生徒会は学校運営に参画する仕組みに 特活の位置付け明確化

生徒会は学校運営に参画する仕組みに 特活の位置付け明確化
主体的に社会参画する力を身に付けるための教育課程の改善に向けて議論した中教審特別部会の第11回会合=オンラインで取材
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 学校で子どもの主体的な参画を促すため、文部科学省は7月28日、中教審教育課程企画特別部会の第11回会合で、次期学習指導要領で確かな民主主義の担い手を育み、共生社会を実現する基盤を提供する領域として、特別活動の位置付けを明確化することを提案した。児童会・生徒会活動を校則などの学校運営に子どもが関わる仕組みとして示したり、学校行事について、行事の性質や教師の負担面を考慮しつつ、子どもたちが創造する活動である趣旨を明確にしたりする。

 選挙権年齢の18歳への引き下げやこども基本法の制定など、主体的に社会に参画していく力の育成や、子どもたちにとって身近な社会である学校の中でそれらを実践していく必要性が指摘されている。次期学習指導要領に向けた中教審への諮問でも、教育基本法、学校教育法に加えて、こども基本法の趣旨を踏まえた主体的に社会に参画していくための教育の改善が論点の一つに挙がっていた。

 そこで文科省では、次期学習指導要領で子どもの社会参画に関わる教育内容を充実する方針を打ち出した。今後、社会科・公民科を中心に関連する教科等のワーキンググループ(WG)で子どもの社会参画や意見表明を推進する観点からの教育内容の見直しを検討するほか、全ての教科等で、自分の意見について根拠に基づいて説明したり、一方的な意見の主張にとどまらない対話をしたりすることを含む、協働的な学びを一層重視する。

 その中核となる特別活動では、多様な個性や特性、背景を持つ他者との対話や協働により、児童生徒が主体となってルールの形成や学校生活の改善、学校行事などに参画することにより、主権者としての民主主義教育の担い手を育み、共生社会を実現する基盤を提供する領域として位置付けを明確化する。

 児童会・生徒会活動は、教育的活動という性質に配慮しつつ、校則などの学校運営に子どもが発達段階に応じて関わる仕組みであることを明示。学校行事では、各行事の特質や教師の負担軽減の観点も踏まえつつ、子どもたちが創造する活動である趣旨をより明確にする。学級活動も、多様性を踏まえ、共生社会の実現に向けた納得解を形成しようとすることの重要性をより明確に位置付ける。

 さらに、社会の中で子どもの意見を反映させる受け皿の整備として、学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)に子ども自身が参画したり、自治体の教育振興基本計画や教育大綱の策定などの議論で、子どもの意見表明の機会を設けたりする取り組みも検討。学校評価でも、学校運営の評価・改善プロセスに子どもが関わることについて、子どもの社会参画に関わる教育内容との関連付けを促し、学校での取り組みと評価・改善の仕組みの両面から推進していく。

 この日の議論で、こども家庭審議会の会長も務めている秋田喜代美主査代理(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)は、こども基本法や子どもの権利が学校現場で十分に浸透していない現状に触れた上で「学習指導要領が憲法や学校教育法などと同時にこども基本法の理念に基づいているのだということを、総則の中に入れていただき、子どもの社会参画を促進していくということ、子ども自身が幼小中高とつないで知っていくことが重要だ。総則や社会科だけでなく、道徳や特別活動を含めて教育していくことが大事だ」と強調した。

 今村久美委員(カタリバ代表理事)も「『意見を言いたい』『自分はこれが課題だと思うから伝えたい』というのは、やはり教科の学びの中でどう育成していくかが重要だと思っている。教科横断的に育成していく基盤となる資質・能力に(社会参画力を)位置付けられないか。もちろん特別活動は大切だが、特別活動は教科ではないので、軽視されたままになってしまうのではないか。重要視するならば資質・能力として設定すべきだと思う」と、資質・能力として明確に定義する必要があるとの立場を示した。

 澤田真由美委員(先生の幸せ研究所代表取締役)は、学校行事を例に、教師が用意した内容に沿って子どもが動くことがよいとされる一方で、言われた通りに動く力を育てることにとどまっていないかと疑問を感じ、葛藤している教師もいると指摘。「子どもが主体になれば、大人主導に比べれば当然、拙さは想定されるが、そうだとしても子どもの創造する活動こそが大事なのだと強調していただき、先生たちが子ども主体の活動に自信を持てるような工夫を期待する」と話した。

 

【キーワード】

特別活動 よりよい学校生活や集団づくりを目指し、さまざまな活動に実践的に取り組む領域とされ、学級活動・ホームルーム活動や児童会・生徒会活動、学校行事、小学校のクラブ活動などが含まれる。日本の教育課程の特徴の一つでもある特別活動は近年、「Tokkatsu」として海外からも注目されている。

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