プロジェクトの成果
まもなく終わりを迎える「さよなら 丸の内TOEI」、プロジェクトの成果はどのようなものだったのだろうか。数字についてうかがった。
富﨑:お客さまの数ですと7月16日の時点で32000名、興行収入は5900万円を突破してまして、当初目標としていた数字を大きく上回っています。1館だけでの興行としては、かなり良い数字だと思います。通常この手の「さよなら興行」というのは最後の1週間だったりするのですが、今回は80日間という長さなので異例といえば異例です。
──いちばん集客した作品は?
富﨑:アニメの『風の谷のナウシカ』(84年)、『天空の城ラピュタ』(86年)、『魔女の宅急便』(89年)ですね。3作品とも東映が配給を担当し、現在はスタジオジブリさんが権利をお持ちなんですが、全上映満席でした。舞台挨拶なしでこの数字はすごい。
最後の3日間に上映するアニメ『THE FIRST SLAM DUNK』(22年)も完売していますので、この4作品がトップです。実写ですと、岸優太さん主演の『Gメン』(23年)が強いですね。
──閉館にちなんでパンフレットやキーホルダーなど、さまざまな関連グッズも発売されています。とくに思い出深いものはありますか?
富﨑:苦労したのはパンフレットです。資料性の高いものにしようと、1960年の開館からの丸の内TOEIの全上映作を載せようと思ったら、まず資料が残っていない。結局、東映の配給作品の一覧にしたんですが、2400作品ほどになってしまい……1991年までは社内資料があるんですけど、それ以降はリスト化されていなかったので、その作成と確認が大変でしたね。配給協力やグループ会社による配給作品もあったりして、その整理に苦労しました。
富﨑:パンフレットのビジュアルは、開館当時のリーフレットの表紙をもとにしたもので、プロジェクトメンバーの推薦によりイラストレーターの島田恵津子さんに描いていただきました。そのリーフレットも丸ごとパンフレットに再録されているのですが、当時の館内などが記録されていて貴重な内容です。時代の流れとして直営館の閉鎖は仕方ないと思うのですが、“会社の下に映画館がある”という地続きの環境がなくなってしまうのはさみしいですね。
──最後の質問です。ずばり東映はどのような映画会社ですか?
富﨑:今回のプロジェクトで東映の歴史を学び直したのですが、1つのジャンルが当たったらとにかくそのジャンルを作り続けて、ブームが去ったら「次!」というふうにやってきた会社で、とにかくエネルギッシュですよね。「さよなら 丸の内TOEI」もドーンと80日間で16件のイベントというのは東映らしいエネルギッシュさです。
他社さんに比べると泥くさいかもしれませんが、その前の「渋谷TOEI」の閉館が、自分としてはあっさり終わってしまった印象だったので、もっと華々しく派手にやりたいという気持ちがありました。結果、予想を上回る規模の「さよなら 丸の内TOEI」という東映らしいプロジェクトが実現できて本当によかったと思います。