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渡邊渚インタビュー「私だから死んでないだけ」PTSD、SNS中傷…それでも笑って過ごす(聞き手・吉田豪)

(オリジナル記事はみんかぶマガジンで2025年5月10日に配信したものです)

 テレビの世界は、一見きらびやかだ。全国ネットで流れる笑顔や立ち居振る舞いは、日常を彩るひとコマとして私たちに届く。けれど、その裏で何が起きていたのか――本人が語らない限り、知るすべはない。元フジテレビアナウンサーの渡邊渚さんも、そんな「知りえなかった一人」だった。大学時代から注目され、期待を一身に背負いながら入社し、番組を次々と担当。だが、ある日を境に、画面から姿を消した。「もう戻れないかもしれない」と思った日々を経て、少しずつ言葉を取り戻しつつある。そんな彼女の“今の姿”を、プロインタビュアーの吉田豪氏(@WORLDJAPAN)が前編・後編にわたって引き出した。

『みんかぶマガジン』ヤバいんですか?

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渡邊 (テーブルの上にICレコーダーとかと並んで置かれた吉田豪のドラえもんミニタオルを見て)あ、ドラえもんがめちゃくちゃいっぱいいる!ドラえもんかわいいですよね。

――昭和ドラは最高です!渡邉さんも漫画がお好きなんですよね?

渡邊 漫画は好きですね。

――『Dr.STONE』(原作/稲垣理一郎、作画/Boichi。『少年ジャンプ』連載)、ボクも好きなんですよ。

渡邊 素晴らしい! 全巻揃えてます。

――ちなみに作画のBoichiさんが10年ほど前に描いた『ORIGIN』(『ヤングマガジン』連載)って読んでます?

渡邊 読んでないです。

――オススメですよ。たぶん渡邉さんに刺さると思います。

渡邊 いまメモしました!

――じゃあ、そろそろ本題に入ります。今日もマネージャーやスタッフを連れずに一人でいらっしゃってますけど、いまって仕事は全部、自分で選んでるわけですよね?

渡邊 そうですね、基本。

――心配なんですよ、なんで『みんかぶマガジン』に出てるんですか(笑)。

渡邊 ……え、ヤバいんですか?

みんかぶ担当 ちゃんと株のサイトです!ただ、株じゃない記事が多くなってきて……。

――株じゃない記事自体はいいんですけど、人選に良くも悪くも幅があるので、ボクも「なんで『みんかぶ』に出るんだ!」って怒られたりするような媒体ではあったりします。

渡邊 ……え、そうなんですか? 私はフラットに見てました。

みんかぶ担当 ちゃんとしてるはずです!

――『みんかぶ』もそうだし、フリーになって最初のレギュラー番組が『REAL VALUE』(堀江貴文、溝口勇児、三崎優太による経営エンターテイメントYouTubeチャンネル)の社長対談なのもそうだし、なぜそこを選ぶ!?っていう疑問が正直あるんですよね。

渡邊 ああ。でも、仕事に大小はないと思ってるし、自分が直接会って打ち合わせとかしてみて、悪い人たちじゃないっていうのがわかってからお受けしてるので。

――みなさんが心配するほどのことはない、と。

渡邊 そう、みなさん心配してくださるんですけど……。

――REAL VALUEマフィア(番組に出演している起業家たちの通称)と絡んでも大丈夫なのかっていう。

渡邊 そう、心配されるんですけど(笑)、『REAL VALUE』の人たちもふつうの人ですから。番組のなかでキャラというか、そういうものでやってるだけで。

――堀江さんが番組で激怒したりするのも。

渡邊 あれもエンターテインメントだと思うので。みなさんホントにふつうの経営者でまじめにお仕事されてる方たちで、そういう側面だけじゃなくて。それと基本的に私がやってるのはモデルプレスとREAL VALUEのコラボ番組なので、本編とはまた空気感が違うんですよ。

――もうちょっとちゃんとした社長さんのお話を聞く番組で。

渡邊 はい、基本は会社をどうやって成功させてきたかっていうお話を聞く会なので。

――プレゼンでキレたりされる仕事ではないんですね。

渡邊 そうです、私のほうはぜんぜんパワハラタイム(番組内でREAL VALUEマフィアたちがプレゼンターの起業家を質問攻めする時間のこと)ありません。だから、すごくお勉強させていただいてるし、他のお仕事も変な人いないですよ。みんなが心配するほどじゃないんです。

――ハラハラしながら見てましたけど、大丈夫なんですね。

渡邊 意外と大丈夫です、制作の人たちもちゃんとしてるし。

いまはあらゆることにチャレンジできる状態

――エイプリルフールの謎の投稿(25年4月1日、『REAL VALUE』や『BreakingDown』の運営会社BACKSTAGEの広報が「ご報告 この度、弊社代表の溝口勇児と渡邊渚さんがご結婚されました 本当におめでとうございます! 末永くお幸せに」と2人の画像をツイート。溝口勇児氏が「さすがにこれはやりすぎ。消して」と指示してネットニュースに)もハラハラしながら見てました。

渡邊 あれは正直、私も関知してなかったです。ネットニュースで見て、「え、そんなことあったの?」みたいな感じで。ビックリしました。

――以前、「ネット上で“計算高い女”って言われたりする」って言ってたじゃないですか。でも、そういう仕事の選び方とかも含めて、全然計算できてないよと思ったんです(笑)。

渡邊 ですよね、だから私そんな計算高くないんですよ。

――計算高かったら今回の仕事も選んでないですよ。

渡邊 ホントそうなんです。

――もうちょっと戦略的に出方を考えると思うんですよね。

渡邊 でも、『REAL VALUE』に関しては、経営者のお話を聞けるっていうだけでも価値があるんじゃないかなって。この先、長い目で見て私もずっとこの仕事をしていけるとは思ってないし、これからいろんな人生の選択がたくさんあるなかで、そういう社長たちのお話を聞いて活かしていけるものがあると思ったので、私も聞いてみたいと思ってこのお仕事を受けました。

――社長さんたちに「逆境をどうやって乗り越えたのか」を聞いてるのは、渡邉さんならではだなと思いました。

渡邊 メンタリティの部分もお聞きしたりするので。社長って孤独だったり、逆に帝王学を学んでる方もいらっしゃったり、いろんなタイプの方がいるんだけど、ふつうの人もいたりするし。自分に残しておきたいものはいっぱい残して、自分の人生に活かしていきたいと思ってます。

――いままでやれなかったようなことをやってみたいっていうのもあるんですかね。それこそ、フジテレビ時代だったら受けてないような仕事とか。

渡邊 そうですね、フジテレビ時代は仕事の範囲も限られてましたし、いまはあらゆることにチャレンジできる、何も縛られてない状態なので。だから、すごく自由に楽しくやってます。

――ただ、局アナ時代からエッセイとかもおもしろかったんですよ。

渡邊 ありがとうございます……よかったです、書いててよかった。

――ちゃんと“変わった部分”をアピールできてました。

渡邊 自分ではアピールしようとは思ってなかったんですけど……変わってたらしいですね(笑)。

異色の趣味「ボトルシップ作り」

――趣味が「ボトルシップ作り」なのは相当変わってるじゃないですか。ボクも模型は好きですけど、さすがにそこまではいけないですから。

渡邊 たしかに、これだけずっとボトルシップが好きって言ってきて、まだ私以外のボトルシップ好きに出会えてないので。

――60年代、70年代に流行った文化だから、専門書にしても相当古いわけじゃないですか。

渡邊 めちゃくちゃ古いですね。そのときに発行された本をオークションで買って勉強してたので。

――80年に出た本が最後で。道具を手作りしている話には衝撃を受けましたよ。

渡邊 ストレスが発散できない趣味なんですよ(笑)。すっごい疲れます。

――局アナで金属加工やってる人がいるとは思わないですから。

渡邊 ね、「焼きなまし」なんて家でやらないですよね。

――そのフレーズをまず知らないです!そもそもボトルシップの道具が世の中に存在しないから、自分で作るしかないという。

渡邊 フフフフ、コンロの前でずっとステンレス製の魚の焼串を炙って、柔らかくなるまで。でも家庭用のコンロってそんなに火力もないから、長時間温めて金属を切ったりして。

――『Dr.STONE』が好きなだけあるなって感じですけど、小学生でエレベーターの模型を作ってたというのもさすがでした。

渡邊 やってましたね、夏休みの自由研究で。ノートに地図と住居やショッピングモールの間取り図を書いて理想の街を思い描いてみたりもして。

――ひとりで何かするのが昔から好きではあった。

渡邊 はい、ひとりはけっこう好きでしたね。小さいときは新潟に住んでたんですけど、冬場って外に出て遊ぶのはけっこうキツいんで。

――積雪量がシャレにならないですもんね。

渡邊 雪遊びももちろんしてたんですけど、家でひとりで遊べるものが好きで。建物とかすごい好きでしたね。

――建物の模型も作ってるんですよね。

渡邊 はい。

――ガチじゃないですか!

渡邊 ね、変人らしいです(笑)。

――おそらくアナウンサー業界では珍しいタイプ。

渡邊 かもしれないですね。ゲーム好きの方はけっこういらっしゃるけど、模型好きは聞かないですね。芸能界でもボトルシップ作りは聞かないですよね。

――ボクは老人のインタビューも相当してますけど、ボトルシップの話が出てきたことは一切ないです。

渡邊 なかなかお友達が増えなくて困ってるんですよ。弟子入りしたいんです、本物に。

――当時からやってるベテランの方に。

渡邊 はい。でも、いないんですよね。つながれなくて。

――そういう趣味を知った上だと、渡邉さんが大変な経験をした結果、「指が動かなくなった」ことの重さがよりわかってくるんですよね。

渡邊 そうですね。体調を崩してからは作業に使うノコギリとか握れなかったんです。ずっと手が震えてて。ふつうに箸を持ってご飯を食べたり、ペンで書いたりってすごく尊いことだったんだなというか。当たり前に感じてたけど、人間ってすごいなと思うようになって。

――ふつうがどれだけ大切なのか。

渡邊 ここ2年くらいでホントにそれを実感しました。

「ここまで元気になった人は少ない」精神科医師の言葉

――渡邊さんの本『透明を満たす』(講談社)は即予約して発売直後に読みましたけど、大変な状況になったときのことを克明に描写していて、想像をはるかに超えてました。

渡邊 ものを書くって主観ばかりになっちゃうし、読んだ人からしたら、これは私の創作物であって客観性がないんじゃないかと思われちゃうと思ったので、できるだけ客観的に客観的に……と思って、時系列でわかりやすく書くこととか、当時自分が残してた日記をあらためてちゃんと見て、整合性を高めて書いたりはしてました。よりリアルに伝わるように。

――かなり過酷な作業なわけじゃないですか。もちろん治療の過程で自分の傷に向き合うようなことをしてきたからできたことだとは思いますけど、しんどい経験ともう一度向き合い直して文章にするのは。

渡邊 たいへんですよね、ホントに。嫌になります(苦笑)。私が受けたPE療法、持続エクスポージャー療法というのはトラウマに立ち返って話していくので、ある程度、元気になってからじゃないと、やっぱり思い出すことで精神的に落ちる部分があるので様子を見つつやるんです。だから、いろんな人たちに支えてもらいながら、主治医の先生もそうだし、カウンセリングをやってくれた臨床心理士さん、あと治療をやってることを知ってる友人とか家族に支えてもらいながらじゃないとここまで来られなかったなと思います。

――あの描写は本当に壮絶でした。

渡邊 自分がPTSDになったときに最初にネットで調べて、治療日記みたいなのが何もなくて。癌とか鬱病だったらけっこうあるじゃないですか。PTSDは症例数も少なくて、しかもここまで元気になった人はわりと少ないって言われるんです。いろんな精神科の先生のお話を仕事でも聞くようになって、「どうやって元気になったか」という過程を世に出していくのは、すごく価値のあることなんじゃないかって。なのでまじめに書いてよかったなと思うし、PTSDになってしまう人がこれからの未来にもいるはずなので、そういう人たちが読んで、こういう治療をするんだとか、そういう方法もあるんだって知ってもらえたらなと思ってます。

――そういう自分の役割を見つけられたことで、生きる希望みたいなものも出てきますよね。

渡邊 よくPTSDとかそういう病気になった人は、そこに希望とか回復の過程を作っていくみたいなことを学術的にも言われてるらしく、自分の経験で何をするかのひとつがそれだったのかなと思います。

――基本、こういうことの啓蒙をしつつ、いろんなことをやっていければという考えなんですかね。

渡邊 そうですね、啓蒙活動もしてますし、いまシルバーリボン(脳や心に起因する疾患およびメンタルヘルスへの理解を深め促進することを目的とした運動)ともお仕事してたり。

――インスタに書いても反応がないことでおなじみのシルバーリボンですね(笑)。

渡邊 はい、ビックリしました(笑)。あんだけ毎日私のインスタのストーリーすら全部ネットニュースになってたのに、シルバーリボンはならないんだと思って。

――真っ当な活動については報道してくれない。

渡邊 本当に伝えたいことはなかなか伝わらないものですね。変に切り取って病気の人を刺激することになったら、クレームが来てリスクにもなるのだろうなと。

――ヘタな触れ方もできない。

渡邊 そう、うまく触れることもできもしない。「ちょっと!」と思いましたけどね。

――「またネットニュースになってる!」って毎日のように思ってるわけですよね?

渡邊 そうですね、朝起きたら自分がまたネットニュースになってるなっていう。

「私だから死んでない」SNS中傷との向き合い方

――SNSとかでのバッシングもかなりのものになってますけど、「みなさんが思ってるほど傷ついてはいない」みたいなことを言われてるじゃないですか。

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