労働災害(労災)で死亡した人の配偶者に支給される労災保険の遺族補償年金について、夫のみに年齢要件が課されているのは男女差別で違憲だとして、岩手県の男性(59)が29日、国に不支給処分取り消しを求める訴訟を仙台地裁に起こす。
男性の妻は岩手県の介護事業所で介護スタッフとして働き、男性と共働きで3人の子どもを育ててきたが、2020年9月に自死した(当時45歳)。弁護団によると、一関労働基準監督署は23年4月、「職場での人間関係のトラブル後、退職勧奨され解雇されるなどして精神状態が悪化した」と指摘し、労災を認定した。男性は24年11月に遺族補償年金の給付を申請したが、今年2月に年齢要件を理由に不支給処分となった。
労災保険法では、妻は受給に年齢制限がない一方、夫は妻の死亡時に55歳以上か一定の障害がなければ受け取れない。この男性は妻の死亡時に54歳だった。
男性側は、男性に厳しい受給要件は「性別役割分業を前提としており、共働きが当たり前の現代社会と合致しない」と主張している。
労災の遺族補償年金を巡っては、年齢要件で不支給となった別の男性=東京都=が24年4月、東京地裁に提訴しており、今回の提訴は同じ弁護団による追加提訴。厚生労働省の有識者検討会が夫の年齢要件を廃止する方向で議論を進めており、厚労省は来年の通常国会での改正法案提出を目指している。【宇多川はるか】
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