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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

強盗団の襲撃事件(1)

2008-11-15 | Weblog
ある主要国の大使の公邸が、賊に襲われた。今週の月曜(10日)の早朝、というかまだ暗い夜中に、事件は起こった。昨日になってはじめて報道に出た。新聞記事によると、次のような次第であった。

夜中に、10人ほどの武装した強盗団が、当該大使公邸の玄関の前にやってきて、門を警備していた警備員を脅して縛り上げた。強盗団は、そのまま公邸の中に入り込んだ。隣宅の警備員が、これを見て直ちに警察に通報。警察の治安部隊は現場に急行し、強盗団との間で銃撃戦となった。強盗団は、公邸から出て逃走した。大使に別状は無かった。

最近、町で強盗事件がよく起こっているとはいえ、銃撃戦などとかなり派手だし、ここに駐在する大使が襲われたというのは大事件だと思う。しかし、この新聞1紙が小さい記事を出しただけでおしまい。「十分に守られているはずの大使公邸でも襲撃されるくらいだから、庶民にとっての安全はどこにあるのやら」と、治安の悪化をやれやれと言って嘆く、呑気な一文で終わっている。もし日本でこんな事件が起こったら、大騒ぎだろう。私も日本人の一人として、また同じく大使公邸に住む一人として、おおいに驚き恐れるのであるが、気に病んではいけない。ここにはここの水準があり、ここの対応策がある。

この事件を知って、すぐに当の大使本人に電話をして、お見舞いの意を伝えた。大使自身やご夫人に、怪我や異状はなかったですか、と聞く。大使からは、ほぼ報道のとおりのことが起こった、自分たちは大丈夫だった、というような答え。こういうことは、当人からあまり根掘り葉掘り聞いてはいけないので、とにかくお怪我が無かったのは不幸中の幸いだった、これからもお互いに注意しましょう、というようなことを述べて電話を切る。

一方で、わが大使館の警備担当官から、すぐに警察などに調査をかける。その結果、報道のとおりの事実関係であったこと、10人ほどの賊のうち、3人が警察に逮捕されたということなどが判明する。逮捕された犯人から、この強盗団が何を目的にこのような襲撃に及んだのかの手がかりが掴めよう。この点は対策を立てる上で重要であり、情報を何とか入手していこう。

おおよそ、在外公館や公邸や在外職員の住宅の安全は、自分たちで出来るだけの防護をした上で、それを越える事態が発生した場合は、受入国の警察当局に委ねられる。米国やフランスなど、自国の軍から警備要員を派遣して、自力で安全を確保している国もあるが、そういう国は限られている。それに、この度のような武装強盗団が来たらどうしようもない。数人の警備要員だけでは、自力での防護にも限界がある。むしろいち早く警察に通報して、その力で対処することになる。今回の事案の場合には、コートジボワールの警察部隊がただちに急行し、適切に賊を排除しているので、ここの部分はきちんと機能しており、安心できそうだ。

わが大使館の公館警備と館員住居の安全については、歴代の警備担当官の努力の積み重ねで、最大限の防護措置が取られている。今回の事件が起こったからといって、過剰に神経質になることはない。とはいえ、公館の警備と館員の安全の確保は、大使の重要な責務である。この事件をきっかけに、改めて現在の警備体制を精査してみようと思う。

と、ここまでが一般論である。これで書類を閉じないのが、外交官という人種だ。常に、ものごとを裏からも考える癖がついている。

(続く)

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