外国人と共生「簡単じゃない」 参政党票が上回った「優等生」の本音
「日本人ファースト」を訴えた勢力が伸長した参院選で、人口の2割超が外国籍である群馬県大泉町でも、参政党候補の得票が最多だった。「共生の優等生」と言われる街を歩くと、一筋縄ではいかない現実の一端が見えてきた。
群馬の南東部、埼玉との県境にある大泉町は、ホームセンターやコンビニが点在する小さな地方都市だ。その一角にブラジルを中心にした外国料理の店が並び、英語やポルトガル語の看板が集まる。4万人余りの人口の22%が外国人(6月末時点)で、その65%以上はブラジル、ペルー人だ。
「外国人が義務を果たさず権利だけ持っていくというのは違うのではないか」。故郷ブラジルから約30年前に家族で大泉に来たヤマカワ・フォリア・ナタリア・レイコさん(35)は言う。
数年で帰る予定だったが、日本の小学校で日本語を学び、なじんでいったヤマカワさんに合わせるように、家族は日本に住み続けている。ヤマカワさんは埼玉の大学で職員として働く。SNSでは外国人を犯罪者とみるような言葉が飛び交い、それに「いいね」が付く。「日本人と同じように、犯罪を犯す外国人がいるのも事実。でも私は税金も納め、必要な義務は果たしている。『外国人』とひとくくりにしないで欲しい」と話す。
35年、外国人と生きてきた町の本音
外国人と「共生」してきたとされる大泉町。実際は日本人側も、外国人側も抱える複雑な思いがありました。
「日本国籍を取った方がいいのか」。ネパール国籍のグルン・ニラズさん(42)は参院選中、「外国人排除」のような声の高まりに、20年前に来日して以来、初めてそう感じた。
日本社会に溶け込もうとしてきた。大泉町の隣の太田市にある半導体関連の会社に勤め、最近は地域の自治会の役職も担い、祭りではみこしも担ぐ。「住みやすい社会をつくりたいのは日本人も外国人も同じ。外国人いらないと言われるのはとても寂しい」
1990年の入管法改正で、3世までの日系人とその配偶者らが、滞在期間や就労に制限がない「定住者」として認められた。大泉町にはパナソニックやスバルの工場があり、人手が必要な下請け企業には多くの南米の人たちがやってきた。
「騒音がひどい」「バーベキューの煙が迷惑」。町職員だった糸井昌信さん(70)は、日本人住民から苦情が入るたび、駆けつけて対応に汗を流した。
自宅と職場の行き来だけの生活が多い外国人は地域に溶け込めなかった。日本人との間の不信はつのった。糸井さんは「距離を縮めたい」と95年、町に国際交流協会を設立。日本語、ポルトガル語の講座を設け、交流の催しを企画し、外国人児童や貧しい家庭への支援にも取り組んだ。大泉は「共生の先駆者」として知られるようになった。糸井さんは今、協会長を務める。
「自民王国」で参政党が躍進
その町が今回、「日本人ファースト」が叫ばれた参院選に臨んだ。自民王国と言われる群馬。県全体では自民候補が勝利するなか、町では小差で参政候補が上回った。
町で雑貨店などを営む日本人男性(65)は自民に入れた。「町から外国人がいなくなったらアパートは空き部屋だらけ、うちの取引先も減る」。大泉に移り住んで30年ほど。商売相手は多くが外国人だが、プライベートでの交流はない。
一方で、ゴミの捨て方や騒音で外国人と日本人とのトラブルは今も起きる。「最近、技能実習生のベトナム人やフィリピン人が増えた。入れ替わりも激しい」と言う。
男性は街で外国人のグループを見ると、「偏見と言われると思うが、思わず、何か悪いことを話し合っているのではないかと思ってしまう」とため息をつく。「若い人たちが参政党に入れる気持ちもわかる気はする」
町内の建設会社に勤める日本人男性(45)は、「小さい頃から周りに外国人がいた生活で、今更排除というのは現実味がない」と、自民に投票した。だが、「日本人ファースト」に共鳴した友人も多かった。「今の生活に不満があると、目に入る外国人が原因じゃないかと思う人もいた」と話す。男性には、今も連絡を取り合うような外国人の友人はいないという。
糸井さんは今回の選挙で、町内で参政党の候補や選挙カーは見かけなかったという。「現場では外国人が優遇されているなどと感じない。生活の不満のはけ口にされたのでは」と話す。
2008年のリーマン・ショックと11年の東日本大震災で、帰国した外国人は多かった。糸井さんは「今は、日本社会に本当に根を張ろうと思う人の割合が増えたと感じる」と話す。
町のブラジル人人口は近年、微増程度で、19年の「特定技能」制度開始でアジア人が増えた。町は24年度から、町職員採用試験で国籍条項を撤廃。町役場に「多文化協働課」を設け、ポルトガル語の広報紙も発行し、家庭ゴミについて日本語以外に7カ国語でイラスト付きのパンフレットをつくった。
「ただ、今でも不満のある人はいる。『共生』はそんなに簡単じゃない」と糸井さんは言う。
「大泉では『外国人』『日本人』の垣根を取っ払って考える有権者が多いはず。『排除』で参政を選んだのではないと信じている」と話す。
帰化して「日本人」選んだ理由は
「日本人」になることを選んだ人もいる。隣の太田市でIT関連企業を営む平野勇パウロさん(46)は昨年、日本国籍を取った。きっかけは長女(20)の大学入学だった。「アパートを借りるにも外国人だと壁があるし、就職の時の制限もある」
投票権を持ってから2度の国政選挙。候補者や政党の主張についてできる限り情報を集めた。「日本の政治をこんなに真剣に見たのは初めて」
外国人政策も気にはなったが、「日本の将来に明確なビジョンのある政党に投票したかった」。悩んだ結果、自民に投票したという。
外国人との「共生」が始まって35年。糸井さんは「まだ道半ば」という。20年以上、同胞のコミュニティー内で生きる外国人もいれば、子育てに区切りをつけた50代で日本語を学び始める人もいる。「外国人は『働き手』から『地域の担い手』になってきている。日本人も外国人もひとりひとり。最後は互いを理解し合おうと思う気持ち次第ではないか」と話す。
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- 【視点】
日本企業の人手不足を補うため、20世紀末、日本の経済の都合で受け入れられた日系南米人たち。群馬県大泉町のような地域では、彼らが真面目に働き、地域経済を支えてきた。私たち日本人の暮らしが豊かだったのは、間違いなく彼らの存在があったからだ。しかし経済が停滞し、社会に不満が広がると、「後から来たあなたたちが出ていけば、自分たちが少しは楽になる」という、まるで小学生のいじめのようなロジックが顔を出すようになった。 最近の参議院選挙でも、「外国人排除」をほのめかすメッセージが力を持ち始めている。だが実際には、日本人の大多数は、移民の多い地域にすら住んでいない。それでも、なぜ「外国人排除」の声に同調してしまうのか?自分の中にもあるかもしれない無意識を疑いながら、私は考えてみた。 1)「うざい」と感じるのは、外国人だからじゃない。人が多すぎることでは? たとえば、静かな温泉街に行ったのに、観光客でごった返していたらがっかりする。満員電車では、でかい声、でかい体、聞き慣れない言語が目について、「あいつら外国人うざい…」と思ってしまうこともある。でも、正直それは外国人に限らない。人が多すぎること、そして「自分のペースを乱されること」がつらいのだ。日本人でも「規格外」にでかい人、うるさい人は目につく。 私は先日、熊野古道を歩いた。炎天下の中、朝から何万キロも歩いたという若い外国人女性(それは流石に嘘やが、桁外れがかわいい)、楽しそうに歩く中国人家族とすれ違った。あるマイナーな山頂では、二人のドイツ人に出会った。「Why here?」と聞いたら、「Why not?」と返ってきた。そこにあったのは、日本の自然と歴史に対する素朴な敬意と、出会いの気持ちよさだった。旅行者でも“数”が少なければうれしい。数が多すぎると、それだけで人は疲れてしまう。それだけの話なのだ。 2)外国人はリッチで、日本人は貧乏? もう一つは、物価上昇、家賃高騰の中で、外国人は円安で日本を買い漁っているように見える。これは地味に効く。「自分たちは我慢してるのに」と感じると、嫉妬が芽生える。でも、思い出してほしい。数十年前、私がニューヨークに住んでいた頃、マンハッタンのビルを買い漁り、世界中に円をばら撒いて、カメラで写真を撮りまくっていたのは(これ当時の日本人ディスリのステレオタイプです)、他でもない“日本人”だった。時代が変わっただけ。あの頃の私たちに、同じような視線を向けていた人も、いたはずだ。 多くの人は「外国人が嫌い」なのではない、そう私は思う。変化が怖いだけ。理解できないものが不安なだけ。でも、排除しても何も変わらない。日本人の生活は、教育や福祉、政治や経済の改革なしに良くならない。この国に創造やイノベーションが生まれなければ良くならない。
…続きを読む - 【視点】
もはや私たちの生活は外国人なしに成り立たないところまで来ている。人手不足が深刻化する中で、住民の生活に必須のサービスは外国人なしには成り立たない。 全国知事会が外国人の共生に向けて国に提言したのも、背景には地方の深刻な労働力不足がある。各県が地元の期待を受けて外国からの人材確保ルートの確立に向けて取り組んでいる。 また、年金も外国人が1割になることを前提に設計されており、社会の支え手としても期待されている。 排外主義は、外国人がある種の分かりやすいスケープゴートにされているようにも感じる。 本質的な課題は、多くの人の生活不安・将来不安に政治が耳を傾け、将来にわたって安心して暮らせるビジョンを示し、そこに向かって政策を打っていくことではないだろうか。 どの党が政権をとっても、人口減少が進む中で、これまでのシステムでは社会は持続的ではない。 今回の参議院選挙で躍進した政党は、それぞれ実現可能性はともかく、「変化」のストーリーを示したように感じる。 どのように、縮小していく社会の中で、将来にわたって、人々の生活を守っていくか、すべての人に痛みのない出口はない。どういう政権の枠組みになっても正面から議論していくことが大事だ。
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日本で暮らす外国人・移民
日本はすでに多くの外国ルーツの人たちが暮らしていて、さらに増える見込みです。実質的に「移民大国」となりつつある日本社会の変化と課題を見つめます。[もっと見る]
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