3000脚の椅子に座った結果、壁が写真で埋まりました
捨てられた椅子を見つけては、それに座って写真を撮る。そんな活動を始めてから、気づけば7年7か月。ついに3000脚に達したことを記念して、「捨てられた椅子、3000の邂逅展」という写真展を開いた。
始めた頃は、まさかこんなに続けるなんて思っていなかった。ふと振り返ったら、3000脚の捨てられた椅子に座っていた。思えば遠くへ来たもんだ。いや、特に遠くへは来ていない。この8年、おもに自宅のある世田谷区近辺で、コツコツと座ってきた結果である。
今年1月、3000脚を達成してから展示の準備に取りかかった。
3年前、1000脚に達したときにも写真展を開いている。そのときに印刷した1000枚は、きれいに保管してある。だから、今回はあと2000枚刷ればいい。大変そうではあるが、毎日少しずつ印刷すれば、できなくはない気がする。
しかし、問題はそこじゃなかった。今回のギャラリーで3000枚を展示することが可能なのか?
そこが一番の問題だ。
図面をもとに計算してみたら、1500枚くらいしか貼れないことが判明した。
ダメじゃん。
いきなり暗礁に乗り上げてしまった。
どうする? 諦めるか?
しばらく考えた末、ひとつのアイデアが浮かんだ。
写真のサイズを小さくすればいいのでは?
前回の写真展では「Lサイズ」で出力していた。「Sサイズ」みたいな小さい用紙があれば、いけるのでは?
調べてみると「Sサイズ」はなかったが、「カードサイズ」という小さな用紙があることがわかった。「Lサイズ」の半分くらい。チェキと同じサイズである。半分なら、3000枚貼れる!
いける! ということで、カードサイズの用紙を大量に購入した。以前の1000枚は無駄になるが、仕方ない。
そこから、出力の日々が始まった。
写真を印刷したら、100均で調達したチェキ用のスリーブに入れ、番号のシールを貼る。この一連の作業を、3000枚分繰り返した。準備が終わったのは、写真展の1週間前。結局、4か月ほどかかってしまった。
出力を終えてホッと一息……とはいかず、準備はここからが本番だ。ギャラリーに3000枚の写真を貼らなくてはいけない。出力の段階から家族の助けを借りていたが、貼る作業も手伝ってもらった。
昔、「岸辺のアルバム」というドラマがあった。崩壊寸前の家族が多摩川の決壊という災害に遭い、絆を取り戻す話だ。最終回、流されてしまう家に向かって、家族がそれぞれ「さよなら」と叫ぶシーンが印象的だった。
ギャラリーの壁に写真を貼ってくれている家族を見て、「岸辺のアルバム」の「さよなら」を思い出した。我が家は(もちろん)崩壊寸前ではない(たぶん)。
そんな家族の協力のもと、3000枚の写真が並ぶクレイジーな展示を実現することができた。
コスパ、タイパ、合理性。そんな言葉が重要視される昨今、それらの真逆をいく4か月を過ごしたような気がする。いや、この写真展の準備期間だけではない。7年7か月にわたるこの活動自体が、それらの言葉とは無縁の場所にあり、遠くで汽笛が鳴っている。
3000枚の写真に囲まれた展示会場の中で、改めてそんなことを思った。
1月から始めた展示の準備中も、捨てられた椅子に座る活動はもちろん続いていて、今日の時点で3227脚に達している。
展示を観に来てくれた人から、
「この後、どうするんですか?」
「終わりはあるんですか?」
と聞かれることが多かった。
考えるまでもなく、答えは決まっている。
「これからも変わらず座り続けます」
そして、終わりも想定していない。
何が自分をそうさせるのか、自分がいちばんわからないのだ。誰か教えてほしい。
展示期間の1週間は、あっという間に終わってしまったが、予想よりも多くの人たちに見てもらうことができた。
見に来てくれた人たちは、最終的に、
「一体、何を見せられているんだろう?」
と思ったかもしれない。
だって、自分でも、
「一体、何を見せているんだろう?」
と思ったくらいだから。
でも、展示を終えた今、とても満足してしまっている。
次の展示は5000脚の記念かな、とも思っている。
チェキサイズより小さい写真用紙を探すか、今回より大きな会場を探すか。
それが当面のタスクである。


コメント
1コスパタイパの悪いと思われる作業、というところこそに、
これこれこれえ〜!
そこそこそこ〜!!
ワクワクが止まらないのは一体どういう症候なんでしょうか、、
さらに奄美大島での3日間、、ご家族含めて、大好きです、応援しています♪