売春、なぜ“買う側”に罰則ない? 「慎重に検討していく必要がある」政府が衆参両院で語った“本音”とは
「参議院」での政府答弁は?
同様の趣旨の質問は、今年4月3日に、井上哲士委員によって、参議院内閣委員会でもなされている。 「売春防止法は、この売春を性交行為のみに深く定義し、売春そのものではなくて、その勧誘やあっせんを処罰するけれども、売春の相手方となる性を買う側、これには何の処罰規定がありません。……性交に狭く限定している第2条(※)の売春の定義、買う方の買春者を処罰するなど、こういう見直しは検討をされているんでしょうか」 ※売春防止法2条:この法律で「売春」とは、対償を受け、または受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。 この質問に対する政府参考人の答弁の要点は以下のようなものであった。 ・3条においては、売春する行為とその相手方となる行為がそれぞれ禁止された上で、これらの行為そのものは処罰の対象とされていない。 ・売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良な風俗を乱すものであることに鑑み、売春の周旋等が処罰の対象とされている……成年に対するものを処罰する場合に、その保護法益をどのように考えるのか、また処罰の対象とすべき行為を明確に、また過不足なく規定することができるかといった点について慎重に検討していく必要がある。
参議院答弁「2つの問題点」とは
衆議院法務委員会では、藤原委員が、この参議院内閣委員会の答弁における問題点を2つ指摘している。 1.「売春が人としての尊厳を害し」とはっきりうたっているにもかかわらず、個人の尊厳をストレートに害する行為である買春行為を処罰対象としていないという問題点。 2.何人も、売春をし、その相手方となってはならないと明記しているにもかかわらず、売買春行為そのものの違法性よりも、売春を助長する行為による風紀の乱れを重視していると考えられる点。 その上で、藤原委員は「この(売春防止法)5条の保護法益は、風紀の乱れを防止すること、これに尽きるんでしょうか」と、政府参考人に問うている。 政府参考人の回答は、「売春防止法5条に規定する行為は、社会の風紀を乱し、公衆に影響を及ぼすことから、処罰対象とされているというものと理解しております」と、売春行為の処罰根拠に風紀の乱れのみを挙げている。