1960年に竣工された東京・銀座の「東映会館」、老朽化により約65年にわたる東映本社の役割を終えた。7月下旬、引っ越し直前の社内を『京都撮影所案内』の著者・高鳥都が探訪。昔ながらの雰囲気の残る映画会社の最期を記録する。
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娯楽の殿堂・東映の本社
地下鉄銀座駅C6出口から徒歩3分、娯楽の殿堂・東映の本社は敷地面積332坪/9階建てのビルであり、屋上に掲げられた「東映会館」という看板が目印だ。
1階には映画館・丸の内TOEIが併設されているが、そちらに比べて本社の出入り口は意外と狭く、エレベーターホールのみの構造となっている。ガラスには、おなじみ三角マークのロゴが貼られている。
1階から2階に上がる階段には東映の映画やテレビドラマのポスターがびっしり貼られており、いかにも映画会社らしい。2基のエレベーターの間には各階の案内板を掲示、昭和の雰囲気を醸し出す。その奥側には、ポスターに挟まれるかたちで初代社長・大川博による竣工記念の手形があり、東映京都撮影所の俳優会館やステージにも同じようなものが残されていた(施工はどちらも清水建設)。
2階には床屋のサインボールが備わり、すでに営業終了していたが社内で散髪もできる体制であった。同じく閉鎖された4階の食堂はカレーライス220円という激安価格、かつては居酒屋も存在していた。各階にはかつて使用されていたメールボックスやダストシュートがあり、各所にある「歩行中禁煙」という掲示もまた、昭和らしいオフィスの名残だ(現在は全面禁煙)。