有権者登録のために、暑い日中を何時間も待つ人々。コートジボワールの人々の、選挙への情熱をそこに感じる。というと、実は少し褒めすぎになる。
コートジボワールには、日本の戸籍制度のようなものが整備されているわけではなく、自分が何者であるかを証明するのは、自分の属する村落共同体などでの村人相互の認証か、そうでなければ出生証明書や、結婚証明書など、役所がその都度発行する公文書だけである。今回の大統領選挙は、8年ぶりに行われる選挙となる。選挙管理委員会に、自分が有権者として登録されているかどうかを確認することは、コートジボワール人として認証されていることを確認することに他ならない。
そして、人口の4分の1を外国人が占めるこの国においては、コートジボワール人と認証されるているかどうかということが、きわめて大きな意味を持つ場合がある。それは、土地の所有権にかかわる場合だ。この国では、土地所有権の登記制度が、日本のようには機能していない。広大な森林原野に至っては、そもそも住所や区画が何ら示されているわけではないし、そもそも誰かに所有権があると言えるのかどうかも覚束ない。
だから、土地の所有権を他人に対して認めさせるためには、結局は各人が自分で権利を主張し、そして実力行使するしかない。ある国の大使が嘆いていた。自分の使用人が、ある日突然、故郷に帰らなければならない、と言い出した。聞いてみると、自分の叔父が亡くなった、故郷の母親がただちに帰ってこいという、帰って田畑の相続権を主張しなければならない、ただちに母親と一緒に田畑を耕さなければならない、ということだそうだ。
コートジボワールでは、豊かな森林原野が無限に広がっていたから、土地の所有権について昔は鷹揚であった。しかし、地元の部族が自給自足の農業を営んでいたところに、北部部族や外国から入植者が移住し、手つかずの荒地や森林を開墾して商品作物を栽培し、富を築き上げるようになった。次第に土地の所有権を巡って、もともと原野であった土地を利用できるようにしたのは自分たちである、と主張する入植者たちと、自分たちこそ伝統的地主であると主張する地元の部族との間に、軋轢が生じるようになった。
そうした土地所有権争いを背景にして、1998年に農村土地所有権法という法律が制定された。そして、その中で、農地を相続できるのはコートジボワール人だけ、と規定された。だから、土地所有やとりわけその相続を主張するために、まず何より重要なのは、自分がコートジボワール人であることを確認することなのである。そして時には、相手がコートジボワール人の証明を持たないことを理由に、入植者の土地からの追い出しを図る連中がいるという。だから、自分の権利を守るために、コートジボワール人であることの認証は、ほかに何をおいても必要である。今回の有権者登録で、登録漏れがあれば重大なことになるし、もし登録されていないなら、この機会に登録を獲得しようということでもある。
もちろん、それが全てではないであろう。8年ぶりの大統領選挙という、民主主義の大きな節目に、人々が期待をもって動き始めているのかもしれない。しかしながら、自分に選挙権があるということに、単に参政権があるという以上の意味があるというのも、コートジボワールの一つの現実である。
コートジボワールには、日本の戸籍制度のようなものが整備されているわけではなく、自分が何者であるかを証明するのは、自分の属する村落共同体などでの村人相互の認証か、そうでなければ出生証明書や、結婚証明書など、役所がその都度発行する公文書だけである。今回の大統領選挙は、8年ぶりに行われる選挙となる。選挙管理委員会に、自分が有権者として登録されているかどうかを確認することは、コートジボワール人として認証されていることを確認することに他ならない。
そして、人口の4分の1を外国人が占めるこの国においては、コートジボワール人と認証されるているかどうかということが、きわめて大きな意味を持つ場合がある。それは、土地の所有権にかかわる場合だ。この国では、土地所有権の登記制度が、日本のようには機能していない。広大な森林原野に至っては、そもそも住所や区画が何ら示されているわけではないし、そもそも誰かに所有権があると言えるのかどうかも覚束ない。
だから、土地の所有権を他人に対して認めさせるためには、結局は各人が自分で権利を主張し、そして実力行使するしかない。ある国の大使が嘆いていた。自分の使用人が、ある日突然、故郷に帰らなければならない、と言い出した。聞いてみると、自分の叔父が亡くなった、故郷の母親がただちに帰ってこいという、帰って田畑の相続権を主張しなければならない、ただちに母親と一緒に田畑を耕さなければならない、ということだそうだ。
コートジボワールでは、豊かな森林原野が無限に広がっていたから、土地の所有権について昔は鷹揚であった。しかし、地元の部族が自給自足の農業を営んでいたところに、北部部族や外国から入植者が移住し、手つかずの荒地や森林を開墾して商品作物を栽培し、富を築き上げるようになった。次第に土地の所有権を巡って、もともと原野であった土地を利用できるようにしたのは自分たちである、と主張する入植者たちと、自分たちこそ伝統的地主であると主張する地元の部族との間に、軋轢が生じるようになった。
そうした土地所有権争いを背景にして、1998年に農村土地所有権法という法律が制定された。そして、その中で、農地を相続できるのはコートジボワール人だけ、と規定された。だから、土地所有やとりわけその相続を主張するために、まず何より重要なのは、自分がコートジボワール人であることを確認することなのである。そして時には、相手がコートジボワール人の証明を持たないことを理由に、入植者の土地からの追い出しを図る連中がいるという。だから、自分の権利を守るために、コートジボワール人であることの認証は、ほかに何をおいても必要である。今回の有権者登録で、登録漏れがあれば重大なことになるし、もし登録されていないなら、この機会に登録を獲得しようということでもある。
もちろん、それが全てではないであろう。8年ぶりの大統領選挙という、民主主義の大きな節目に、人々が期待をもって動き始めているのかもしれない。しかしながら、自分に選挙権があるということに、単に参政権があるという以上の意味があるというのも、コートジボワールの一つの現実である。
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