はじめにセミナーのお知らせです。
8月29日(金)19:00から、健美家さん主催の無料セミナーに登壇させていただきます。
テーマは『令和インフレ&高金利時代の区分マンション投資』です。ぜひご参加ください。
⇒https://www.kenbiya.com/sm/s/tokyo/t-g/pt-1/dt_50250cfr/
区分分譲マンションで非常に重要なのが共用部の管理組合です。これまでのコラムでは
・共用部管理会社が自社利益最優先で、過剰に自社利益になる管理業務を行い、管理組合財源から、巧みにお金を合法的に得る。
→「20年ぶりに区分所有法が大改訂!第三者管理方式での共用部管理会社の残念な実情【その3】」
・理事会も管理コンサルも大変熱心で、修繕工事コストを抑えるため、共用部管理会社を入れずに、管理組合が直接、工事業者へ個別発注するも、専門知識不足で上手く行かない。
→「皆が一生懸命だけれど修繕が上手くゆかない!マンション管理の残念な例【その7】」
…といった管理会社の実例を見てまいりました。
■つけ込まれた某マンション管理組合理事会
今回の事例は、民事はおろか刑事訴訟にまでなったものです。
ちなみに「分譲マンション研究会」とは、区分分譲マンションオーナーさんが情報交換しあいながら知恵を出し合い、問題解決に繋げる集まりです。
無料でどなたでも入れますので、ご案内を本稿の最後にご紹介させて頂きます。
さて今回対象となる物件を「某マンション」とします。
全数10室で、いわゆる投資用分譲マンションです。
組合員のほとんどが外部居住オーナーの為、管理組合は理事の成り手にも苦労する状態で、理事会は事実上、機能していなかったそうです。
一方、某マンションの管理組合積立修繕金は、この時点では、適正に積み立てられていました。
そんな実情に目を付けて、巧みにつけ込んできたのがN氏という不動産屋でした。
■N氏が区分所有を仲介売買し、そのオーナーを洗脳
図1に本件の初動を示します。
不動産屋のN氏は、一般人のK氏、S氏(不動産、マンション管理等については素人)に分譲マンションの区分専有部を売買仲介しました。
顧客のK氏、S氏は仲介業者N氏を頼れる専門家として信頼しきっていました。
二人がオーナーになると、N氏は(管理組合の乗っ取りを目的として)K氏、S氏へ、このマンションの理事への立候補を薦めました。
(理事として管理組合を運営すれば、マンション全体の価値が将来上がるメリットがあるなどと、説明したと思われます)
K氏が理事長、S氏が理事となり、事実上この管理組合はN氏の息のかかった理事会となりました。
(K、S両氏は物件を仲介してくれたN氏を善意の不動産のプロとして信頼しきっている)
■N氏が黒幕として理事会を仕切りはじめる
図2に次のステップとしてN氏が理事会を窃用した仕組みを示します。
このマンションの最上階、B氏の区分専有部で、屋上から雨漏りが発生し、B氏はそれを管理組合へ申告し、対策を要望しました。
理事長としてこの要望を受けたK氏は、(信頼する)N氏へ相談します。
N氏は、理事長K氏からの相談を受けると、不動産のプロである自分に全て任せてくれれば良いと、K氏を信じ込ませます。
このマンションには、従来からのパートナー修繕工事会社がありましたが、N氏は、理事長K氏からの相談を受けたにもかかわらず、この修繕工事会社には意図的に連絡せずに放置します。
K理事長へは「いまの修繕工事業者は、お願いしてもアクションを起こさず放置しているので、自分が懇意にしているA社にしましょう」
とK理事長へ提案、推薦しました。
■雨漏り専有部をブツアゲ買取、N氏がまんまとオーナーになり組合員に
図3にこのトラブルを上手く窃用して、N氏がオーナーとなった仕組みを示します。
漏水被害が発生したB氏の区分専有部は、管理組合が屋上防水工事を行わないので、雨漏りが解決しません。B氏のダメージは長期化してしまいます。
そこを突いて、N氏はB氏へ区分専有部のブツアゲ営業をかけて、その専有部持ち分の買い取りを提案します。結果、B氏の区分専有部所有権を買い取りました。
これでN氏はこの某マンションのオーナーとなり、管理組合員として管理組合へ(まんまと)加入してきたのです。
(法的には組合員になる義務が生じる)
■N氏が立候補して理事長の座に収まり、共用部管理会社を切って暗躍が本格化!
これで意図したとおり組合員となったN氏は、理事長へ立候補し、K氏からそのポストを譲り受け、新理事長の椅子におさまりました。
新理事長としてN氏が真っ先に行った事は、今までの共用部管理会社との管理委託契約を解除して、管理組合による自主管理にすることでした。
当然、これには管理組合総会での議決が必要です。
しかし、組合員のほとんどは外部オーナーですから、大半の方は新たに立候補して積極的に組合活動に取り組むN氏を信頼して、一任または賛成の委任状を提出しました。
N氏とK氏以外の総会出席者は、今までの経緯を何も知らず、その数も極僅かでした。
そんな総会で圧倒的多数の議決数を握るN氏の思う通りに、管理委託契約は切られて、マンションは自主管理(事実上は理事長N氏の運営)になってしまいました。(図4)
ここまでの経緯を改めて見てみますと、多くの投資用分譲マンションでは、どこでも起こり得ることです。
そのため、この様なリスクを懸念して区分分譲マンションの投資や所有を避ける方がいらっしゃるのも事実です。
この度発足した「分譲マンション研究会」では、実際の現場で発生しているこのような実例を、会員の皆様で共有しあい、解決してゆくことで、誰もが安心して、買って良し、住んで良し、貸して良し、借りて良し、売って良しの分譲マンション運営環境をつくってゆこうという集まりです。
更に、宅建士はもちろんのこと、マンション管理士、不動産鑑定士などの先生も、同じ目線で会員として参加されています。
某マンションの管理組合運営を事実上乗っ取ったN氏が何を始めたのか!?次回ご紹介して参ります。
最後に文中でご紹介した「分譲マンション研究会」を以下にご紹介させて頂きます。
分譲マンション研究会のご案内
分譲マンション研究会は、分譲マンションの管理組合運営に関心のある区分マンションのオーナー、専門家の集まりです。
対象となるマンションは、ご自身が住むマンションや投資用マンションです。
この研究会ではマンションの管理、トラブルの解決、マンションの修繕等の情報交換を行っています。
参加希望者は下記のQRコードを読み取るとLINEグループに参加することができます。
「分譲マンション研究会」ではLINEでの情報交換のほか、ZOOMでのセミナー、交流会も開催しています。
皆さまのご参加をお待ちしております。会長 湯浅俊典