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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

兵士たちが騒ぐ

2008-10-03 | Weblog
先週の週末、首都ヤムスクロ(注:コートジボワールの制度上の首都。実際は、全ての政治・行政・経済上の首都機能はアビジャンにある)およびそこから東に250キロ離れたダウクロの2都市で、政府軍の一部兵士が蜂起し、発砲して示威行動を行うという騒ぎがあった。

週明けから報じられているところによると、土曜日(9月27日)の早朝から、一部兵士達が、上官を監禁した上で武器庫を破り、持ち出した銃、火砲などを発砲しながら街に繰り出した。騒擾は翌28日の昼過ぎまで続いた。市民が巻き添えになり、合計9名負傷したと伝えられている。兵士達は、支払われるべき手当が十分でないとして、その支払いを要求したものということだ。

政府軍側の対応は早かった。アビジャンから部隊を急派して鎮圧に動き、騒ぎは収まった。週明けの月曜日(29日)には、騒ぎを起こした兵士91名を除名、さらに彼らを逮捕して、これから軍事裁判にかけるということである。

アビジャンから遠く離れた場所で起こった出来事でもあり、週末を通じて、アビジャンでは普段と何ら変わったこともなかった。そもそも、そんな事件があったということがこちらに伝わってきた頃には、騒動は既に鎮圧されていた。日本だったら、テレビのニュースが刻々と現地からの中継を伝える、ということになるだろうが、そんな報道体制があるわけではない。だからセンセーショナルに騒がれることもなかった。

それでも、私がここに着任して以来、はじめて出くわす「不穏な動き」である。こういう事件が、どういう背景を持っていてどういう広がりを見せるのか、まだこれから悪い余波があるのか、そしてわれわれ大使館員を含めてコートジボワールの在留邦人に危険が及ぶのか否か、そうしたことを正確に分析し、責任持って情勢を判断しなければならない。ところが、着任2週間ではまだ経験が少なくて、とても不安がある。

大使館では、政務担当の書記官が、他の国の外交官の仲間や、日頃から連絡を緊密にしている地元の情報源の人々から、情報収集をする。実際に何が起こっているのか、対応を急いで要する事件なのか、そうではないのか。また、こういう時は、毎日一緒に仕事をしている、大使館の現地職員が、本当に頼りになる。彼らは何でも知っているだけでなく、情勢判断が正確である。地元コートジボワールの人というだけでなく、ここに住む年数と経験の量が違う。

落ち着かない私のところに、彼らが説明に来てくれる。兵士というのは、祭りの前には給料を払えと騒ぐものなのだ、という。祭りでの出費が予想されるし、家族にお金を持って帰らなければならないからだ。なるほどそういえば、ムスリムの断食月がもうすぐ終わり、30日に断食明けの祭りを控えている。これまでも、クリスマスの前などに、兵士達がデモを行うことがままあったという。給料の未払いは、国庫の資金不足の問題や、単にマネジメントの非効率の問題なのかもしれないが、下級兵士達には、上官の将校達がピンハネしている、と受け取られるという。

どうも、政治的な背景や、大きく飛び火して危険なことになる兆候はなさそうである。事情を良く知っていそうな、他の大使連中に電話をしてみる。誰も慌てている様子はない。ここはひとまず安心して、いつも通りの仕事を行うこととしよう。


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