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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

村での夕食(2)

2008-10-16 | Weblog
バカール先生の話を、もう少し聞くこととしよう。
「今の若者は、両親がフランス語を話すので、フランス語に問題はない。しかし、わしが子供の頃は、村では誰一人しゃべれんかった。ベテ語は学校で禁じられていた。それはそれは、フランス人の教師はこわかった。教室でベテ語をつかうと、厳しく叩かれたもんだ。叩かれるのが怖くて、生徒は皆しゃべれない。小さい子のなかには、おしっこに行きたいと言えなくて、その場を汚してしまう子もいた。今、先生が生徒を叩いたら、大変なことになる。人権委員会に訴えられる。」
あ、それは日本も同じです。バカール先生は、今はラテン語でもギリシャ語でもなくて、太鼓語を研究しているという。

「ここでは、しゃべる太鼓、と言うのだ。昔は、電話もなかった、車もなかった。情報を伝える方法として、太鼓はいい手段だった。村から村へ、危険があるぞ、とか、誰それが結婚するぞ、とか、いろいろな情報が即座に伝えられた。太鼓語を理解する人々は限られており、代々技術が伝えられ、その人々が電信会社みたいな役割を果たしていた。」
このあいだ、熱帯雨林会議の夕食会で聞いた話は本当だったようだ。

「男の子は、他人の物を盗むと、厳しく叱られる。でも、他人の奥さんを盗んだときだけは、誉められる。他人から奥さんを盗むのは、強い男であることの証拠だ。」
そんな無茶な。盗んでどうするのですか。
「自分の奥さんにするのさ。だから、男は皆、自分の奥さんを大切にする。奥さんを大切にしておけば、盗まれてもちゃんと戻ってくるからだ。」
一理あるような無いような。それでここでは皆、略奪婚なのですか。
「いや、もちろん普通は、恋愛して結婚するさ。ムスリムの連中は、結婚を家族どうしで決めているようだが、ベテ族では本人が決める。それで男が女に恋をしかける。結婚を申し込むことを、相手の家の扉をたたく、という。扉をたたいて、娘さんを下さい、代金は払います。」
結納ですね、日本でもあります。でも、代金とは言葉が悪い。
「それは、女手は労働力だから。ちゃんと代償を払うということさ。昔は、代償の値踏みで、家どうしで喧嘩になった。でも今は、政府が決めたレートがある。」
結納に、公定レートがあるわけですか。
「そう、現金が2万5千フラン、と決まっている。それから、鶏1羽、腰巻きの布1反。あと、アルコールが1瓶。まあ、金持ちの家は、もう少し出すけど。」

ベテ族は、音楽と踊りが得意な部族と聞いていますが。
「昔はそうだったが、努力しないと廃れていく。その点、若い人々が、頑張ってくれている。歌詞は伝承の古い歌のまま、曲やリズムには現代風を取り入れるとかして、これからに伝えていこうとしている。毎年8月、ガニョア(県庁所在地)で、ベテ族の歌と踊りの祭典を催して、伝統が継承されるようにしている。来年(2009年)は、予算が無くて出来ないけど、2010年には必ず開催するつもりだ。そう、ここに居られるコドゥーさんが、祭りの実行委員長だ。どうだろうか、一つ提案がある。貴大使閣下にも、実行委員になってもらおう。」
コドゥー氏が、それはいい案だ、皆さん異論はないか、と聞く。皆が拍手する。そういう次第で私は、ベテ族の歌と踊りの祭典の、実行委員に任命された。

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