大相撲名古屋場所 琴勝峰が初優勝 平幕力士の優勝は8場所ぶり

大相撲名古屋場所の千秋楽で、平幕の琴勝峰が安青錦に勝って、13勝2敗の成績で初優勝を果たしました。平幕の力士の優勝は、去年春場所の尊富士以来、8場所ぶりです。

記事後半では千秋楽の中入り後の勝敗などもお伝えしています。

名古屋場所は14日目を終えて、2敗で単独トップが琴勝峰、星の差1つの3敗で安青錦と草野の2人が追う展開となり優勝争いの行方は平幕の3人に絞られていました。

千秋楽の27日、琴勝峰は安青錦との直接対決が組まれ、「突き落とし」で勝って、13勝2敗の成績で初優勝を果たしました。平幕の力士の優勝は、去年春場所の尊富士以来、8場所ぶりです。

琴勝峰は今場所、弟の琴栄峰が新入幕を果たし、史上13組目の兄弟幕内力士となり、弟の成長に刺激を受けて臨んでいました。

序盤の5日間は3勝2敗の成績でしたが、中盤戦に入ると徐々に調子を上げ、前に出る相撲で6日目から5連勝して10日目に勝ち越しを決めました。

新横綱・大の里から初金星(13日目)

上位との対戦が組まれた終盤戦では、13日目に新横綱・大の里に初めて勝って初金星を挙げ、そのまま勢いに乗り10連勝で場所を締めくくりました。

休場や不振で横綱・大関が優勝争いから脱落するなか、異例の平幕による争いを制した琴勝峰が、初めての賜杯を手にしました。

【動画】琴勝峰 優勝インタビュー

動画は4分5秒。データ放送ではご覧になれません。

「感情が追いついていない感じだが うれしい」

初優勝の琴勝峰は土俵下の優勝インタビューで「まだちょっと感情が追いついていない感じだが、うれしい」と率直な心境を語りました。おととしの初場所では優勝を逃した経験を踏まえ、千秋楽の安青錦との一番に向けては「あまり考え過ぎてもしょうがないので思い切り当たっていこうと思っていた。立ち合いで当たってからは無意識に体が動いた。よく体が動いてくれた」と振り返りました。

また、優勝を意識し出したのは、25日からだということで「土俵に上がったらしっかり立ち合いで当たることに意識を置いていた。次の日はきょうよりも調子を上げていけるようにという意識でやった結果が出たと思う」と話しました。

そして「いつも応援してくださる方々、周りの方々に支えられていて少しでも恩返ししたいという気持ちがあった。結果が出せてよかった」と話したうえで、家族が見守る中で、優勝を決めたことについて「どこにいたかはわからなかったが、少しはいい姿を見せられたと思う」と話しました。

今後に向けては「もっと地力をつけてたくさんの方々に応援していただけるような相撲が取れるように頑張りたい。三役、その先も見据えてやっていきたい」と意気込みを話しました。

師匠の佐渡ヶ嶽親方「優勝が決まった瞬間 涙が出た」

初優勝を果たした琴勝峰の師匠の佐渡ヶ嶽親方は「優勝が決まった瞬間、涙が出た。けがが続いていて苦しんでいるところを見てきた。我慢してやってきた結果だと思う。今場所は攻める気持ちがとくにあった。この相撲を続けていけば次の大関かな」としみじみと語っていました。

八角理事長「優勝争いをした悔しかった経験がいきた」

日本相撲協会の八角理事長は、初優勝を果たした琴勝峰について「立派だった。2年前に優勝争いをした悔しかった経験がいきたと思う。きょうは考えて相撲を取っていて、下から入って中に入るようにして圧力をかけて一歩出た。あの一歩が効いたと思う」と評価しました。そして「もともと若いうちに幕内に上がってきていたので、この優勝をきっかけに早く三役、大関、横綱を目指してほしい」と期待していました。

高田川審判部長「すごい強い相撲を取っていた 将来が楽しみ」

日本相撲協会の高田川審判部長は初優勝の琴勝峰について「すごい強い相撲を取っていた。もともと力強さはあるが柔らかさとうまさがあるので、そちらの方向に行くと落とし穴がある。中盤、後半にかけてのどんどん前に出て行く相撲を取って行けば将来が楽しみだ」とたたえました。

敗れた安青錦については「きのうときょうは私が見ていた感覚では珍しくちょっと緊張で体が硬くなっていると思った。きょうも柔らかさが出ずバタッと倒れてしまった」と話していました。

また、先場所12勝をあげて今場所は10勝だった関脇・若隆景について「今場所のような相撲をもっと磨いていってほしい。大関に上がるにはドアノブを握って、扉を開けて、入るのだが、もう扉は開いている。あとは入るだけだ」と来場所が大関昇進をかける場所になるという認識を示しました。

【解説】賜杯を手にした“2つの経験”

幕内25場所目にして初優勝を果たした琴勝峰。賜杯を手にした背景には2つの経験がありました。

【1.たび重なるけがの経験】
ひとつ目はたび重なるけがの経験から得たものです。琴勝峰は身長1メートル90センチの恵まれた体格を生かした相撲で20歳で新入幕を果たすなど、入門以来、所属する佐渡ヶ嶽部屋では兄弟子の大関・琴櫻とともに期待をかけられてきました。しかし、たび重なるけがの影響もあって新入幕のあと十両に2回転落するなど、なかなか幕内上位に定着することができず、伸び悩む日々が続きました。

こうしたなか、意識したのが、けがを避けることも念頭に置き、下がらずに前に出る相撲を取ることです。場所前に、師匠の佐渡ヶ嶽親方から「引くのは禁止。けがをするし下がるな」とアドバイスを受け、前に出る意識を持って稽古を積んできました。

迎えた今場所、初日から3連勝したあと、2連敗と序盤戦は3勝2敗で終えましたが、得意の突き押しなどで前に出る相撲を見せて徐々に調子を上げていき、6日目から5連勝して10日目に勝ち越しを決めました。さらに12日目には今場所初めてとなる三役以上の力士との対戦が組まれ小結・高安に勝って優勝争いに加わりました。

琴勝峰は「下がらないという意識もそうだし、いろいろなことがうまくかみ合っているという感じ」と手応えを感じていました。

【2.優勝争いの経験】
さらに優勝争いが佳境を迎える中、生きたのが2年前の初場所で千秋楽まで優勝を争った経験です。13日目にはおととしの夏場所以来となる横綱戦で新横綱・大の里との一番が組まれました。琴勝峰は横綱に得意の右を差されましたがそれでもすぐさま、左の上手を引いて、圧力をかけてくる横綱に対して1度は押し込まれますが、下がらずに体を入れ替えながら上手で横綱の体勢を崩して勝って初金星を挙げました。初優勝をつかむためには落とせない一番を制しましたが「考えすぎてもしかたがないと思えるようになっている」と2年前に優勝を争った経験から平常心で臨めていると自信をのぞかせました。

横綱を破った勢いのまま単独トップで迎えた千秋楽。朝稽古では師匠の佐渡ヶ嶽親方か「お前が一番強いから自信をもっていけ」と声をかけられました。琴勝峰は「自分のやることをしっかりやるだけ」と淡々と応えました。

支度部屋では、いつものように準備を進め、堂々と花道に向かう姿からは全く気負いを感じられず「肩の力を抜いて思い切りいった」と言うことばどおりの力強い立ち合いで優勝がかかった大一番を制しました。

けがから得た経験や優勝を逃した経験を糧に手にした初めての賜杯を自信に変え「まずは三役、さらに上の番付を目指していきたい」と今後の活躍を誓いました。

かつて所属 地元の相撲少年団でも喜び

琴勝峰の地元、千葉県柏市にある飲食店では、小学1年生から中学3年生まで所属していた「柏相撲少年団」の後輩たちや指導者などおよそ30人が集まり、テレビの前で取り組みを見守りました。そして、琴勝峰が勝って初優勝を決めると、子どもたちは立ち上がってガッツポーズをしたり、大人たちは拍手を送ったりして店内は盛り上がっていました。

「柏相撲少年団」の代表で、中学3年生まで琴勝峰を指導していた永井明慶さんは優勝の直後、目に涙を浮かべて喜んでいました。永井さんは「うれしいという極限を超えて夢心地です。相撲のスタイルは当時と全く変わっていません。同じ土俵で稽古に取り組んでいるいまの子どもたちの希望にもなります」と話していました。

「柏相撲少年団」でキャプテンを務める中学3年の齋藤勇気さんは「琴勝峰は同じ土俵で育った自慢の先輩であり、自分たちも見習うべき存在です。琴勝峰関を超えるような力士になりたいです」と話していました。

◇琴勝峰(ことしょうほう) の経歴

佐渡ヶ嶽部屋の琴勝峰は千葉県柏市出身の25歳。相撲の強豪、埼玉栄高校の相撲部出身で、同学年の平幕、王鵬などとともに活躍し、在学中に佐渡ヶ嶽部屋に入門して平成29年九州場所で初土俵を踏みました。

身長1メートル90センチの体格を生かした突き押しのほか、右四つでも相撲が取れることから早くから大きな期待を受け令和元年九州場所で十両に昇進し、しこ名を琴手計から現在の琴勝峰に改めました。そして、令和2年春場所で12勝3敗の好成績で十両優勝し、夏場所の番付でわずか20歳で新入幕を果たしました。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で夏場所が中止となったことから、続く7月場所が幕内デビューとなりましたが、この場所から3場所連続で勝ち越して自己最高位の前頭3枚目まで番付を上げました。

そして、おととしの初場所では、11勝3敗でトップに並んで千秋楽を迎え、大関・貴景勝との相星決勝に敗れ、あと一歩のところで初優勝を逃しましたが確かな力を示しました。

一方で、けがの影響もあって新入幕のあと、5回の休場に加え、十両に2回転落するなどなかなか幕内上位に定着できていませんでした。幕内25場所目となる今場所は前頭15枚目で臨み、前に出る相撲で順調に白星を重ねました。

《千秋楽 中入り後の勝敗》

▽獅司に朝紅龍は獅司が「寄り切り」で勝ちました。

▽御嶽海に時疾風は返り入幕の御嶽海が「押し出し」で勝って10勝目をあげました。

▽隆の勝に正代は隆の勝が「押し出し」。

▽熱海富士に美ノ海は熱海富士が「寄り切り」。熱海富士はおととし九州場所以来の11勝をあげました。

▽琴栄峰に千代翔馬は琴栄峰が「上手投げ」。新入幕の琴栄峰は6勝9敗でした。

▽藤ノ川に一山本は藤ノ川が「はたき込み」で勝って新入幕で10勝をあげ敢闘賞を獲得しました。

▽嘉陽に明生は嘉陽が「押し倒し」。

▽平戸海に狼雅は平戸海が「寄り倒し」。平戸海は勝ち越し、狼雅は負け越しとなりました。

▽佐田の海に金峰山は金峰山が「突き出し」。

▽阿武剋に英乃海は英乃海が「寄り切り」。

▽翠富士に阿炎は阿炎が「押し出し」。

▽王鵬に伯桜鵬は王鵬が「突き出し」。

▽豪ノ山に若元春は豪ノ山が「突き出し」。

▽安青錦に琴勝峰は1人2敗で優勝に王手をかけていた琴勝峰が「突き落とし」で勝って初優勝を決めました。

▽草野に高安は高安が「突き出し」で勝ち小結で2桁の10勝をあげました。

▽欧勝馬に玉鷲は玉鷲が「寄り切り」で勝って白星を「11」と積み上げました。

▽若隆景に霧島の関脇どうしの一番は若隆景が「寄り切り」で勝って10勝目。先場所の12勝に続いて三役で連続の2桁勝利をあげました。

▽大関・琴櫻に横綱・大の里は大の里が「寄り切り」。新横綱の大の里は11勝4敗。琴櫻は8勝に終わりました。

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《千秋楽の見どころ》

大相撲名古屋場所 14日目を終えて

▽2敗:琴勝峰(前頭15枚目)
▽3敗:安青錦(前頭筆頭)、草野(前頭14枚目)

千秋楽:琴勝峰×安青錦

琴勝峰は、今場所、終盤まで優勝争いを引っ張ってきた安青錦との優勝をかけた一番に臨みます。

琴勝峰が勝てばその時点で優勝が決まり、敗れた場合は琴勝峰、安青錦、それに草野の最大3人での優勝決定戦の可能性があります。

6日目から9連勝中の琴勝峰は終盤の上位陣との対戦でも冷静な取り口が続いているだけに低い姿勢が持ち味の相手に対して、立ち合いからしっかりと突き起こしていきたいところです。

対する安青錦は大きい相手に対して立ち合いの圧力で負けずに相手の懐に入って前まわしを取って頭をつける得意の体勢をつくり、勝って優勝決定戦まで持ち込みたいところです。

千秋楽:草野×高安(小結)

琴勝峰が敗れれば優勝の可能性を残す草野は小結・高安との初顔合わせの一番が組まれました。

草野は立ち合いで圧力負けせずに、中に入って前に攻めながら動きのよさを生かして相手の体勢を崩して勝機をつかみたいところです。

《優勝争いの3人 経歴と今場所の成績》

◇琴勝峰(東前頭15枚目)12勝2敗

▽所属部屋:佐渡ヶ嶽
▽生年月日:平成11年8月26日
▽出身地:千葉県柏市
▽身長/体重:190cm/体重167kg

◇安青錦(東前頭筆頭)11勝3敗

▽所属部屋:安治川
▽生年月日:平成16年3月23日
▽出身地:ウクライナ
▽身長/体重:182cm/138kg

◇草野(東前頭14枚目)11勝3敗

▽所属部屋:伊勢ヶ濱
▽生年月日:平成13年6月25日
▽出身地:熊本県宇土市
▽身長/体重:183cm/151kg

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