刑事に好意を抱いてウソの自白 「供述弱者」の存在、身をもって語る

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編集委員・大久保真紀
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 「私は桜が満開の中、無罪判決をもらった。桜の花びらが全国に散り、各地で冤罪(えんざい)に苦しむ人に希望を与えられるようにとの思いを込めた」。2020年3月31日。大津地裁再審無罪判決を受けた西山美香さん(42)は記者会見で、ネイルやネックレス、ピアス、髪留めゴムなどをすべて桜のモチーフで統一していた理由をそう語った。あれから2年、冤罪を訴える人たちを励まし、自分の体験を話して「供述弱者」の存在を社会に広めている。

 「いつ自分がどのような形で冤罪で巻き込まれるのかわからない。そのときに気づいても遅い。再審法の改正が必要だと思う。私はできる限りのことはしていきたいので、みなさんにも興味をもってもらって少しでもいい司法にしてほしい」

 3月26日午後、金沢弁護士会主催の再審法改正について考えるシンポジウムに冤罪被害者として登壇した。針の穴にらくだを通すほど難しいと言われる再審開始の決定が出ても検察側が抗告を繰り返す現状や、証拠開示手続きの規定がないために裁判所の訴訟指揮によって格差が生まれていることに、自分の体験を語って警鐘を鳴らした。

 04年、24歳のとき、看護助手として働いていた滋賀県の湖東記念病院で、患者の人工呼吸器のチューブを外したとウソの自白をし、殺人容疑で逮捕された。

利用された「自分を見てほしい」という渇望

 幼いころから、優秀な兄2人に比べて勉強ができず、強烈な劣等感と愛情飢餓を抱いて育った。「自分を見てほしい」という渇望を、取り調べを担当した刑事に利用された。

 呼吸器から、チューブがはずれたアラーム音が鳴っていただろうと追及された。当初は、否定していたが、いすを蹴られてひっくり返り、怖くなった。「アラームは鳴った」と話すと、急にやさしくなった。

西山美香さんは自ら自分の障害を明らかにして、どうやって自分がウソの自白をさせられたのかを集会などで話しています。なかなかできることではありませんが、その行動は「供述弱者」という言葉とその存在を社会が認識するのに、大きな役割を果たしています。後半では、再審開始決定が出ても検察が抗告できることによって被る苦しみのほか、冤罪を訴える人たちへの思いなどを語っています。

「良き理解者」と思い込まされ、ウソを「自白」

 その若い刑事は、劣等感を抱…

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この記事を書いた人
大久保真紀
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専門・関心分野
子ども虐待、性暴力、戦争と平和など