朗読の世界

★宮城喜久子「ひめゆりの少女・十六歳の戦場」（全２５回）　朗読：池間夏海 310万人もの犠牲者を数えた太平洋戦争。日本各地が空襲されたが、沖縄は日本で唯一、米軍が上陸し猛攻を加えた地上戦の戦場となった。軍人だけでなく民間人も巻き込む激しい戦いが80年前の3月下旬から組織的な戦闘が終わる6月下旬まで90日間続き日米合わせ20万人以上の死者を出した。沖縄の住民の死者は9万4000人に上る。中には動員された十代の中学生、女学校生徒たち多くの若い命があった。 宮城喜久子は卒業直前の1945年3月、沖縄でひめゆり学徒隊の一員として動員され、学友、教員とともに陸軍病院で負傷兵の看護などにあたった。砲弾や銃撃にさらされながら島内各地をさまよった。極限の生と死のはざまで手製の手帳に日々の悲惨な戦争のありさまを書き綴っていた。戦争の実情を決して忘れまいと当時16歳の女学生が懸命に書いた日記は戦争の悲惨さ、人間の愚かさを訴えてくる。25回にわたって朗読する。 16歳の宮城喜久子は国民学校と中学校の教師である父と母の反対を振り切って「国の為に尽くす人になる」と陸軍病院への動員に参加(3/22)、空襲が激しくなる中、那覇から南風原陸軍病院へ向かう。豪堀りや病院壕への衛生材料の運搬、食事の配送、水汲みなど同級生と取り組む。間もなく津嘉山の軍司令部へ配置転換の命令を受ける。艦砲射撃を受ける中で宮城喜久子ら4年生10名は卒業式を行うこととなる(3/29)。沖縄本島は1500隻のアメリカの軍艦に包囲され、一斉に上陸がはじまる(4/１)。日本軍は中部戦線で主力の7割、6万4000人が戦死。学徒隊は増え続ける負傷兵の看護、水汲み、食事運びに砲撃のなか取り組むが、別の部隊で教師と学生の死傷が伝えられてくる(5/9)。南風原陸病院の南部への撤退が決まる（5/25）。宮城らは守備隊として最前線に取り残される。重症患者がひしめく壕の中で牛島司令官を見る。その後司令部はさらに南部へ敗走(5/28)。統制不能の事態となり突然、解散命令を受ける(6/18)。自身もさらに南部へ逃げ延びる中で追い詰められ荒崎海岸で学友、恩師が次々に戦死、自決していく。かろうじて九死一生を得、自身は茫然として米軍に収容される(6/21)。初めて見る米兵の姿、収容所での不安な日々を経て、父、家族との再会を果たす（7月）。 ★朗読：池間夏海（いけまなつみ） モデル、俳優。2002年7月10日生まれ、沖縄県豊見城市出身。18年、資生堂『シーブリーズ』のCMに出演。その後19年、NHK連続テレビ小説「なつぞら」、映画『かぐや様は告らせたい』、22年、「島守の塔」に出演し、昨年24年には沖縄テレビ開局65周年ドラマ「おきなわテレビはじまりものがたり」にて主演を務めた。 ★宮城喜久子（みやぎきくこ） 1928年10月沖縄県勝運（現うるま市）生まれ。沖縄県立第一高等女学校4年在学中に動員される。戦後沖縄で小中学校に教員として勤務。軍国少女であった自分の戦場体験を伝える活動を退職前から始める。1989年からひめゆり平和祈念資料館の運営にかかわる。資料館副館長など。2014年12月31日死去。