鹿児島県警の不祥事隠蔽疑惑“悪しき原点”に審判 看護師への「性暴力」民事訴訟、30日に判決
新型コロナウイルス感染症の鹿児島県の宿泊療養施設で、県医師会の男性職員(当時)から性暴力を受けたとして、女性看護師が損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、鹿児島地裁で言い渡される。男性は強制性交容疑で書類送検され不起訴処分になったが、県警は当初、女性の告訴の受理を拒むなどし、捜査に後ろ向きな姿勢が国会でも批判された。女性側は訴訟で、県警には提出しなかった新証拠を出しており、判決が注目される。 (湯之前八州、中島邦之) 【写真】処分意見が分かる公文書の不開示決定通知書 訴状によると、女性は県医師会が運営する県のコロナ宿泊療養施設に派遣され、2021年9月、施設内などで男性から性的暴行を複数回受けたと主張。その後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病と診断されたとしている。男性は当初、女性側に謝罪文を示したが、訴訟では「合意があった」と反論した。 この問題は、鹿児島県警を巡る一連の不祥事隠蔽(いんぺい)疑惑の「悪(あ)しき原点」とも指摘される。女性は22年1月7日、鹿児島中央署に告訴状提出に出向いたが、署が応じず、弁護士が抗議し10日後に受理された。 「身内に甘い捜査」との疑念が付きまとう大きな理由は、男性の父親が元警察官である点からだ。県警によると、男性は21年12月6日、「相談」のため父親とともに同署を訪問。署は父親の同席を認めた。一方、女性が訪れた時には、同行した弁護士の同席を認めなかった。 さらに驚くべきは、署が女性から被害状況を聴く前に、男性に“捜査の結論”を伝えていた疑いだ。県医師会によると、男性は「署に相談した際、警察から『事件性はない』と言われた」と説明したという。 同会は22年秋、県の施設で不適切行為をしたことを理由に男性を懲戒処分に。参院予算委員会で県警の事件対応が批判された3カ月後の23年6月、県警は男性を書類送検した。鹿児島地検は同12月に嫌疑不十分で不起訴処分にした。 告訴状の受け取り拒否、不公平な当事者対応、警察関係者の優遇…。数々の問題や疑念が浮かぶ捜査。県警は昨年8月の記者会見で「必要な捜査を遂げた上で書類送検した。捜査は適切」と説明した。訴訟では直接の争点になっていないが、捜査の公正・適正さも問われることになる。
処分意見は「不開示」
西日本新聞は今年6月、県警が男性の書類送検時に地検に対し、どんな処分を求める意見(処分意見)を付けたかが分かる公文書の開示を請求したが、県警は「不開示」とした。