2020年05月04日

195:柳生杖のこと まとめ(1) ~作業工程について~


柳生杖に関する過去の記事はこちら(旧ブログ)。

170:柳生杖を作ってみた(1) ~転ばぬ先のつえ~
http://shintaido-karate.seesaa.net/article/463694800.html
171:柳生杖を作ってみた(2) ~スペック&作業工程~
http://shintaido-karate.seesaa.net/article/463709722.html
173:柳生杖を作ってみた(3) ~文献&検討経緯&課題~
http://shintaido-karate.seesaa.net/article/463863251.html
174:柳生杖を作ってみた(4) ~バグフィックス版(石突の改良)~
http://shintaido-karate.seesaa.net/article/463957147.html


さてその後も折をみては製作してきた柳生杖ですが、そろそろ何本目だったかも分からなくなり、その分いろいろ手慣れてきましたので、このあたりでいったんまとめに入ろうかと思います。

まず資料としては一貫して『柳生新陰流「十兵衛杖」の研究』(赤羽根大介 著)という論文に準拠して製作してまいりました。

以下、上記資料と照らし合わせながら工程を追ってみましょう。

「スタリと申す鉄(=南蛮鉄)を鍛治に能々(よくよく)鍛えさせ、巾三分(9mm)・厚み一分(3mm)にして、三本鍛えさせ」

鋼材_R.JPG
そのような鍛造は困難を極めるのでサイズの近い市販品を購入しました。ステンレス鋼10mm×2mm。
ステンレス鋼の硬度は鉄の約1.5倍であり、ある意味「能々鍛えた南蛮鉄」そのものともといえるでしょう。

ひと口に南蛮鉄とはいっても産出国はさまざまで、「スタリ」が具体的にどういう鋼種を指すのかは不明なのですが、ちょうど柳生十兵衛の時代、作刀に南蛮鉄を用いるのが一種の流行だったのは確かなようです。(「日本刀の研究」記事「南蛮鉄・洋鉄考」)
ちなみにステンレス鋼の歴史は十兵衛没後100年以上が経ってから始まるので、これが訛って「スタリ」になったということはありえず、残念ながら全くの無関係です。


「この鍛えたる鉄、角三角に合わせ、その間へ竹を入れ、膠(にかわ)を付け、合わせるなり。」

IMG_1269_R.JPG
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ここでは乾燥後も弾性を残すタイプの強力接着剤を使用しました。ちなみにニカワは水に極めて弱いため、杖のような屋外使用には適しません。

当初はもっと調べてニカワくらいは使えるようになろうかとも思いましたが、なにも手間暇かけて強度・耐久性を下げる必要もないですね。当時存在した範囲ではニカワより優れた接着剤がなかっただけのことでした。
だからこそ防水のために漆をかけたのかもしれません。


「その上、麻苧(あさお=麻糸)にて固く巻き、隙間なきよう巻きかため、(柿渋の工程に続く)」
「その上、能きごろに麻苧にて固くひねり、千段巻にて巻きて、(柿渋の工程に続く)」

IMG_E1283_R.JPG
二重に巻いているかのような記述ですが、旧柳生藩家老屋敷や柳生家の菩提寺である芳徳寺で公開されている実物の写真と比較すると、それではどうしても太くなりすぎます。表現・内容的にもここは文章の重複ではないかと推察されます。


「(麻糸の工程より)その上に渋を二三べんもつけ、乾かすべし」
「(麻糸の工程より)また渋にて能々かため、」

IMG_E1287_R.JPG
(柿渋。漁網などの防腐や繊維強化に古くから用いられてきました。)

IMG_E1284_R.JPG
IMG_E1285_R.JPG
IMG_E1289_R.JPG
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写真解説の都合で分けましたが原文はそれぞれ「麻苧にて~」からの続きです。同じく重複と思われます。
柿渋に浸けて乾かした麻糸を巻き、さらに渋を2度塗りしております。


「その上漆を掛けて用いるなり。」
「色はその人々に好みにまかす、定法は黒か青質の事にて候。右色は目立たずしてよろしきなり。」

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紺色のカシュー漆を1度塗って乾いたところで

IMG_1297_R.JPG
全体的に麻糸のケバがあるのでこれを処理し、さらに仕上げ塗りを施します。(新しく濡れて光っているところとすでに乾燥しているところの差が見えますでしょうか…)

なお本漆は紫外線への耐光性がなく、この点カシューの方が圧倒的に優れております。

IMG_E1300_R.JPG
IMG_1304_R.JPG
完成。




※石突きについて
IMG_E1301_R.JPG
IMG_1305_R.jpg
現存する実物には付いている両端の石突き(金属製)について、伝書にはその記述が見当たりません。
これについては項をあらためて考察したいと思います。
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posted by 秋山勇浩 at 17:49| Comment(0) | 作ってみた | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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