“こころが男性どうし”のふうふ「とても幸せ」子どもを産み育てて、今思うこと…「自分らしく生きていい」と思える勇気の輪へ
今年2月に自民党など4党は、第三者が提供した精子や卵子を使った不妊治療のルールを定める法案を提出。対象を法律婚の夫婦に限定しました。ビジネス目的で精子・卵子を提供することへの制限や、生まれた子が自分の生物学上の親を知る権利に配慮することなどに触れる初めての法案である一方、法律婚を選ばなかったカップルや自分1人で子どもを育てたいと考える人は対象外としたのです。 きみちゃんはからだの性別を女性のままにすることを選び、ちかさんと法律婚をしているため、この法案が成立したことで直接受ける影響はありません。しかし仮に、きみちゃんがからだの性別も戸籍の性別も変えたあとにちかさんと出会っていたら、2人が子どもを持つ未来はなかったことになります。 廃案にはなりましたが、ゲイやレズビアンなどのカップルの生き方を制限しようとする流れが起きたことに、子どもを持ちたい当事者からは、将来への不安の声が上がっているといいます。
取材の1週間前に2人は、札幌で行われた、子どもを持ちたいLGBTQ当事者の集まりに参加したそうです。 「法律ができるかもしれないとなって、駆け込みで妊娠しているという話を聞いた。子どもがほしいという気持ちは、誰しもが持っていい当たり前の気持ちなんだと伝えたい」ときみちゃんは話します。
4年間の変化
みぃくんやじゅったんを通わせている保育園などでは、これまでの放送で2人のことを知っていた保育士や保護者から、応援の声をかけられることもあるといいます。 「応援してくれるまわりの人たちがいるから、自分たちの暮らしも成立できている。周りの人への感謝も忘れずに育てていきたいし、これから子どもがほしいと思うLGBTQの当事者も自信をもって踏み出してほしい」と、ちかさんはまっすぐに答えてくれました。
真夏を訪れを感じる陽気だったこの日。かつてまだ子どもが生まれる前だった、きみちゃんとちかさん2人を取材した公園を訪れました。 みぃくんは草むらを走り回り、シロツメクサの花を摘んで私にプレゼントしてくれました。カメラマンと音声マンには、落ちていたきれいな石を手渡します。 4年前は2人で座ったベンチも、いまは家族4人で。 取材が本格的に始まった4年前からこの日まで、心無い批判に傷つく2人や、大切な家族を失い悲しむ2人を目の当たりにし、記者として何を伝えられるか、伝えるべきか、悩んだこともたくさんありました。
きみちゃんは今回の取材の中で、何度も「いまがとても幸せ」と答えてくれました。 少しでも2人の人生にとって、自分の取材や放送、そしてそれを見て2人を応援してくれた多くの人からの応援がエールとなり、またそのひとり一人にとって、「自分らしく生きていい」と思える勇気の輪ができてたのならば…本当によかった、と願います。 過去の記事は【関連記事】でお伝えしています。 ◇取材:HBC泉優紀子