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「冬ソナ」も勝新太郎もわかる20代ライターはどう育ったか 唐沢むぎこさんの歴史

「デイリーポータルZ」ライターの唐沢むぎこさんは、1997年生まれの27歳。ピカピカのZ世代です。

でも、趣味はちょっとレトロ。落語家・三遊亭小遊三さん(77)の“推しぬい”を作ったり、「冬のソナタ」のパチンコプレートを持っていたり、電気グルーヴや軍人将棋が好きだったり。平成9年生まれなのに、昭和生まれと話が合います。

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三遊亭小遊三の推しぬいを作り、推し活をする
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目に刺さる!ちょっとレトロなパチンコプレートあつめ

昔のスキャンダルにも詳しく、勝新太郎が違法薬物をパンツの中に隠し持って逮捕された“大麻パンツ事件”も、当たり前のように知っている。

唐沢さんはなぜこんなに、古い話に詳しいのでしょうか。デイリーポータルの中年編集者たちに気を遣ってくれているのでしょうか? 

冬ソナや勝新を知るZ世代はどう育ったのか。詳しく聞きました。(取材:林雄司、べつやくれい、石川大樹、岡田有花/構成:岡田有花)

全部J:COMに教わった

林:唐沢さんって、20代なのに趣味が古いというか……「これ、いいんですよ」って見せてくれたのが冬ソナのパチンコプレートだし……冬ソナの放送は2003年~04年だから、リアルタイムじゃないですよね。

唐沢:当時6歳ぐらいですね。テレビ見てたら流れてたという感じで。テレビを見まくってたんだと思うんですよね。ドラマを見ていたわけじゃないですけど、ワイドショーとかニュースでも採り上げられたりしていて「人気だな」って思っていましたよ。

林:電気グルーヴも好きですよね。

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唐沢さんのブログより。アルバム「ビタミン」は1993年発売

唐沢:原流は、家でずっとテレビつけっぱなしだったこと。両親が音楽が好きで、J:COM(ケーブルテレビ)でスペースシャワーTVとかMUSIC ON! TVがずっとかかってたんです。電気グルーヴは、高校の時にTSUTAYAでベストアルバムとか借りて好きになったという感じで。

J:COMには映画専門チャンネルもあるし、昔のドリフの再放送もやっているし、キッズステーションとかANIMAXみたいなアニメ専門チャンネルで、高橋留美子作品などの昔のアニメもずっと流れてて、それを無限に見てましたね。カートゥーンネットワーク(『トムとジェリー』などを扱う海外アニメチャンネル)で気持ち悪いアニメをやっていたり。J:COMのテレビガイドみたいなのも見て、面白そうなのを探したりしました。

地上波でも昔の情報は得られる

林:地上波テレビも見ていたんですか。

唐沢:見てました。バラエティーもドラマも見ますけど、お笑いが好きだったんで、末期の『笑っていいとも』をちゃんと録画してみてたりしました。正直、面白くはなかったですけど「見なきゃ」みたいな。

テレビを見まくっていたら、昔の映像が出てきて。昔の歌謡曲……サングラスかけてるときの布施明の映像とか、ドリフの昔のやつの再放送とか、名場面、珍プレー好プレーみたいなのも見まくってました。笑点とか深夜番組とかも録画して、熱心に見てましたね。

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大学では落語研究部だったんですけど、テレビを見まくってる人が多かったんで、話が合わないとかは、なかったですね。テレビばっかり見てるとか、ゲームばっかりやってる人とか……私の周りはそうでした。

石川:若い人が時代の区別なくコンテンツを摂取できるようになったのって、YouTube以降とかSpotify以降だと言われますけれど、唐沢さんは全部テレビからでしたか?

唐沢:YouTubeも見ていましたけど、テレビでもある程度摂取できました。

ヴィレッヴァン通いの小学生

林:サブカル好きだと、中学や高校の同級生とは話が合わなかったのでは。

唐沢:同級生と話すためにONE PIECEやNARUTOも見ていました。DSやWiiもやって。自分が好きな漫画はCOMIC CUE(コミック・キュー)とか。

林:どうやってコミックキューにたどり着くんですか。

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コミック・キューは、1994年から2003年まで発行されていた漫画雑誌。創刊3号までの編集長は江口寿史。執筆陣は和田ラジヲ、とり・みき、よしもとよしとも、など。雑誌と言っても刊行は年1回ペース。9号の次が100号になった。

唐沢:恥ずかしいんですけど……小学生ぐらいの時にヴィレッジヴァンガードに行くのが好きで。当時のショッピングモールのヴィレバンはギリギリ今のようなキャラグッズ専門店じゃなくて、まだサブカル本やグッズをたくさん売ってたんです。

小5、6ぐらいの時に、親と「つかしん」(兵庫県尼崎市のショッピングモール)のスーパー銭湯に行ったついでに、ヴィレバンに行くのが好きでしたね。『バカサイ(バカはサイレンで泣く)』とか『バカドリル』とか立ち読みして面白いと思って。そっから古本屋で立ち読みしたり。

林さんの『死ぬかと思った』も、ヴィレバンでめっちゃ売ってました。

林:ヴィレバン、一度に200冊とか仕入れてくれてたんですよ。ありがたい。

唐沢:古本市場やBOOKOFFに行くと「ワイド版」の漫画棚があって。『AKIRA』とか、しりあがり寿さんの本とか置いてあるエリアです。そこで植田まさしさんの四コマ漫画とかをずっと読んでいましたね。

サブカルの落とし穴はいろんなところにある

岡田:軍人将棋は?

唐沢:DSの「誰でもアソビ大全」っていうみんながやってたゲームの中に入ってたんです。

林:いろんなところにサブカルの落とし穴がある。

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サブカルの落とし穴はいろいろなところにある(「誰でもアソビ大全」公式サイトより) 

唐沢:ありますね。普通に将棋も好きなんですけど、「大将棋」とか「中将棋」「禽将棋」とか、将棋のバリエーションの中でも本流から外れた、人気がないやつが好きですね。

林:『ONE PIECE』とかメジャーな漫画にはあまりハマらなかったんですか?

唐沢:ONE PIECEもNARUTOも、みんなが見てるアニメはもちろん見てたし、読んでおかないといけない。別物というか……みんなと喋らないといけないし、ゲームもやらないといけないと思って。でも面白かったですよ。みんながサッカーとか水泳とかバレーとかやってる時間、私は漫画を読んでいた感じですかね。スポーツやってなかったんで。

『ドラゴンボール』も見ましたけど、本流のバトルシーンじゃなくて、アニメでしかやってない、悟空が運転免許を取りに行く回とかが結局好きだったりとか。

伊集院光のラジオも学びの宝庫

唐沢:ラジオも好きです。伊集院光さんのラジオを聞いてると、昔のテレビや野球のネタが多いんですがそれを聞くのが好きで。例えば、勝新太郎がパンツに薬物入れて捕まったという話(1990年)とか、伊集院さんが話しているのを聞いて、あとでネットで調べる。

林:インターネットで参照できる。

唐沢:(ポーカー賭博で逮捕された元野球選手の)柴田勲が、記者会見のときにトランプ柄のセーターを着ていたとか(1992年)が今でもラジオで聞けてうれしいです。荒井注のカラオケボックスとか(1990年代、荒井注がカラオケ店を建設したが設計ミスでカラオケ機器が入らず開店を断念した)。

こういう話は、落語研究部の同年代なら全然通じたんですよね。あと、自分がずっと言い続けてたらみんなが知るみたいな感じもあって。

林:僕らも、柴田のトランプセーターの話はビートたけしが言ってたの聞いて知ったりしているもんね。

石川:孤独なサブカル感はなかったんですね。

唐沢:なかったですね。みんなに教えたら聞いてくれるし、教えてももらえるし、みたいな感じで。

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林:そんな素直なサブカルあるんだ。

小学生の時、図書館で乙幡さんの本に出合う

林:デイリーに参加したのもその流れですか?

唐沢:小学校の時、近所の図書館に(ライターの)乙幡(啓子)さんの本があったんですよ。「面白い、こうことしてらっしゃる人いるんだ」っていうとこから読み始めて。小5~6ぐらいで、ヨシダプロさんの漫画やべつやくさんの漫画とか、最初は絵が多い方の記事を見ていて。

今思うとその図書館は本の選定が自由でしたね。『火の鳥』とかもあるけれど、南Q太さんやカラスヤサトシさんの漫画もあって。小学校5年時、カラスヤサトシさんの「でかけモン」の表紙を、誕生日ケーキに描いてもらいました。めちゃめちゃファンです。

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岡田:デイリーに初めて投稿したのはいつですか。

唐沢:コロナ禍になったころ。大学院の時ですね。種田山頭火っていう自由律俳句の俳人がいるんですけど、彼の俳句ってめっちゃ短いし、私たちでも作れそうな感じだったんで、5人ぐらいで集まって、山頭火風の俳句を作って1つ本物を紛れ込ませて、「どれが山頭火でしょう」というゲームをやりました。自分で作ってみたら「山頭火超えた」と生意気なこと思っちゃうんですよね。

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春の日に山頭火ゲームなど

江戸時代は新しい

唐沢:大学に入ってからは歴史学・美術史をやっていて。美術史の世界だと「江戸時代って新しいよね」みたいな感覚なんですね。「江戸時代の仏像って新しい。平安時代からやっと古いもんだね」みたいになるんで。

私は近代、1930年代前後研究していたんですけれども「めっちゃ新しい時代をやっている人」みたいな扱いを受けてきたので、古いとか新しいという感覚は消滅しちゃったかもしれないですね。

林:その感覚だと、荒井注のカラオケボックスも三遊亭小遊三も新しいですね。

唐沢:最新情報ですね。

岡田:「唐沢むぎこ」というお名前はペンネームですか?

唐沢:はい。でも適当というか……流行りの名前みたいなんってあるじゃないですか。それに全くついていけなくて。

林:「ゆうちゃみ」みたいな。

唐沢:何が今風で何が寒くないのかわかんなくて。苗字と名前あれば大丈夫だろ、みたいな。

岡田:唐沢さん、絵も描かれますよね。

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唐沢さんの自画像。ぜんぶ指で描いている

唐沢:「アイビスペイント」っていうアプリを使って、iPadで指で描いています。細かいところも全部指で描かなきゃならくなくて大変です。

でも子供の時から、学校のパソコンルームで、マウスでお絵描きしていました。家に青いiMacがあって、その後ノートパソコンがきて、それで、ずっと描いていた感じですね。

小さい頃からスマホがなくて良かったなとは思いますね。飲み込まれちゃうやろなって。小学校のころ、夏休みにDSを1日8時間ぐらいやってた時期があって、小学3~4年のころは真剣に「どうぶつの森」をやっていて……。でもそれがあるから多分、今ゲームに飲み込まれてないんだろうなとは思いますけど。

デイリーポータルは水墨画サークル

林:唐沢さんもなんですけど、デイリーポータルに来る若者は話がすごい通じるんですよ。僕は甘やかされてんのかな。

べつやく:合わせてもらってる感じはあるよね。

林:とりもちうずらさんはキャンディーズが好きだし。

べつやく:確かに、デイリーのライターで「若くて全然わからない」っていう人はいないないなあ。そういう人たちはデイリーを読んでないだけかもしれないけれど。

唐沢:そういえば最近、友達と友達のお母さんと3人でご飯食べている時「記事書いてる」って言ったら、「なんで記事書いてるの?なんで動画じゃないの」って言われて。「記事を書く人・読む人」っていう時点で限定されるんじゃないですかね。

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べつやく:そこでそぎ落とされている。「水墨画を描いております」みたいな。

林:そうか。「書をやっております」みたいな。

べつやく:水墨画サークルだね。デイリーポータルは。


独特な喜びをしっかり伝えるウェブメディア デイリーポータルZの編集部です。 デイリーポータルZではなぜか書きにくい裏話を書いていく所存です。 https://dailyportalz.jp/
「冬ソナ」も勝新太郎もわかる20代ライターはどう育ったか 唐沢むぎこさんの歴史|デイリーポータルZ編集部
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