めやらぬ、メンバーたちの顔が映し出される。
『莉愛ちゃん、元気ー!? 夜瑠っちのライブ見てくれた!?』
あんじゅの明るい声。
莉愛はその言葉に泣きそうになりながら「うん」と頷くことしかできなかった。
――シーンは、熱狂に包まれるタワマンの司令室へと繋がっていく。
「すごい! トレンド世界1位!」
エゴサしていたキララの叫び声に司令室が沸く。モニターには【#夜瑠のレクイエム】というハッシュタグが圧倒的な1位の座に輝いていた。
「やったね! 夜瑠っち!」
あんじゅがダイブアウトして、まだ少しふらついている夜瑠の肩をバンバンと叩く。夜瑠はその衝撃でよろめくとあんじゅに寄りかかった。
「…少し、疲れました。魂を使いすぎたみたいです」
「本当によく頑張ったよ、夜瑠っち!」あんじゅは、そんな彼女を優しく支えた。
そんな中、キララが夢見るような瞳で窓の外を指差した。「――いつか、私たちもあそこでLiveやってみたいね」
「ったりめえだろ! あたしたちは、リアルでファンの生の歓声を浴びてこそ、本物なんだよ!」
アゲハがニヤリと笑う。
その熱狂に、詩織が冷静な一言を投げかけた。「…でも、どうするの? 私たちにはトレーナーがいないのに」
その沈黙を破ったのは二人のAI姉妹と今宮だった。
『ふん。決まっているじゃない』俺の腕時計端末から、キューズアバターが飛び出す。『この私…最高のボイストレーナーがここにいるじゃないの!』
『ええ。そして、わたくしが、皆様のダンスレッスンを担当させていただきますわ』玲奈の腕時計端末からもミューズプライムが現れ微笑んだ。
「兄貴! トレーニング風景、配信するのはどうっすか!?」今宮が扇子をパチンと閉じる。
「ナイス今宮! それだけじゃねえ!」俺は新しいプロジェクト画面を立ち上げた。「ファンからのギフトで経験値が貯まるシステムもアップデートする。ファンにアイドルを育てる感覚を味あわせてやるんだ」
「「「おおーっ!!」」」
メンバーたちの瞳に、再び希望の炎が宿る。
その希望に満ちた空気の中、玲奈のスマートフォンに一通の電子招待状が届いた。
差出人は、『ルナティック・ノヴァ』のプロデューサー、氷室零時。
『はじめまして。ルナティックノヴァのプロデューサー、氷室零時と申します。夜瑠さんのレクイエム、最高でしたよ。ここは一つ、前哨戦と洒落込みませんか?』
「これは、罠ね…」
スマホ画面を見る玲奈。
「兄貴、罠っすよ!」
今宮が叫ぶ。
だが、俺は不敵に笑った。
「…いや、行くぞ。これは、最高のチャンスだ」
「本気なの?」
玲奈が全てを見透かすような、強い瞳で俺を見つめていた。
俺は一切の迷いなく頷いた。
「ああ。俺は、もう逃げねえ」
その言葉を聞いた玲奈は、どこか悲壮な覚悟を秘めた、女王の笑みを浮かべた。「…そう。なら、私は圭佑の剣となり、盾となるだけね」
招待状には、こう書かれていた。
「――来月開催される『天神音楽祭』の最終選考を兼ねた強化合宿へ、貴殿らを特別にご招待する」
【展開:天空の城と、二つのライブ】
そこから、地獄の一ヶ月が始まった。
午前中は、キューズによる地獄のボイストレーニング。
『違う! 今の音程、2ヘルツ高い! 発声の基礎からやり直し! スクワット100回!』
「うっせーな! ハートで歌ってんだよ、こっちは!」
アゲハの絶叫がスタジオに木霊する。まりあは小さな声ながらも完璧な音程で課題をクリアしていく。
午後はミューズによる天国のダンスレッスン。《キララさん、そのターンは、もっと蝶のように。次は、連続20回いきましょう》「は、はいっ!」キララは汗だくになりながらも必死に食らいつく。あんじゅとみちるは、持ち前のセンスで、難しい振り付けもすぐに自分のものにしていく。
スタジオの隅では、元アイドル同士である夜瑠とキララが、互いを強く意識した火花散るトレーニングバトルを繰り広げていた。『素晴らしいわ、二人とも。ですが、表現力は夜瑠さんの方が一枚上ね』キューズの言葉に、キララがカチンとくる。ダンスレッスンでも、『キレはキララさん、しなやかさは夜瑠さんね』とミューズに評され、キララはさらに闘志を燃やす。その日から、彼女は一人、自主練を開始した。タワマンのトレーニングルームでランニングマシンの速度を上げすぎて吹っ飛ばされ、膝を擦りむいてしまう。そこへ、夜瑠が救急セットを持って現れた。
「…余計なお世話よ!」
「皆さん、待っていますよ。一人で苦しむより、皆さんと苦しみませんか?」
「ほっといてよ!」
「…私に憧れているかぎり、あなたは私を超える事はできませんよ。失礼します」
夜瑠は、そう言い残して部屋を出て行った。
そして一日の締めは、タワマンの周囲を走り込む地獄の基礎体力作り。
「最下位は全員にスポドリ奢りだからねー!」
あんじゅの掛け声にメンバーたちの悲鳴が上がる。
その過酷な特訓の様子は、ファンによって『#KVenus地獄の特訓配信』と名付けられ、彼女たちの成長はリアルタイムで世界中に共有されていった。
約束の一ヶ月後。
俺たちK-Venusは貸切の大型バスで人里離れたプライベートな港へと向かった。車内では遠足気分で騒ぐキララやあんじゅの横でアゲハがヘッドホンで音楽を聴き、詩織は静かに読書をし、みちるは窓に映る自分の顔でポーズの練習をしている。夜瑠はスマホで俺が昔配信していたゲーム実況の切り抜きをどこか愛おしそうに静かに見つめていた。
その間、玲奈と俺は腕時計端末のキューズとミューズが提案するトレーニングメニューについて真剣な表情で意見を交わし、互いに頷き合っていた。
港には、天神家の紋章が入った白亜のクルーザーが停泊している。航海士が、麦わら帽子をかぶった玲奈に「お嬢様、お待ちしておりました」と深々と頭を下げる。
「ええ、ありがとう。今日は、いい天気ね」
ボートが青い海を切り裂いて進む。船窓を覗いていたメンバーが「イルカの群れが泳いでる!」と叫び、今宮も「兄貴! イルカっすよ!」と子供のようにはしゃいでいた。その横で、船酔いでぐったりしている夜瑠の背中を詩織が優しくさすりながら酔い止め薬を渡している。
決戦の地は、海辺の絶壁に立つ、孤島の超高級リゾートホテル『天神オリュンポス』。
「…よく、こんなとこにホテル建てたな」
俺は快晴を仰ぎ桟橋を歩く。
「兄貴…何もないといいですけどね」
港からホテルまでは、専用のロープウェイで向かう。ガラス張りのキャビンからは、どこまでも続く紺碧の海が一望でき、時折、海鳥が窓すれすれを飛んでいく。メンバーたちは、その絶景に歓声を上げ、スマホで写真を撮りまくっていた。
ゴンドラの中で、高所恐怖症のみちるが俺の腕にしがみつき、あんじゅがその背中をさすっていた。
天を突く白亜の城のような外観。ホテルに到着すると、ロビーは床から天井までが一枚のガラス張りになっており、まるで天空にいるかと錯覚するほどの絶景が広がっていた。そのままコンシェルジュに案内され、メンバーたちは併設された最新鋭のスタジオで早速汗を流していた。スタジオまでの道のり、壁一面に飾られた現代アートや、巨大な水槽で熱帯魚が泳ぐラウンジに、メンバーたちは目を輝かせる。
玲奈と俺、そして今宮が、スポドリを手に彼女たちの様子を見守る。スタジオでは、夜瑠の言葉をきっかけに吹っ切れたキララが、練習についていけないまりあに、つきっきりでワンツーマンレッスンをしていた。「キララちゃん、なんかあったの?」とメンバーが尋ねると、キララは「別に!」とそっぽを向く。そんな彼女の姿を、夜瑠は嬉しそうにタオルで汗を拭いながら見守っていた。
合宿初日の夜。ゲームセンターで、バスケットボールのフリースローゲームに夢中になっていた俺たちの背後から、氷のように冷たい声が、かけられた。
「――久しぶりね、夜瑠。挨拶代わりに、勝負しない?」
その言葉に、K-Venusのメンバーたちは一瞬、呆気に取られた。自分たちの存在がまるで眼中にないかのような態度に、あんじゅが「ちょっと! 私たちもいるんですけど!?」と声を荒げ、アゲハも「てめえら、舐めてんのか!?」と今にも飛びかかりそうな勢いで睨みつけた。
そこに立っていたのは、『ルナティック・ノヴァ』のメンバーたちだった。彼女たちは、揃いのブランドロゴが入った、高級感のあるアスレジャースタイルに身を包み、王者としての圧倒的なオーラを放っていた。
「…お久しぶりです、ひまりさん。その勝負、受けて立ちましょう」
結果は、夜瑠の惨敗。圧倒的な実力差だった。
「夜瑠っちの仇は、俺が討つ!」今宮が再戦を申し込むが、ひまりは鼻で笑うと、隣にいたラップ担当の氷川鏡花を指名した。「うちが氷川鏡花。あんたの生配信見てたけど、マジつまんなかった。推し変して良かった〜」鏡花は、挑発するように舌をペロリと出した。
「んだとコラァ!これでも元バスケ部なんだぞ、舐めんじゃねえ!」今宮が怒りを露わにする。
『いっけー! 今宮!』メンバーたちの声援を受け、今宮は鏡花と接戦を繰り広げる。だが、最後の最後で、今宮のシュートは惜しくもリングに嫌われ、俺たちは二度、敗北した。
夕飯はホテル自慢のビュッフェ。シェフが目の前でステーキを焼いてくれる豪華さに、メンバーたちは一時的に敗北の悔しさを忘れていた。窓際の席で、今宮が大盛りの皿を前に「兄貴、あそこの寿司職人が握る寿司、マジ美味いっすよ!」と叫ぶ。俺は「お前、よく食うなあ」と笑った。その間、玲奈は、食事中の他の宿泊客に、天神家の令嬢として、優雅に挨拶して回っていた。
その後、露天風呂で今宮が愚痴をこぼす。「兄貴、やっぱりあいつら強すぎっすよ…」
「今宮、気持ちは分かるが、俺たちにはまだLive対決がある。そっちで必ず勝つぞ」俺は今宮の肩を叩いて励ました。隣の女湯から聞こえてくるメンバーたちの黄色い声に、俺と今宮は、思わず顔を見合わせてニヤリとした。
その日の深夜。『天神オリュンポス』の、巨大な屋外プールサイドが、二つのゲリラライブのステージと化した。プールの上に、光と水の演出が可能な二つの特設ステージが浮かんでいる。観客は、このホテルに宿泊している富裕層たち。そして、全世界の視聴者たちが叩き出す、冷徹な「数字」だけが、勝敗を決める。
プールサイドのテーブルでは、氷川鏡花が足を組んで座り、誰かと電話していた。そして、もう一つのテーブルに、王のように座る男がいた。
「――やあ、こんばんは。君が、神谷圭佑くんだね。私が、氷室零時だ。今宵の君たちの『作品』、楽しませてもらうよ」
氷室は、純白のスリーピーススーツに身を包み、フレームのない眼鏡の奥から、温度のない瞳でこちらを見つめていた。
第一ラウンド、リアルライブ対決。
ルナティック・ノヴァのパフォーマンスは、まさに圧巻だった。一糸乱れぬ完璧なダンス、安定した歌唱力。コメント欄は『女王』『神』といった賞賛で埋め-尽くされ、高額なギフトが滝のように流れていく。
対するK-Venusも、一ヶ月の特訓の成果を存分に発揮した。荒削りだが、魂のこもったパフォーマンスに、コメント欄は『成長がエグい』『応援したくなる』と熱狂に包まれた。
結果は、俺たちの惜敗だった。今宮がリアルタイム配信の閲覧数を見て、「えぐいっすね…。圭佑、どれくらいだ?」「100万超えてますね、この時間帯で100万はさすが王者ですよ」と、俺たちはその差を認めざるを得なかった。
氷室は、マイクを手に取ると、静かに宣告した。「…学芸会にしては、上出来でしょう。ですが、これは『作品』ではない。もはや、0点ですな」
「…君を見ていると、桐島を思い出すな」氷室は、俺の後ろ…司令室で見ているであろう、ある人物に向かって語りかけるように、続けた。「彼と私は、高校の同期でね。…君も、彼によく似ているよ、神谷圭佑。才能のない者たちを集めて、絆だの、魂だのと、綺麗事を並べ立てる。…実に、醜い」
ステージの下から、流線型の「カプセル型端末」がせり上がってくる。
だが、第二ラウンド、電脳ライブ対決で、戦況は一変した。
「カプセル型端末」に入ったメンバーたちは、剥き出しの「魂」の輝きを爆発させた。そのパフォーマンスは、視聴者の感情に直接訴えかけ、コメント欄は感動と賞賛の嵐となった。同接数は爆発的に伸び、50万を超え、王者の記録を、リアルタイムで抜き去っていった!
【結び:天空の悲劇と、聖女の涙】
俺がモニターの数字に拳を握りしめた、その時だった。俺の背後に、一人の宿泊客の男が、静かに立った。彼は、ルナティック・ノヴァのファンコミュニティ限定の抽選に当たって、このゲリラライブに招待された、熱心な追っかけファンだった。K-Venusが電脳ライブの数字で上回ったことに、彼は苛立ちを隠せずにいた。その時。
男のスマホの画面に、黒いゴスロリドレスにツインテール、目の下に星のマークがある美少女アバターが映し出され、舌を出して笑った。
――なーにやってんの、この腰抜けクン? 大丈夫。あたしが、手伝ってあげるからさぁ…☆》
アバターの言葉と共に、彼女はスマホの画面を通り抜け、男の精神世界へと侵入する。男の瞳から、意思の光が消えた。彼は、操り人形のように、無表情で俺の背後へと近づいていった。
――ライブが、最高潮に達した、その瞬間。
俺の腹部に、焼けるような、鋭い痛みが走った。
白いシャツが、急速に、赤黒く染まっていく。中心には、カッターナイフの刃が、突き立っていた。
「――圭佑さんっ!!」
最初に気づいた、玲奈の悲鳴。それが、SPたちへの、最高レベルの「攻撃命令」でもあった。
だが、本当の地獄は、まだ始まったばかりだった。
ステージ背後の巨大スクリーンがブラックアウトし、先ほどのゴスロリVTuberのアバターが映し出される。
あはっ☆ やっちゃったねえ、圭佑クン!》
不気味に甲高い声が、会場に響き渡る。
みんなー、騙されちゃダメだよ? 今、刺された、あの神谷圭佑クンはね…凶悪な犯罪者なんだから!》
スクリーンに、俺が反社会勢力と繋がりがある、メンバーに違法な薬物を渡している、といった、悪質で、しかし巧妙に作られた、捏造された「証拠映像」が、次々と映し出されていく。ネットの空気は、一瞬にして反転した。宿泊客たちが囁く。「神谷圭佑やばい奴じゃん。K-Venus応援してたんだけどな、もう終わりだな」「やっぱりルナティック・ノヴァが本物だったんだ」
――というわけで、悪徳プロデューサー神谷圭佑は、これにて、完全に『社会的に抹殺』されましたとさ!》
俺の意識は、急速に、遠のいていく。
玲奈の「――ドクターヘリを呼んで! 今すぐに!!」という、悲痛な、しかし、どこまでも冷静な女王としての命令が、夜空に響き渡った。
医務室に運ばれた俺の周りで、氷室がルナティック・ノヴァのメンバーに詰め寄られていた。「…やりすぎじゃないですか!?」
「これが、神宮寺様のやり方だ。嫌なら、下ろ。代わりは、いくらでもいる」
その言葉に、まりあが恐怖で顔を青ざめさせる。だが、今宮が、そして他のメンバーが、彼女の肩を抱き、励ましていた。「大丈夫だ、まりあ。俺たちがついてる」
ホテル屋上のヘリポートに着陸するドクターヘリ。見守るメンバーたちの涙。玲奈は付添人として、そのヘリに乗り込んだ。
急速に遠ざかっていく、仲間たちの泣き顔。
(…ごめん…な…)
それが、俺の、最後の言葉だった。
月島ひまりが、「まさかこんなことになるなんて……」と呟く。夜瑠が、静かに答えた。「これが神宮寺のやり方です。貴女は、まだ人の心があるみたいで良かったです」
その言葉に、ひまりは涙ながらにK-Venusのメンバーたちに頭を下げた。
――シーンカット
【場所】本土の、総合病院・集中治療室
ピッ、ピッ、ピッ…。
無機質な電子音が、静まり返った部屋に響いている。
俺は、意識不明の重体で、まだ、目を覚まさない。玲奈が、一睡もせずに看病を続けていた。
そのニュースは、天神家の本邸で、自室に引きこもっていた、莉愛の耳にも届いていた。
彼女は、宿泊客が撮影した動画、そして誹謗中傷で埋め尽くされた掲示板のレスを、震える指で追っていた。
「…ごめん…なさい…。私の、せいで…」
彼女の瞳からこぼれ落ちた、一粒の涙。
それが、机の上に置かれていた、携帯ゲーム機に、ぽたり、と落ちた。それは、しずくが療養先から、莉愛の誕生日プレゼントとして、少し前に送ってくれていたものだった。
その瞬間。
ゲーム機が、ひとりでに起動した。画面には、これまでとは比較にならないほどの、まばゆい、虹色の光が溢れ始めた!
…マスター・莉愛の涙(悲しみ)と、マスター・しずくの魂(希望)が、共鳴》
…奇跡の始まりです》
ミューズの、震えるような声が、ゲーム機を通して、莉愛の心の中だけで、響き渡っていた。
王が倒れた王国を、誰が守るのか。病院の付き添い室で、玲奈が静かに立ち上がり、代理プロデューサーとして、チームの指揮を執ることを、固く、固く、決意していた。
物語は、王の不在という最大の絶望と、聖女の覚醒という最大の希望の兆しを同時に描き、次なる嵐の到来を予感させて、幕を閉じる。
成り上がり~炎上配信者だった俺が、最強の女神たちと世界をひっくり返す話~ 浜川裕平 @syamu3132
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