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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

子供たちは学ぶ

2008-11-14 | Weblog
この国に来て、なかなか馴染めないのが、段取りの悪さである。悪さというより、段取りが無いというか、気にしないというのか。先日も、「カリタス」というNGOが、アビジャンの貧しい地区の小学生たちに学校教材を配るので、引渡式に来賓として参加してくれと言われた。「カリタス」といえば世界的なNGOだし、案内して来たのが懇意のバチカン大使だから、この行事と日本との関係は全く不明ながら、行きますよという返事をした次第。

案内状には、引渡式は朝9時から始まる、となっている。私も、もうそこは馴れたもの。秘書を通じて電話で聞くと、やはり30分は遅れそう、ということが分かった。それで、アビジャンの南、トレシュビル地区のキリスト教会の前庭に設えた会場に、40分遅れて到着。やはり始まっていない。バチカン大使はカトリックの法衣を着て、他の何人かの神父さんたちと一緒に、すでに来賓席に座っている。

おおぜいの子供たちが、テントの下でお行儀よく座っている。関係者もみな集合している。アビジャンの部族長たちも、金色のお守りを体中に飾って、席に座っている。テントの下で、風が通って心地よいとはいえ、すでに暑くなりはじめている。それで引渡式は、なかなか始まる様子はない。誰か要人が来るのを待っているのか、と思ったら、来賓は皆揃っているようだ。アビジャン市長も、スポンサーの携帯電話会社の社長も、もう来ている。バチカン大使が、なぜ始めないのだ、と聞いている。どうやら、マイクとスピーカーの設置がまだだから、始められない、ということだ。機材の具合が悪いのか、と思ったら、そもそも業者が機材を運んで来るのを待っている。

宗教者というのは、堪忍袋の緒が長いと思っていたが、そうでもなかった。バチカン大使が怒り出して、マイクもスピーカーも要らない、演説には大きな声を出せばいいだろう、と言う。傍らの私は、遅れるのには馴れているから待ってもいいですよ、と宥めると、そんなことを言っていたら、正午になっても始まらないぞ、とかなり怒っている。NGOの関係者の間で何やら相談していたが、結局マイクなしで式典がはじまった。

車の喧騒も聞こえる屋外での式典だから、声が通らない。アビジャン市長も、バチカン大使も、叫びながら演説を終えた。さていよいよ、学校教材の引渡しである。ノートや筆箱などの教材は、一人分ずつスポンサーの会社のビニール袋に入っている。子供たちが、対象の地区ごとに呼び出される。どこどこ地区の子供たち、と呼ばれて、子供がばらばら出てくる。いや、お前はまだ違う待っていろ、お前はこっちだ列に並べ、と大騒動。出てきた子供たちを、並ばせて全員に配るのか、代表で受け取らせるのか、何も決めていないようで、NGOの大人たちの間でも混乱している。

結局、学校教材は、子供たちではなくて、地区ごとの代表者や、学校の代表者、つまり大人たちに代わりに受け取ってもらう、ということになったようだ。子供たちをまたテントに戻してから、まず、どこそこ地区のPTAの代表者、と呼ばれる。関係者席の中で、ざわめいているが誰も出てこない。テントの中で議論があって、どうやら一人のご婦人が選ばれたようだ。前に出てきたご夫人に、アビジャン市長から、学校教材の袋を渡される。

これでようやく流れが出来た。聖なんとか修道会、とか呼ばれる。スポンサー会社社長から、袋を渡される。なんとか小学校とか呼ばれる。バチカン大使から袋を渡される。次になんとか会と呼ばれたところで、進行役が日本大使と言う。事前の相談もなく、袋を渡す役をふられた。私も日本も、今回の活動に何の関係も無い。もちろん寄付もしていない。困って、バチカン大使を見ると、目配せをしているので、仕方ない。前に出て行って、なんとか会代表に学校教材の袋を渡して、握手して記念写真。

業者のトラックが来た。大きなスピーカーを据え付けて、引渡式が進行中なのもものかは、アーアーとかマイクのテストをしている。教材の引渡しが終了したところで、子供からのお礼の言葉だ。進行係が、やっと準備できたマイクを持って、子供たちのテントに行くが、誰一人出てこない。お礼の言葉を述べる役を決めていないのだから、当たり前だ。むりやり女の子が一人引き出されてきた。照れて、何も言わない。進行係が、それではテストをしよう、コートジボワールの大統領は。女の子はマイクに「バグボ」と答える。感謝の言葉は。「メルシー」はい、よくできました。それでお礼の言葉が終わった。

右往左往しながらも、その場その場で辻褄合せがあって、何となく、やるべきことだけは仕上がっていく。事前に打ち合わせを重ね、分刻みの時間表を作り、予行演習までする日本とは大違い。でも、慌てる人もはらはらする人もいない。そういう大人たちを前にして、子供たちは、お行儀よく並んで座っている。こうやって、子供たちはコートジボワールの社会生活の基本を学ぶ。その後は、音楽が流れ出し、歌手とおぼしき女性が一人、マイク片手に飛び出してきて、歌いながら踊りだす。進行係が、皆一緒に、と合図をすると、子供たちも座席を飛び出してダンスを始めた。マイクとスピーカーは、一番大事なところには間に合ったようだ。

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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段取りなし。。。 (たど)
2008-11-23 02:34:26
その場の暑さが伝わってくるような段取りの悪さ。。。
こちらは吹雪く寒さですが、ブログと同じ状況で、すごく寒いのと、すごく暑いのと、どちらがマシか考えてしまいましたわ。お疲れさまでした。
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