これを言うと、一部の人には幸せなやつだと思われそうだなと思う。
まあ、間違っちゃいない。
父はその時ギターを引いていた。
それを巡って、父と母は喧嘩を始めた。
あれが始まりだったように思う。
その後も父の愚行は止まらなかった。
母にすぐ政治の文句を言い始め、母が嫌だと言っているのに聞かない。
それどころか、コミュニケーションをする気がないとキレる。
僕が割って入ると暴力沙汰に発展することもしばしば。
首を絞められたこともあった。
母は、うつ病の薬を処方されていたようだ。僕に話したことはなかったが。
そのせいだろうか、母は何にでも不安が先に出るようになっていた。
どのくらいかいうと、僕に大学生になるまでスマホを買い与えないほどだ。
LINEも使えなかった。
まあ母も可愛そうだなとは思うが、同時に、僕より何十年も生きてるくせにリスクヘッジ能力はその程度なのか、と思う。
小学生の時の僕は隙を見てパソコンをネットにつなぎ遊んでいた。
パソコンに詳しくなった。
散々馬鹿にされた。
今は、開発の仕事をしているのだが。
僕は悩んだ。
気持ちとしては別に構わないのだが、お金を父に依存しているので、生活が困る。
結局どう答えたかは覚えてないけれど。
だから、大学生になった僕は父に依存してる部分を全て排除することから始めた。
一人暮らしを始め、自分にかかるすべての料金を自分で支払うようにした。
嬉しいことに、僕の開発能力が評価され、かなり高い給料で働けるようになった。
去年の終わりのことだ。
父がDVっぷりを会社でも発揮したのか知らないが、クビになったらしい。
しばらくして、母に「転職先が見つかった」と報告。
その後しばらくして、「転職がなかったことになった」と言われたようだ。
母はそこで離婚を切り出したらしい。
ここで、僕は新卒二年目にして、家庭内で最高収入にまでなったのだ。
父は自分が一番偉いと思っているフシがある。
そこに具体的な数字を叩きつけられるようになった。
父がヨボヨボになったら墨を育てるのに使った分全額返金して黙らせようかなどと考えていた。
そして、今年のはじめ。
母のもとに一報が届く。
父が自殺したという連絡だった。
僕はそう思った。
しかしまあ、父は自分にお金しか価値がないことを理解していたのだろうか。
無職になった瞬間これだ。
ある意味賢いとも言える。
忌引を取るので職場に連絡したのだが、みんなが心配してくれるのが辛い。
僕は以下の文字を書いた。
人のつながりとは表裏一体であると、突きつけられたような心地がした。
かくして、新卒二年目なのに僕は家族を支えることになってしまったのだ。