「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクトのリーダーが語る

続いては「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクトのリーダーである東映・映画編成部の富﨑勇太(40歳)にご登場いただこう。まずは富﨑氏にリーダー任命の経緯をうかがった。

富﨑:じつは任命されたわけではなく、「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクトには16人のメンバーがいるんですが、もともと有志で立ち上げたものなんです。2025年夏の閉館というアナウンスがあった直後、近所に住んでいる社員の集まる飲み会で「自分なら最後にどの作品を上映するか」という話で盛り上がり、そこからプロジェクトが始まりました。その場での年次がいちばん上だったのがわたしで、じゃあいちおうリーダーという(笑)。

「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクトリーダー・富﨑勇太氏

こんなに俳優さんが来てくださって連日、舞台挨拶ができるなんて思ってなかったんですよ。みなさん丸の内TOEIのために駆けつけてくださって……最後は7月24日、『相棒 -劇場版-』の水谷 豊さんと寺脇康文さんで、イベントの合計が16件もの数になってしまい、一重に感謝しかないですね。

──「さよなら 丸の内TOEI」のコンセプトは?

富﨑:大きく2つありまして、1つは「劇場にかかわるすべての人への感謝」、もう1つは「映画館で映画を見ることの大切さ」です。すべての人というのは、これまでご来場いただいたお客さまはもちろん、丸の内TOEIにかかわってきた従業員やOB、今回のプロジェクトメンバー16人をふくめて、そう思っています。

いまやスマホやサブスクでいつでもどこでも映画が見られる時代ですが、あえて丸の内TOEIという昔ながらの映画館の大スクリーンで鑑賞してもらう……その“体験”のすばらしさを味わっていただくこともコンセプトです。

ブルーを基調にした劇場内
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──プロジェクトを進めるうえで、とくにこだわった部分はありますか?

富﨑:いちばん苦労し、こだわったのは「どの作品を上映するか」ですね。トータル108作品になったのですが、当然もっと多くの候補があり、プロジェクトメンバーそれぞれの思い入れがある作品も違うので……。それから“上映ができるもの/できないもの”がありまして、まず権利関係が東映にない作品。現在の丸の内TOEIはデジタル上映にしか対応していないのでデジタル化されていない過去のフィルム作品もかけられません。

ラインナップで意識したのは“なるべく偏らない”ということ。東映の代表作といえば、50年代の時代劇、60年代の任侠映画、70年代の実録路線、80年代に入ると女性文芸路線や角川映画さんと提携したアイドル映画……東映イコールその手の作品になりがちですが、75年の歴史がある会社ですし、ここ10年、20年の近作も入れようと意識しました。

もちろん『仁義なき戦い』(73年)のようなエポック作も入れますが、たとえばアニメ業界を舞台にした『ハケンアニメ!』(22年)、カンボジアに学校を建てる実話をもとにした『僕たちは世界を変えることができない。』(11年)など……公開当時は大ヒットしたわけではない、でも見ていただきたい作品も編成しています。

スクリーン側からの光を受けて、きらめく座席

──たしかに幅広いラインナップになっています。

富﨑:自分のいちばん好きな東映作品も入れてまして、横山秀夫さん原作の『クライマーズ・ハイ』(08年)です。日航ジャンボの御巣鷹山墜落事故と地元・群馬の地方新聞社を扱った社会派作品で、大学生のときに見て「映画のパワーってすごいな」と感じたんです。『クライマーズ・ハイ』はギャガさんとの共同配給で、現在はギャガさんが配給権をお持ちだったんですが「これは外せない」ということで上映のご相談をさせていただきました。

2階に展示された「さよなら 丸の内TOEI」のクラウドファンディング返礼品

富﨑:それからCAMPFIREさんからのご提案で「さよなら 丸の内TOEI」のクラウドファンディングを行いまして、劇場の座席やスクリーンなどをクラファンの返礼品としてグッズに生まれ変わらせることにしたんです。ご支援いただいた方のコメントを読むと、「幼いころ両親と来ました」というような思い出がたくさんありまして、普段なかなかお客さまの声を聞くことがないので貴重な体験でした。

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