「大統領選挙を控えたこの重要な時期に、大使としてこちらに赴任できて光栄です。」
外交団への着任挨拶として、皮切りに訪ねたフランス大使に対して、私はこう切り出した。
「いやー、3年前に私が着任したときも、それと同じ挨拶をしたものでしたよ。」
彼はほほ笑みながら答える。今度の大統領選挙も再び延期されるだろう、との含みである。
大統領選挙。コートジボワールの混乱は、じつにこの大統領選挙をめぐって続いてきた。
バグボ大統領は、2000年の大統領選挙で選ばれた。しかしこの選挙結果や、そもそも選挙のやり方に異議のある人々もいた。錯綜した政治事情も背景に、2002年9月18日の夜半、不可思議な軍事蜂起が起こる。バグボ大統領は何とかクーデタを抑えたが、国の北半分では軍事勢力が支配。それ以来、国が南北に割れてしまった。今からちょうど6年前の話である。
国連の安全保障理事会が決議をして、両勢力の間に国連平和維持活動(PKO)の部隊を送り、対立が激化することを防いできたが、それにもかかわらず、たびたび南北の間では戦闘が繰り返されてきた。2004年11月には、一部の民族主義者が欧米排斥に動き、大混乱のうちに大方の外国人がコートジボワールの国外に待避した。
しかし、南北の両方とも、分裂と混乱には終止符を打たなければならないと考えるようになってきた。さまざまな仲介努力もあり、南北の間の話し合いが持たれ、北部の勢力からの首相を迎えて、南北合同の政府が構成された。そして懸案は、何をおいても大統領選挙である。
コートジボワールの憲法では、大統領の任期は5年と定めているから、バグボ大統領も大統領選挙を行わなければならないことは十分承知している。大統領は、今年の11月30日に選挙を実施すると約束した。信任状捧呈では、私にも「選挙はやる」と力強く述べていた。コートジボワールの人々は、大統領選挙を通じた政治の正常化を「危機からの脱出」と呼んで、期待感を持って見守っている。大統領選挙の準備が、国際社会の協力も得て、進められている。
ところが、「着々と進められている」と言えないところが、つらいところだ。そもそも有権者が誰なのか、選挙人名簿はこの8年来改訂されていない。人々に選挙公報をして、登録してもらう作業も膨大である。立候補者の認定をめぐって、再び政治対立が起こるかもしれない。北部の軍事勢力が武装解除して、民政に戻ることが前提であるのだが、必要な資金の問題も含めて、まだ見通しがはっきりしない。
だから、フランス大使が少なからず醒めた言い方をしたように、再び大統領選挙の実施が延期される可能性もある。そうした不安もあるなかで、人々の選挙への期待は大きく、新聞には連日、選挙の実施を巡っての記事が、満載されている。政治の混乱が、経済の停滞を招くことは、万邦共通の話である。大統領選挙への期待感は、先日のレセプションでも多くの経済人が口にしていた。いったん引き上げた日本の民間企業各社も、大統領選挙がどうなるかを見守っており、政治が正常化してこそアビジャンに戻って来てもらえるのだろう。私がコートジボワールで前向きの仕事が出来るかどうか、この大統領選挙にかかっている。
外交団への着任挨拶として、皮切りに訪ねたフランス大使に対して、私はこう切り出した。
「いやー、3年前に私が着任したときも、それと同じ挨拶をしたものでしたよ。」
彼はほほ笑みながら答える。今度の大統領選挙も再び延期されるだろう、との含みである。
大統領選挙。コートジボワールの混乱は、じつにこの大統領選挙をめぐって続いてきた。
バグボ大統領は、2000年の大統領選挙で選ばれた。しかしこの選挙結果や、そもそも選挙のやり方に異議のある人々もいた。錯綜した政治事情も背景に、2002年9月18日の夜半、不可思議な軍事蜂起が起こる。バグボ大統領は何とかクーデタを抑えたが、国の北半分では軍事勢力が支配。それ以来、国が南北に割れてしまった。今からちょうど6年前の話である。
国連の安全保障理事会が決議をして、両勢力の間に国連平和維持活動(PKO)の部隊を送り、対立が激化することを防いできたが、それにもかかわらず、たびたび南北の間では戦闘が繰り返されてきた。2004年11月には、一部の民族主義者が欧米排斥に動き、大混乱のうちに大方の外国人がコートジボワールの国外に待避した。
しかし、南北の両方とも、分裂と混乱には終止符を打たなければならないと考えるようになってきた。さまざまな仲介努力もあり、南北の間の話し合いが持たれ、北部の勢力からの首相を迎えて、南北合同の政府が構成された。そして懸案は、何をおいても大統領選挙である。
コートジボワールの憲法では、大統領の任期は5年と定めているから、バグボ大統領も大統領選挙を行わなければならないことは十分承知している。大統領は、今年の11月30日に選挙を実施すると約束した。信任状捧呈では、私にも「選挙はやる」と力強く述べていた。コートジボワールの人々は、大統領選挙を通じた政治の正常化を「危機からの脱出」と呼んで、期待感を持って見守っている。大統領選挙の準備が、国際社会の協力も得て、進められている。
ところが、「着々と進められている」と言えないところが、つらいところだ。そもそも有権者が誰なのか、選挙人名簿はこの8年来改訂されていない。人々に選挙公報をして、登録してもらう作業も膨大である。立候補者の認定をめぐって、再び政治対立が起こるかもしれない。北部の軍事勢力が武装解除して、民政に戻ることが前提であるのだが、必要な資金の問題も含めて、まだ見通しがはっきりしない。
だから、フランス大使が少なからず醒めた言い方をしたように、再び大統領選挙の実施が延期される可能性もある。そうした不安もあるなかで、人々の選挙への期待は大きく、新聞には連日、選挙の実施を巡っての記事が、満載されている。政治の混乱が、経済の停滞を招くことは、万邦共通の話である。大統領選挙への期待感は、先日のレセプションでも多くの経済人が口にしていた。いったん引き上げた日本の民間企業各社も、大統領選挙がどうなるかを見守っており、政治が正常化してこそアビジャンに戻って来てもらえるのだろう。私がコートジボワールで前向きの仕事が出来るかどうか、この大統領選挙にかかっている。
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