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Conversation

有識者や野党の皆さんが、なぜか「米国」の発表に基づいて関税交渉合意を批判していますが、外交のリアリズムが全く分かっていません。 外交は、相手には「勝った、獲った!」と言わせておけばよいわけですが、その実態について、与党や政府は相手の立場もあるので絶対に言えません。忖度不要の最強落選議員の立場で一言申し上げます。  まず、5500億ドル規模(80兆円)の投資については、日本政府が「税金から80兆円も出すのはけしからん!」という方々、これはワザとあおっているだけ(怒)。そんなはずありません!「出資・融資・融資保証」という文字を見たらわかるはずです。  本件は、政府の投資・金融機関である日本貿易保険(NEXI)や国際協力銀行(JBIC)の融資枠の話です。投じられる資金は、こうした機関が調達する資金であって、税金ではありません。しかも出資や融資なので、当然、一定の審査もあるし、出した分のリターンもあります。  何よりも重要なのは、あくまでプロジェクトを進めるのは日米の「民間企業」であるということです。決めるのはすべて、民間企業なんです。日米の企業から共同プロジェクトを進めたいという申請があれば、政府機関としてバックアップできる枠を、「80兆円」まで用意しますよ、という趣旨です。80兆円をそのまま突っ込むわけでもありません。  そんな中、リターンが日米で『1:9』と書いたのも、ある意味、外交交渉の絶妙なあやです。  米国は日米共同プロジェクトに乗り気で、たとえば「9割は米国が出資する」とか、「政府として全量買い取りたい」とか、「土地は米国が提供したい」など、かなり前向きな姿勢で臨んできました。そこを、合意文書にもあるように、『双方が負担する貢献やリスクの度合いを踏まえ、』という文言をいれて、『1:9』とあえて書いたわけです。  何度も言うように、利益の配分を決めるのは日米の民間企業同士です。自分が不利になるようなプロジェクトを、日本の企業が進めるはずがありません。そんなことをすると、株主総会でも背任の罪を追及されるでしょう。  具体的なイメージで言えば、例えば台湾の半導体大手のTSMCが米国に工場を建てる。そこに、日本の部材や製造機械を組み込むのであれば、そこを政府もバックアップしますという趣旨です。その際、当然ですが米国企業と台湾企業、日本企業で利益の配分を決めるわけです。こうした投資に米国は前向きでありますが、そこも『貢献やリスクの度合いを踏まえ』となるわけです。  こういう、実は勝手に好きなことが出来ないような仕組みをいれつつ、相手に花を持たせるような形で進めるのが、リアリズムの外交です。他にもいろんな観点がありますが、とにかく、米国閣僚すらトランプに交渉状況を上げるのに慎重(臆病)になっている中、相手も立てつつ、日本の国益を損なわない、むしろ拡大するような交渉を行った赤澤大臣には、心より敬意を表します。  無責任な人が、勝手に表面だけなぞって批判する事こそ、実は本当に日本の国益を損なう行為なんだと、はっきり指摘しておきます。