参政党「神奈川新聞記者排除」の意味 「参院選で妨害」と主張するが…トランプ流「メディア選別」日本でも?

2025年7月26日 06時00分 有料会員限定記事
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 参政党の神谷宗幣代表らが出席した定例記者会見を巡り、同党が神奈川新聞記者の出席を認めず会場から排除する事態が起きた。同党は当初、記者に対し「事前登録が必要」と理由を示していたが、24日に文章を発表し、選挙中に「取材に名を借りた妨害行為に加担」したなどと説明を変更させた。「権力によるメディア選別」と識者からも批判が上がっている。(中川紘希、安藤恭子)

◆参政党が「事前登録が必要」から理由を変更

 会見は22日に国会内で開かれた。神奈川新聞によると、石橋学記者(54)が会見場で名刺を渡して着席したところ、党のスタッフに「事前登録していないと駄目」と退席を迫られた。「登録を求める通告はない」と伝えても認められず、会見前に退出した。

参政党が22日に開いた定例記者会見。左から3人目は神谷宗幣代表=22日、国会で(佐藤哲紀撮影)

 石橋記者は、参院選神奈川選挙区に立候補して初当選した参政党の初鹿野裕樹氏らを取材。初鹿野氏が外国人の生活保護に触れた発言について「外国人が優遇されているというデマ」と断じた。抗議に集まった市民を「非国民」と表現した初鹿野氏について「意に沿わない日本人も排除」とするコメントも取り上げた。会見からの排除も含め、参政党批判などの記事を3日以降、計18本執筆した。

参政党が公式サイトに公開した「神奈川新聞記者の定例会見への参加制限について」と題した説明(スクリーンショット)

 この問題で、参政党は24日夜にホームページで「神奈川新聞記者の定例会見への参加制限について」と題する文章を公表。「記者は街頭演説で大声による誹謗(ひぼう)中傷などの妨害行為に関与していた」などとした。混乱を恐れて会見への入場を断ったとし、報道業界がこうした行為を「是正」することも求めた。

◆「知る権利を著しく損ねる行為」新聞労連が特別決議

 説明の変更について、石橋記者は25日、取材に対し「虚偽の理由で会見から排除されたことが明確になった」と憤った。参政党が掲げる「日本人ファースト」に外国人らがおびえているとして「会見では差別による被害が出ていることを問いただすつもりだった。だが質問の機会は奪われ、結果として市民の知る権利も奪われた。権力による言論統制だ」と主張した。

参政党の初鹿野裕樹氏=20日、鎌倉市で

 24日に開かれた新聞労連の会合では、神奈川新聞労組から報告があり、選挙中に石橋記者とは別の記者が参政党の関係者に取り囲まれ取材できなかったケースや、スタッフとの接触で転倒した事例もあったと明かした。新聞労連は25日、「公党である参政党による報道の萎縮を狙った圧力であり、市民の知る権利を著しく損ねる行為」と抗議する特別決議を発表した。神奈川新聞社も既に同党に抗議文を提出している。
 「こちら特報部」は参政党に25日、問題の経緯などを尋ねたが、回答はなかった。
 この問題を、識者はどうみるか。立命館大の小松浩教授(公法学)は「記者の排除によって、報道の自由や知る権利といった民主主義の基盤が脅かされている」と批判する。

◆トランプ大統領も意に沿わないメディアを攻撃

 世界を見ても、米国のトランプ大統領が今年2月、メキシコ湾からアメリカ湾への改称に従わなかったAP通信に激怒、取材を規制し、メディアに動揺が広がった。政治家が意に沿わないメディアを攻撃し、選別する事態が起きている。

トランプ大統領(資料写真)

 参政党は、抗議の市民と一緒になった選挙演説への「妨害行為」を石橋記者を拒否する理由とした。これについても選挙制度に詳しい小松氏は「大音量のスピーカーで相手の主張をかき消すのではなく、肉声で抗議するだけなら、選挙の自由妨害罪にならない。外国人差別やデマに基づく主張を指摘することは、むしろ民主主義にとって有益」と一蹴し、こう指摘する。
 「政党の会見は一方的に主張を伝える場ではない。記者が質疑で国民の聞きたいことを聞き、追及することで真実が明らかになる。都合が悪い質問にも答え、説明責任を果たすことが公党の義務ではないか」
  ◇  ◇
 石橋記者が24日の新聞労連の会合で報告した要旨は以下の通り。

◆抗議のカウンターを「非国民」と表現

 いま私たちが直面しているのは、まごうこと...

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    みんなのコメント1件

  • ユーザー
    わきやま 13 時間前

    参政党こそ、「選挙に名を借りた差別・ヘイトスピーチ」を行ってきたではないか。語るに落ちるとは、まさにこのことだ。
    参政党の改憲案を見ると、「報道・諜報」という項目に、「報道機関は偏ることなく国の政策につき報道する義務を負う」とある。これは検閲をするという意味であろう。ここにも参政党の言論弾圧に対する意気込みを知ることができる。本日7/26の社説と合わせ、いまこの流れを食い止めなければいずれ報道の自由は失われていくだろう。東京新聞が報道機関として意見を明確に示したことは非常に高く評価できる。

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