昨日(10月13日)朝、大使館に出勤したら、週末の間にファックスが入っていて、式典に日本大使の出席を求める、という。トレシュビル(アビジャン南部)の大学病院に、核磁気共鳴画像装置(MRI)が納入され、分析センターが開所されることになったので、その開所式に来てくれというのである。なぜ日本大使か、というと、選ばれたのが日立メディコ社製のMRI機であるからだ。もちろん出席する、と返事をする。
2006年にアビジャンで起きた有害廃棄物投棄事件は、死者12名、被災者10万人を越える大災禍となった。不法投棄したオランダの会社が、コートジボワール政府に対して賠償金を支払った。政府は、そのお金の一部で、病院の診断能力の向上を図るため、MRIを3台購入した。そういう背景のある話である。
式典開始は11時。時計を見ると9時、あと2時間しかない。すぐに大使館スタッフに来てもらい、簡単なスピーチを急いで起案する。案内には式次第が添付されておらず、果たして私に出番があるのかないのか分からない。しかし、演台に立つ機会があるならば、きちんと演説をしなければならない。準備は最大限に、というのが鉄則である。
日本は、今回コートジボワール政府が、日本企業の日立製の機材を選定したことを、大いに誇りに思う、このMRI機は、その素晴らしい機能が評判の機材である、日本は保健分野での協力を優先的に考えている、被害にあった人々を救いたいとの気持ちの表れである、等々と書き込む。日本がお金を出した話ではないので、あまり偉そうなことは言えないわけだが、構わない、日本の宣伝をどんどん盛り込む。1時間で、スピーチ案が出来た。
会場に到着すると、大学病院の病院長ほか関係者に出迎えられる。日本製のMRIを導入して、性能が素晴らしいという話である。体のどの部分でも、内部を手に取るように見ることができる。しかも、ちゃんと技術研修もしてくれた。さすが日本だ、先端技術国だ、と言われて、私の手柄ではないのだが、大変誇らしい。日本企業が、日本のイメージの最前線に立っている。
会場に案内され、最前列に着席を求められた。野外に建てられたテントの下で、背広を着た閣僚たち、先日のレミ保健相も来ている。政府関係者たちと一緒に座る。隣のテントには、病院関係者、お医者さんたちと思われる、白衣の一団がすでに着席している。日が強いので、とにかく暑い。ひたすら大統領が到着するのを待つ。1時間ほど待たされただろうか。バグボ大統領が到着。外交団で出席しているのは、私の他にはフランス大使だけ。彼が隣からささやく。待ち時間が1時間で助かったよ、先々週のエイズの会議では、3時間待たされた。
病院側の偉い人々が、次々に演説を行う。賠償金をこの機材の購入に充てたというのは、大統領の素晴らしい決断だ、と述べた終わりの方で、実はガン治療センターの設立も緊急に必要なのだ、と陳情が入った。次の人も、大統領をさんざん称えた後、自分の病院は高速道路沿いにあって、事故で急患が運ばれてくる、そのためにMRIが必要なので、もう1台、と陳情。満場の聴衆のなかでの陳情とは、なかなか強かなものだ、と感心する。
バグボ大統領が、促されて演台に上がる。最初の1~2行を、手元の草稿を見ながら話し始めた後は、身振り手振りを加えながら、もう草稿など見ない。自分は、送金されてきた賠償金を、正しく使おうと考えた。正しくとは、単に横取りする人の出ないようにするという話ではない。正しい趣旨でのみ使うということだ。つまり、学校を建てたり、他の病院に使うことも重要だが、今回のお金はそういう使い方をしてはいけない。被害者のために使うと言うことだ。そして病気治療に重要なのは、まず正確な診断だ。自分の故郷の格言では、「子鹿は豹から逃げることを考えるより、豹の足跡を見つけて豹に近づかないようにすることを知るべきだ」と言う。病気の足跡を見つけることが重要だ。診断用の最新鋭の機材が入った。これからは、診断だけのために、パリまで飛ぶ必要はないだろう。むしろ近隣国から、人々がアビジャンに診断に来るようになるだろう。云々。
50分の演説が終わった。こちらは汗だくである。拍手のあと、バグボ大統領は、病院内に入る。MRIの視察である。病院のスタッフが、脳の断面画像を示しながら、MRIの威力について説明している。確かに、鮮明な画像や、立体的な解析が印象的である。大統領は、説明を聞いたあと立ち上がり、私を見つけて握手をする。「大統領閣下、なんといっても日本製ですからね。自信をもってお奨めできます。」そこにいる一同が、爆笑する。
私のスピーチの出番はなかった。せっかく作ったスピーチ原稿は、そこにいた報道関係者にばらまいたので、誰かが明日の記事に使ってくれるだろう。スピーチこそ出来なかったが、それでも、日本にとって、大いに宣伝になる式典であった。これも、日本企業の力強い技術力のおかげ、日本企業の手柄である
2006年にアビジャンで起きた有害廃棄物投棄事件は、死者12名、被災者10万人を越える大災禍となった。不法投棄したオランダの会社が、コートジボワール政府に対して賠償金を支払った。政府は、そのお金の一部で、病院の診断能力の向上を図るため、MRIを3台購入した。そういう背景のある話である。
式典開始は11時。時計を見ると9時、あと2時間しかない。すぐに大使館スタッフに来てもらい、簡単なスピーチを急いで起案する。案内には式次第が添付されておらず、果たして私に出番があるのかないのか分からない。しかし、演台に立つ機会があるならば、きちんと演説をしなければならない。準備は最大限に、というのが鉄則である。
日本は、今回コートジボワール政府が、日本企業の日立製の機材を選定したことを、大いに誇りに思う、このMRI機は、その素晴らしい機能が評判の機材である、日本は保健分野での協力を優先的に考えている、被害にあった人々を救いたいとの気持ちの表れである、等々と書き込む。日本がお金を出した話ではないので、あまり偉そうなことは言えないわけだが、構わない、日本の宣伝をどんどん盛り込む。1時間で、スピーチ案が出来た。
会場に到着すると、大学病院の病院長ほか関係者に出迎えられる。日本製のMRIを導入して、性能が素晴らしいという話である。体のどの部分でも、内部を手に取るように見ることができる。しかも、ちゃんと技術研修もしてくれた。さすが日本だ、先端技術国だ、と言われて、私の手柄ではないのだが、大変誇らしい。日本企業が、日本のイメージの最前線に立っている。
会場に案内され、最前列に着席を求められた。野外に建てられたテントの下で、背広を着た閣僚たち、先日のレミ保健相も来ている。政府関係者たちと一緒に座る。隣のテントには、病院関係者、お医者さんたちと思われる、白衣の一団がすでに着席している。日が強いので、とにかく暑い。ひたすら大統領が到着するのを待つ。1時間ほど待たされただろうか。バグボ大統領が到着。外交団で出席しているのは、私の他にはフランス大使だけ。彼が隣からささやく。待ち時間が1時間で助かったよ、先々週のエイズの会議では、3時間待たされた。
病院側の偉い人々が、次々に演説を行う。賠償金をこの機材の購入に充てたというのは、大統領の素晴らしい決断だ、と述べた終わりの方で、実はガン治療センターの設立も緊急に必要なのだ、と陳情が入った。次の人も、大統領をさんざん称えた後、自分の病院は高速道路沿いにあって、事故で急患が運ばれてくる、そのためにMRIが必要なので、もう1台、と陳情。満場の聴衆のなかでの陳情とは、なかなか強かなものだ、と感心する。
バグボ大統領が、促されて演台に上がる。最初の1~2行を、手元の草稿を見ながら話し始めた後は、身振り手振りを加えながら、もう草稿など見ない。自分は、送金されてきた賠償金を、正しく使おうと考えた。正しくとは、単に横取りする人の出ないようにするという話ではない。正しい趣旨でのみ使うということだ。つまり、学校を建てたり、他の病院に使うことも重要だが、今回のお金はそういう使い方をしてはいけない。被害者のために使うと言うことだ。そして病気治療に重要なのは、まず正確な診断だ。自分の故郷の格言では、「子鹿は豹から逃げることを考えるより、豹の足跡を見つけて豹に近づかないようにすることを知るべきだ」と言う。病気の足跡を見つけることが重要だ。診断用の最新鋭の機材が入った。これからは、診断だけのために、パリまで飛ぶ必要はないだろう。むしろ近隣国から、人々がアビジャンに診断に来るようになるだろう。云々。
50分の演説が終わった。こちらは汗だくである。拍手のあと、バグボ大統領は、病院内に入る。MRIの視察である。病院のスタッフが、脳の断面画像を示しながら、MRIの威力について説明している。確かに、鮮明な画像や、立体的な解析が印象的である。大統領は、説明を聞いたあと立ち上がり、私を見つけて握手をする。「大統領閣下、なんといっても日本製ですからね。自信をもってお奨めできます。」そこにいる一同が、爆笑する。
私のスピーチの出番はなかった。せっかく作ったスピーチ原稿は、そこにいた報道関係者にばらまいたので、誰かが明日の記事に使ってくれるだろう。スピーチこそ出来なかったが、それでも、日本にとって、大いに宣伝になる式典であった。これも、日本企業の力強い技術力のおかげ、日本企業の手柄である
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