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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

トーゴへの信任状捧呈(2)

2008-10-28 | Weblog
前日まで快晴であったのに、信任状捧呈の当日は、小雨が降った。出迎えの大統領府儀典官は、とてもいい印だと言う。
「トーゴでは、雨が降れば、神が祝福して下さっているのだといいます。暑い国に、雨は恵みの源だからです。客人にはまず水を差し上げます。洗礼でも、水を注ぐでしょう。今日の雨は、祝福の雨です。」
それは素晴らしい。トーゴと日本の友好が、神様に歓迎されているということですね、と応じる。

式典は、コートジボワールで行ったものとほぼ同じ儀式・手順ながら、ずっと簡素なものであった。小雨の中を、トーゴ国旗への敬礼、国家演奏、儀杖兵の閲兵を行った後、ニヤシンベ大統領のもとに通される。コートジボワールでは、荘厳な大ホールであったが、ここトーゴでは、大統領執務室の小さな部屋であった。

信任状を渡す儀式を終えた後、私は大統領と会談する。自分は2回ほど日本に行ったことがある、と大統領は言う。1回目は、昭和天皇の大喪の礼のとき、父のエヤデマ大統領に同行した。
「すでにわが国をご存知の大統領であることを、嬉しく思います。」と私は受ける。
日本に行って、その経済と社会に感銘を受けた。技術力で国の繁栄を築いていることに、大変な敬意を抱いている。だから、と大統領は続ける。
「日本に、国を発展させるやり方を教えて欲しい。トーゴの人々に、ノウハウを伝えて欲しい。」

15年以上国際社会から断絶されていた結果、貿易も投資も衰え、経済はどん底の状態にある、と大統領自ら表現する。経済がそんな状態だと語りながらも、大統領は、日本からモノが欲しいカネが欲しいとは言わなかった。彼が求めたのは、日本に教えて欲しいということだった。これならば、つまり技術指導ならば、日本としても何とか始められるであろう。大統領が本格的な資金援助ではなく、技術協力について述べたということは、トーゴが真面目に日本との協力関係を研究し、検討しているということである。

翌日には、ウングボ首相に会った。彼は、前職は国連開発計画(UNDP)のアフリカ局長をしていたところを、ニヤシンベ大統領から請われて首相に任命された。先月(9月)に首相になったばかりである。
「日本から、ビジネスマンや民間企業の人々を、代表団を組んで連れて来て欲しい。自分がトーゴの経済運営の責任者を一堂に集めるので、日本との貿易や投資受け入れの可能性について、徹底的に話し合いたい」と、首相は私に述べる。
ウングボ首相は、民間経済の活性化が、貧困撲滅に何より重要と言う。そして、政府開発援助はそれはそれで結構だけれど、それだけでは本当にしっかりした経済成長には繋がらないと言う。
「今のトーゴでは、政府開発援助を受けても、それで何かをつくって終わりになってしまう。資金供与だけでは、むしろ害さえあるかもしれない。持続性のある開発のためには、まずトーゴの人々が何をしなければならないのかを知り、そのための人材を作らなければならない。」
国連テクノクラートとして、長年開発問題に取り組んで来た専門家としての、経験と知恵に立った発言である。

夕食会を開いてくれたアヤソー財務相は、別の切り口だった。
「長年の経済制裁などで、国際社会の人々はトーゴに極めてマイナスのイメージを持ってしまった。独裁の酷い国だと。しかし来て見れば分かる。今のトーゴは自由で、国家再建に向けて活気がある。トーゴの人々は昔から勤勉で、真面目で、きれい好きで、公徳心に富んでいる。若い世代も、やる気に満ちている。大統領は良く勉強して的確に現状を理解しているし、政府の人間は皆真剣だ。この西アフリカで、本当にビジネスのパートナーになれる国だということを、知ってもらわなければならない。トーゴが今しなければならないことは、自分の国を売り込むマーケティングである。日本に手伝ってもらえるだろうか。」

どの閣僚も、日本や他の国の協力にただ甘えるというのでなく、国の将来には何が本当に大切かを考えている様子がうかがえた。日本でも戦後復興を支え、経済成長を実現したのは、こういう人々であった。トーゴ国民も教育熱心だという。私は、戦後の若い時代の日本との共通点を見出した。

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