休日、曇っていてそんなに暑くないし、温泉に入りに行こうと思った。埼玉は意外と温泉がたくさんあるのだ。どうしようかなと調べていると、大宮駅からちょっといったところに、温泉があるのを見つけた。しかもである。なんと、施設内に、本格的な寿司屋があるらしいのだ。
温泉に入って、寿司食べる。これは素晴らしいことではないか。ということで大宮駅まで電車でやってきた。
大宮駅でカーシェアの車を借りた。朝ごはんを食べていなかったので、何か食べようと思った。埼玉県民であるにもかかわらず、山田うどんに何年も行っていないことに気がついた。山田うどんは店舗自体はけっこう多いのだけど、車で移動しないと店に行けないことが多く車を持っていない人間にはあまり縁がない店である。久しぶりに寄ってみることにした。
アメリカンダイナーを思わせるぐるりとひろがるカウンターに腰かける。もつ煮込み丼とうどんをセットにした。腹が減った。うどんをすする。冷たくておいしい。山田うどんというのは、なんというか特別うまいということはないのだけど、まあなんか適当に入って適当に食べるにちょうどいい感じの味である。ちょっと丁寧なサービスエリアのごはんというようなイメージだろうか。
もつも臭みがなくてうまいということもなく、ああ、もつだなあというかんじの味わいだ。
山田うどんから車を走らせ10分。温泉 小春日和に到着した。駐車場にもちらほら空きがあり、そんなに混んでいる感じではなさそうだ。大きな木が門のわきに生えていてなんだかいいかんじである。
そして、今日は、夏にしてはそんなに暑くなくいい感じに風も吹いていた。温泉に入るのに適した日である。我々の休日に必要なのは、生存可能な気温と風、そして温泉である。
ひと気もまばらである。埼玉のいい所は、どこもあまり混んでいないということである。2009年にオープンした施設のようなのだけど、かなり綺麗に掃除されている。飲食エリアからは窓越しに庭園が見えて、これまたなかなかよい感じである。
温泉は茶色くて、すこし塩気がある感じだった。僕は露天風呂にある浅い湯で曇天をボーっと眺め、じっと湯に一体化していた。僕の隣には力士並みにふとった男性がおり、腕を組んで小難しい顔をしていた。裸の人間たちが、お互い目も合わせずに別方向を向いてボーっとしているというのは、考えてみるとかなり不思議な光景である。
温泉から出て寿司を食べに行く。大宮駅の近くで営業している寿司屋さんが店舗を出しているということらしい。つまり、とってつけたような寿司ではなく、本格的な寿司が食べられるということなのである。まだ、オープンして間もないようで、ピカピカだ。
値段の記憶があいまいなのだけど、確か、上にぎりが3500円くらいだったような気がする。上の写真で見切れているけれど、1200円からセットがあるので、ちょっとつまんで日本酒を楽しむみたいなこともできるようだ。席につく。若い大将のようだ。
赤身。いいかんじに旨味があり、しゃりが適度な量で、寿司、これぞ食べたかった寿司!と僕は歓喜した。
鯛(多分)。温泉につかってゆるんだ体に、寿司というのは大変なぜいたくである。車で来ていたので、酒は飲めないのが残念だ。
小肌。
中とろ。しかし、温泉代金込みで5000円行っていないのだから大変よい。四半期に一回くらい来たいものだ。寿司屋が出している店だけあって、温泉施設内にあるとはなかなか思えないようなクオリティである。隣には、早くも常連がいるのか、信じられない勢いで、日本酒を飲み進めるアラフォーくらいの女性がいた。
「もう一杯だけ、もう一杯だけ飲む」と言って、うまそうに酒を飲んでいた。
ここはある種の人間の楽園になっているようだ。
ほたて。塩がふってある。
大トロ。こってりうまい。
ウニまで出てくるではないか!
そんなかんじで、10貫ほどがでてきた。東京であれば、風呂代1800円、寿司代5000円くらいしそうなものだ。僕はカウンターで、埼玉も捨てたものではないな...と思った。
温泉を後にした。近くに、ツイッターのフォロワーさんが行っているのをみかけたぺんぎん村という喫茶店に寄ってみることにした。
夫婦で営業しているようだ。扉を開けると漫画が棚にたくさんささっているのが目に入った。女性が案内してくれた。僕は、奥のほうの席に座ってコーヒーゼリーを注文した。うすぐらい雰囲気だ。近くに、三人組の客がいた。20歳くらいの男たちだ。
「あそこの会社のドライバーってどうなの」
「ああ、なんか、だめらしいよ。教育もぜんぜんらしいし。配送だとやっぱりAmazonもいるしなあ」
「いろんなところからさ、引き抜いていきたいよな」
どうも青年たちは、自分たちで配送業をしているらしい
コーヒーゼリーが来た。ホイップクリームが乗っていた。何年くらいやっているのだろう。ひんやりしたコーヒーゼリーを食べた。
野球でもやっていたような感じの精悍な雰囲気の若者が姿勢をあらためた。
「おれたちさ、どうしたってこのままじゃいられないよな」とたばこをひと吸いして言った。
「そうだよな。これからどうやってのし上がろうか。本当にそうだよな」と下っ端ぽい男が答えた。
第二の下っ端が「やっぱ、人を集めるにはさ....」と続けた。町はずれの喫茶店で喧々諤々話はつづいていくようだった。
なんか、自分もがんばらないとなと思った。そんな休日だった。
9月に本が出ます!ご予約受付中です。ブログをまとめたもので、旅行記とエッセイが収録された本です。書下ろしも入っています!埼玉の話もいろいろ入っています。ぜひ、ご予約よろしくお願いいたします!!!