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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

民主主義はつらいよ

2008-10-18 | Weblog
大統領選挙のための有権者登録が、全国で行われている。前回の大統領選挙が行われたのが2000年だから、過去8年間の人口動態を追跡し、つまり新しく成年に達した人たちを新規登録するとともに、登録に漏れている人々の身分認定を行って、コートジボワール人であると判定されれば、登録し直す作業である。これにより、投票の基礎となる選挙人名簿を確定する。ちょうど1ヵ月前の9月15日にこの作業がはじまり、10月30日までの45日間を期限に全国一斉に行われている。

・・・はずである。ところが、全国各地1万1千ヵ所に設けられるはずの登録所が、いつまでも開かない。開いても登録が進まない。係員に給料が払われないので、登録が中断してしまった、といった様々な問題があるようだ。各地で起きるトラブルが、連日新聞に出ている。よし、実際に視察してみよう、と大使館スタッフとともに出かけることにした。

アビジャン市内の数カ所を選んで、車で乗り付ける。登録所は、大方は小中学校の一室を借用して、設けられている。車から降りると、子供たちが何だなんだと集まってくる。学校の管理者とおぼしき人に、登録所はどこか、と聞くと、学校の一室を示すが誰もいない。先週のはじめから登録は確かに始まったが、途中で書式が足らなくなり、そのまま中断しているという。朝から何人も登録に訪れ、その都度、帰ってもらっているらしい。

もう一ヵ所訪れたが、同じく閉まっている。果たして、どこかで登録が行われているのだろうか。バラック小屋の商店が賑やかに建ち並ぶ地区に出かけて、その中にある高等学校に行ってみた。やっていた、やっていた。表にたくさんの人々が並んで座っている。長い間待たされているのだ。皆、うんざりした表情である。登録所の中に入ると、机が並んでおり、6人の係員が、書類審査、コンピューターでの照合と登録、写真撮影、指紋認証作業を、それぞれ進めている。作業が複雑なので、1日あたり、60~70名を登録するのがやっとだ、と言っている。

係員の責任者は、40歳くらいの女性。登録所の外に私たちを呼んで、口を尖らせて訴える。10月5日からこの作業を開始した。朝8時から夕方6時まで、毎日働いている。国の選挙管理委員会とは、まだ雇用契約もなにも交わされていないから、いったいいつ、いくらほど給料が支払われるのか、まったく保証がない。この付近の登録所では、皆同じ事情だけれど、期限までに登録を進めなければならないから、見切り発車で作業にとりかかっている、という。「契約も給料支払いの目処もないまま、どうして働けるのですか」と私は聞く。
「だって、選挙のために必要な仕事でしょう、国がやってくれというなら、もちろん国のために働くわよ。」

さらに車を走らせて、専門学校にある別の登録所を訪れる。同じように、たくさんの人々が、建物の外に並んで座っている。登録所の中で、6人の係員が同様の作業を進めているところも、全く同じ。そして、選挙管理委員会との契約なしに、作業期間、給料も分からないまま、勤務を続けているところまで、同じだった。他の登録所の係員の中には、頭に来てストに突入した人たちもいる、という。係員は、窮状を訴えながら言う。「そのスト連中から、われわれ脅されているんですよ。登録所を閉めてストに参加しないと、実力行使するぞ、と。」

外に並んでいる人たち。何十人もいるだろうか、私たちを見つけて、口々に語りかけてくる。
いつから並んでいるのですか。
「朝8時から。」「俺なんか、朝5時から来ている。」
もう昼3時ころである。かれこれ10時間もここに待っているんですか。
「食事も食べていない。ただひたすら、順番を待っている。」
それは、大変ですねえ。選挙のために、頑張ってください。
「そう、正直言って、民主主義はつらいよ。」

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