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べつやくれいさんに聞く、エッセイ漫画の描き方

デイリーポータルZに登場するライターたちをもっと知ってもらいたい! 記事には出てこない工夫や、工夫してないところなどを聞きます。

初回はべつやくれいさんに、エッセイ漫画の描き方を聞きました。エッセイ漫画を描きたいと思っている人の参考になるかと思っていたのですが……(取材:岡田有花・林雄司/構成:岡田有花)

自画像は自由でいい


――べつやくさんの自画像、個性的ですよね。

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べつやくさんの自画像「べつやく」。「とけかけ雪見だいふくのすすめ」より

自分としては、すごいかわいく描いています。

――かわいく。

これが世間一般の言うかわいいじゃないのはわかってるよ。わかってる。うん。 

――2004年にべつやくさんがライターとして参加した当初の自画像は、4~5頭身ぐらいありました。でも今は2頭身ぐらい。

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最初のべつやく。「冬に備えてババシャツを手に入れる」(2004年)より
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3年目のべつやく。頭身が下がってきている。「明石・たこコレクション」より。

最初は人間っぽい感じで描いてたんですけど、描いていくうちに簡略化して……どんどん頭身が縮んでいきました。できるだけ楽に描きたくて。着てるものも雑になり。

人間の形なんですが、だんだん記号みたいになっていった。まんがの自画像は、「これが作者だ」って読者が認識できればいいんです。

――最初は口もなかったですよね。

なかった。でも口が開いたらね、ちょっと表情をつけられるから。

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口があると表情が豊かになる。「全部大豆鍋」より

――エッセイ漫画を描く時に自画像をどうするかを悩む人は多いと思います。アドバイスはありますか?

自由でいいと思います。人間でも動物でもいい。 似てなくていい。読んでいる人はそこをそんなに気にしないし。「これが作者なんだな」って分かる記号になればいいんですよ。

人っぽくない、バーバパパみたいな方が、自画像を変な形にする表現もできるのでむしろいいかも。

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べつやくさんも林さんも溶ける。「賞味期限が5時間のだんご」より

絵と写真のバランスは

――記事の流れの中で「べつやく」(べつやくさんの自画像)をどこでどう出すか、悩みませんか?

それはね、全然意識したことはない。漫画みたいな形式で描いちゃうと、やっぱりどうしても自分がいちゃうので。

――絵と写真のバランスは?

そこも全然考えてなくて。

例えば「とけかけ雪見だいふくのすすめ」の記事だと、美味しさは表情で伝えなくてもいいなと思ったから、食べてる時の自分の写真を撮らずに、絵で表現している。

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溶けかけ雪見だいふくの食感を表現したイラスト

逆に、写真を撮っておけば絵はあんまり描かなくてよくて楽、みたいなのもあります。写真をたくさん撮っていても、手ぶればかりだったり、すごい老けて見えるから載せるのやだなとか思ったら、絵で描いたり。

あと、取材時に建物の外観を撮り忘れた時はストリートビューとか見て、ふにゃふにゃって描きます。

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24時間快適な服 vs. おれ」より

――写真と自画像を使い分けているんですね。「雪見だいふく」の記事には、ウサギになっている絵もありました。

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これはただ描きたかっただけ。雪見だいふくのパッケージにかわいいのがいっぱいいて、「べつやく」もこの子みたいにかわいく描きたいな、と思って。

でも「べつやく」で描く時はちょっとかわいくない感じにする。目は(三白眼の)べつやくに変えて、ドクロを持たせて。

人間の絵じゃなくても、この目になっていたら「べつやく」だと思ってもらって大丈夫です。意味なくこの目つけてる時もあるけど、この目はだいたい「べつやく」。

――文字量が多い記事もありますね。「カラオケでボーカルレッスンが受けられるぞ」の記事とか

情報量がすごく多かったから、ほぼテキストで書いちゃった。インストラクターとの対話が多くて、絵にすると左右に文字が出るだけで読みにくいので、文字だけのほうがいいし、写真もあったほうがいいなと。

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カラオケでボーカルレッスンが受けられるぞ」より

漫画の手法は学んでいない

――漫画はどう構成していますか?

私は漫画の手法を学んできたわけじゃないから、漫画の手法じゃないと思うんですよ、多分。どう描くかとかはあんまり考えたことがなくて。だから普通のストーリー漫画はたぶん、描けないんですよ。

例えば「溶けかけ雪見だいふくのすすめ」は、やろうと思ってすぐに雪見だいふく買ってきて、次の日に食べて、次の日に書いて、みたいな。取材があるときは、先方への連絡を林にお願いしたりとか、準備もあるんですけど。

――構成で言うと、「「できたてポテトチップ」が静かにうまい」冒頭が「べNNニュース」で始まるのがすごく面白くて。

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なんかこう……お知らせしたかったんで、ニュースって書いとこうかなって……。

――天才ですね。構成で悩むことは?

最初の2コマぐらいまでなんとなく文字で打って、「これだったらこういう絵かな」っていうのをセンテンスごとにちょっと考える。で、「いけそうだな」と思ったら、もうかいちゃう。

広告記事は最初にネームを作りますけど、普段の記事は最初の2コマ分考えたらあとは描きながら考える。「ここで間(ま)を入れたいな」みたいなのも、描きながら考えていますね。

絵のコマにはあまり文字を入れられないので、 なるべく簡潔な表現にしなきゃいけないとは思っています。回りくどい文章は入らないから、テキストにはあまり自分がない。だから絵で「べつやく」におかしなことをさせてやろうって。

面白くなかった出来事は削ります。ただ、それが後々になんか影響してる場合には、ちょっと入れるとか。

――面白くなかった出来事も、読者が離脱しないように、ちょっと面白く書かなきゃいけないですよね。

そういうときは「べつやく」を変な顔にしたりとか、変な形にしたりとか。

「べつやく」とべつやくれいは同じだけれど、キャラのべつやくのほうが自由にうごいてくれるから、本体よりも使い勝手はやっぱりいいですよね。

文章で書くと乱暴に感じる言葉遣いでも、べつやくの頭の中の発言なら、読みやすいかなあと。

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――漫画にするために情報量を削ってる一方で、無言のコマもありますよね。

ひと呼吸置きたいな、という時に使います。文字の記事だったら小見出しを挟めるじゃないですか。漫画だとそういうのがないから。なんとも言えない時に無言の「べつやく」を2つぐらい挟んでおくと、「みんな、わかるよね」みたいな表現ができる。

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よくライオンに食べられる

――「「できたてポテトチップ」が静かにうまい」の記事で、ポテトチップスへの思いを、ライオンに食べられたり、ロボットの操縦士になって表現していますよね。

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比喩の飛躍がすごい。「料理中も『できたてポテチ』について考えてしまう」ぐらいは普通にあるけれど、「ライオンに食べられかけても」ってなかなか思いつかない。

でも私、わりとすぐライオンに食べられますよ。大変な目に遭ってる時を表現したいときは、結構ライオンに食われてます。 猫科の動物に食われるならいいかなって。蛇に丸呑みされることもありますけど。

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――「大変な目に遭う」比喩を飛躍させるとポップになるし、「部長に怒られていてる」とかと違って読み手もシュンとしないかも。

リアリティがあった方が面白い場合はそういう表現をすることもありますよ。使い分けなんじゃないかな。

――「ロボットの操縦士になったとしても忘れられない」なんていう表現も、絵だから面白いけれど、文章だと「?」ってなっちゃうかも。

文章がうまい人が書けばさらっと読めちゃうとは思うんだけど、せっかく絵で描けるんだから絵にしようと。

――たとえを絵にするのは、絵がうまくないと難しいですよね。雪見だいふくの食感をたとえた「だんご星人」も、かなり描き込まれていて。

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たとえの絵はむずいです。だんごを食べた時の感じって、あんまり情報がないじゃないですか。でも、読み応え的なところで、それを何かにたとえたいなと思って……すごく考えましたね。

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困ったら変な絵を描く

――取材した後「これどうやったら面白くなるだろう?」って悩むことはありますか?

ありますね。そういう時は変な絵を描いたりします。

――1枚描くのどれぐらいかかりますか

「べつやく」だけだったらすぐですよ(サラサラっと30秒ほどで描く)。一応、下書きしています。書き文字も下書きも描いて、「べつやく」の部分は割ともうシュッシュッシュって書いといて。

商品を持っているとか、どこかにいるところを描かなきゃならないとか、そういうのは意外に時間かかるんですよ。それから、神戸の風景を描くとか、取材を絵にするには、形や色を正確に描かなきゃいけないので時間がかかります。こんな適当な神戸なのに。

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けっこう時間がかかった神戸のイラスト(「24時間快適な服 VS.おれ」より)

――ツールは何を使っていますか?

PCと外付けタブレットですね。シュシュシュって線を引いて、色は範囲選択でぴょぴょぴょぴょっていけるんで。

トップ画像は「自己顕示欲」

――記事のトップの画像には「べつやく」が描かれていますね

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トップ画像とアイコンは、絶対自分の絵を入れるようにしてます。べつやくの記事だぞ! っていうことを示すために。自己顕示欲ですね

――100×100ピクセルの小さなアイコンは、トップ画像や本題と無関係の絵のこともあります。

トップ画像の絵って大きいから、100ピクセルに縮小しちゃうと線がすごく細くなっちゃう。本題じゃないところに小さく描いた変なやつの方が、そんなに縮小しないで入るから、絵として見えやすいと思って。

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記事の主題との関係なさそうなアイコンも多い

インパクトがあって「これなんだろう」みたいな絵を選んでいます。変な絵が書いてあればべつやくの記事だろうと思ってもらえるかなと。自己顕示欲です。

書き文字はほぼフォント

――書き文字風のオリジナルフォントを使っていますよね。

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縦書きの文字はほぼすべてオリジナルのフォント

手描き文字をフォントにしてくれるサービスが昔あって、今調べたらなくなっちゃったんです。間違って書いてしまっている文字がいくつかあって、本当は直したかったんですよね。 それが直らないままその会社がなくなってしまって……。

――手書き文字にこだわりがあったんですか?

既存のフォントでよかったら最初から使いたかったです。でも最初に、「手描き漫画だから、手書き文字の方がいいですよね」って林に言われて。毎回手書きだと大変だったんで、書き文字のフォントが作れるサービスを発見して作りました。

試行錯誤で20年

――デイリーポータルは、漫画のライターが増えてほしくて、「これを見れば誰でも書ける! エッセイ漫画入門」みたいにな記事にできるかなと思ってたんですが、べつやくさんのノウハウは高度すぎてまねしにくいですね。「思いついた順にかこう!」とか、センスと経験が必要すぎて。

ずっと試行錯誤してきて、もう20年ですからね。

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リンク:べつやくさんの記事一覧


独特な喜びをしっかり伝えるウェブメディア デイリーポータルZの編集部です。 デイリーポータルZではなぜか書きにくい裏話を書いていく所存です。 https://dailyportalz.jp/
べつやくれいさんに聞く、エッセイ漫画の描き方|デイリーポータルZ編集部
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