部族間での諍いは、たんに小説の上だけの話ではない。現在でも、コートジボワールの地方で実際に起こっており、時に集団暴行や殺戮に発展する。つい先月、9月5日にも9人が殺害される事件が起こり、新聞の紙面で大きく報道された。
場所はボンドゥク県のマラウイ村というから、コートジボワールの北東部、あと100キロ東に走ればガーナ国境という地域である。アビジャンからは600キロ離れている。マラウイ村は、クランゴ族の村。そこに、ロビ族が襲撃をかけて、惨劇がおきた。コートジボワールの人々は心を痛め、早速9月13日から、国内の人権擁護機関である、人権委員会を派遣して調査に当たらせた。その結果、次の通りの顛末が判明したと、報道されている。
<一人の牛飼いが牛の群れを追っていた時、数百メートル先の茂みの中に、ジーンズ姿の人が横たわっていることに気がついた。牛飼いは怖くなって、近くのロビ族の村に駆け込み、横たわっている人はすでに死んでいるようだ、と告げた。村長は、翌朝を待って「死体」を探しに出たが、何も見つからなかった。村長は、これはマラウイ村のクランゴ族の人が、ロビ族の村人を殺した上に、復讐を恐れて死体を隠したのだ、と結論づけた。
ロビ族の村長は他の村人たちを率いて、マラウイ村に押しかけた。そしてマラウイ村の村長に、昨夜自分の村人が死体となって見つかった旨を告げた。両村の人々は、茂みに行って探した。死体らしきものは何も見つからなかった。一方、マラウイ村のゴミ捨て場で、女性の下着、腰巻の端切れ、古いTシャツなどが捨てられていた。ロビ族の村人たちは、顔をしかめて、説明が必要だ、と言い出した。
マラウイ村の婦人が出てきて、これらは自分と自分の子供たちの古着で、もうすり切れたので捨てたものだ、と言った。ロビ族の村長は、これらの古着が、自分の村人のものだと信じていたので、この説明を聞いて怒り出した。すぐにロビ族全体に伝令を出して、親族で行方不明になっているような人がいないか、と聞いた。そうすると、自分の妻と子供たちが、葬式に出席するために村を出て以来、2ヶ月も帰ってきていない、と40歳の男が言っていることがわかった。
その男は、鉈や猟銃などを手にした親族たちと一緒に、マラウイ村にやってきた。その下着や腰巻を見るや否や、大泣きをはじめた。それは自分の妻のもので、妻や子供は殺されたということだからだ。親族たちはマラウイ村を取り囲み、襲撃を始めた。9人が殺され、24人が重軽傷、25軒の家が焼かれた。>
真相はわからない。まったく詰まらない事に端を発した出来事のように思われる。しかし、いくつかの報道は、ここ数十年来、クランゴ族とロビ族の間に、不信感が存在していたことを伝えている。クランゴ族は、ガーナにかけての東部地域に広がるアカン系の部族である。一方、ロビ族は北部から進出してきたセヌフォ系の部族である。ともに農業を営み、土地所有を巡っての争いが根深い。1993年にも、同じマラウイ村で13人が殺害される事件が起きている。
対立のなかで、相手に対する偏見に満ちた感情が生まれる。報道によれば、ロビ族はクランゴ族を恐れていたという。彼らは他部族の人間を殺して生け贄にする風習を持つ部族なのだ、と。一方で、そのロビ族には、自分が相手より強いということを、相手の妻を誘拐して自分のものにすることで誇示する習わしがままあるという。女性が突然に失踪することは、彼らの間ではよくある話であるらしい。だから、一村人の失踪に端を発して、部族同士の抗争に至る可能性は、これからもあるわけだ。
日本と同じ民主主義と法治国家の統治機構を運営しながらも、地方に行けば、前近代的な部族社会の風習やしきたりがある。殺戮事件に至るのは極端な場合であるとしても、そうした部族社会の論理が優先することがあるというのも、コートジボワールの社会の厳しい一面なのだろう。
場所はボンドゥク県のマラウイ村というから、コートジボワールの北東部、あと100キロ東に走ればガーナ国境という地域である。アビジャンからは600キロ離れている。マラウイ村は、クランゴ族の村。そこに、ロビ族が襲撃をかけて、惨劇がおきた。コートジボワールの人々は心を痛め、早速9月13日から、国内の人権擁護機関である、人権委員会を派遣して調査に当たらせた。その結果、次の通りの顛末が判明したと、報道されている。
<一人の牛飼いが牛の群れを追っていた時、数百メートル先の茂みの中に、ジーンズ姿の人が横たわっていることに気がついた。牛飼いは怖くなって、近くのロビ族の村に駆け込み、横たわっている人はすでに死んでいるようだ、と告げた。村長は、翌朝を待って「死体」を探しに出たが、何も見つからなかった。村長は、これはマラウイ村のクランゴ族の人が、ロビ族の村人を殺した上に、復讐を恐れて死体を隠したのだ、と結論づけた。
ロビ族の村長は他の村人たちを率いて、マラウイ村に押しかけた。そしてマラウイ村の村長に、昨夜自分の村人が死体となって見つかった旨を告げた。両村の人々は、茂みに行って探した。死体らしきものは何も見つからなかった。一方、マラウイ村のゴミ捨て場で、女性の下着、腰巻の端切れ、古いTシャツなどが捨てられていた。ロビ族の村人たちは、顔をしかめて、説明が必要だ、と言い出した。
マラウイ村の婦人が出てきて、これらは自分と自分の子供たちの古着で、もうすり切れたので捨てたものだ、と言った。ロビ族の村長は、これらの古着が、自分の村人のものだと信じていたので、この説明を聞いて怒り出した。すぐにロビ族全体に伝令を出して、親族で行方不明になっているような人がいないか、と聞いた。そうすると、自分の妻と子供たちが、葬式に出席するために村を出て以来、2ヶ月も帰ってきていない、と40歳の男が言っていることがわかった。
その男は、鉈や猟銃などを手にした親族たちと一緒に、マラウイ村にやってきた。その下着や腰巻を見るや否や、大泣きをはじめた。それは自分の妻のもので、妻や子供は殺されたということだからだ。親族たちはマラウイ村を取り囲み、襲撃を始めた。9人が殺され、24人が重軽傷、25軒の家が焼かれた。>
真相はわからない。まったく詰まらない事に端を発した出来事のように思われる。しかし、いくつかの報道は、ここ数十年来、クランゴ族とロビ族の間に、不信感が存在していたことを伝えている。クランゴ族は、ガーナにかけての東部地域に広がるアカン系の部族である。一方、ロビ族は北部から進出してきたセヌフォ系の部族である。ともに農業を営み、土地所有を巡っての争いが根深い。1993年にも、同じマラウイ村で13人が殺害される事件が起きている。
対立のなかで、相手に対する偏見に満ちた感情が生まれる。報道によれば、ロビ族はクランゴ族を恐れていたという。彼らは他部族の人間を殺して生け贄にする風習を持つ部族なのだ、と。一方で、そのロビ族には、自分が相手より強いということを、相手の妻を誘拐して自分のものにすることで誇示する習わしがままあるという。女性が突然に失踪することは、彼らの間ではよくある話であるらしい。だから、一村人の失踪に端を発して、部族同士の抗争に至る可能性は、これからもあるわけだ。
日本と同じ民主主義と法治国家の統治機構を運営しながらも、地方に行けば、前近代的な部族社会の風習やしきたりがある。殺戮事件に至るのは極端な場合であるとしても、そうした部族社会の論理が優先することがあるというのも、コートジボワールの社会の厳しい一面なのだろう。
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