沖縄北部にテーマパーク開業 期待の一方 渋滞影響など懸念も

豊かな森が広がる沖縄県北部の半島に、700億円を投じて建設されたテーマパーク「ジャングリア沖縄」が、25日開業しました。新たな観光スポットとして沖縄経済の起爆剤となれるか期待される一方で、交通渋滞による住民生活への影響などを懸念する声も聞かれます。

このテーマパークは、「やんばる」と呼ばれる豊かな森が広がる沖縄県北部、今帰仁村と名護市にまたがるエリアに完成しました。

自然の中での体験を通して解放感などを感じてもらおうと、700億円を投じて建設され、およそ60ヘクタールの敷地に、襲いかかるティラノサウルスから逃げるアトラクションなど、22のアトラクションを備えています。

初日の25日は多くの人が詰めかけ、列の先頭で午前3時から待っていたという大阪から来た22歳の男性は「最初に入場できたら名誉なことだと思います」と話していました。

また、神奈川県から来た小学4年生と1年生の兄弟は「恐竜に追いかけられたい」と話していました。

オープンすると訪れた人たちは記念撮影をしたり、アトラクションを楽しんだりしていました。

一方、入場チケットのシステムに障害が起き、一時、入場できない状態になったということです。

このテーマパークは、新たな観光スポットとして地域の雇用創出や沖縄経済の起爆剤となれるか期待が寄せられる一方で、交通渋滞による住民生活への影響などを懸念する声も聞かれ、交通インフラや施設内外の駐車場の整備など対策が進められてきました。

地元の店「地域活性化につながれば」

地元では地域経済の活性化に期待が高まっています。

このテーマパーク近くの今帰仁村の道路沿いには、2025年75月、地元産のパイナップルのジュースなどを味わえる店がオープンしました。

代表を務めるのは、子どものころから親戚のパイナップル畑の手伝いに訪れていた新井俊博さん(39)です。

おととし、神奈川県から名護市に移住しましたが、そのきっかけとなったのがこのテーマパークの開業だということです。

多くの人にふるさとのパイナップルを味わってほしいと、本格的に栽培を手伝いながらジュースやスムージーなどの開発を進め、直売所だった建物も改修しました。

プレオープンの期間には来場者や従業員が大勢店を訪れるなど手応えを感じているということです。

新井さんは「この地区はスイカが特産品だがパイナップルもおいしい。いろいろな人に食べてもらって地域活性化につながればと思う。これまでの10倍、20倍とパークに向かう車が店の前を通ると思うので期待している。地域を盛り上げていきたい」と話していました。

沖縄本島北部のホテル 宿泊需要の高まりも

テーマパークが開業する沖縄本島北部では、観光客の多くがリゾートホテルの集中する恩納村に宿泊し、名護市などのほかの市町村に宿泊する人は、4人に1人にとどまるとする調査結果があり、いわゆる「素通り観光」が課題として指摘されてきました。

テーマパークの開業で観光客の滞在時間が延びることで、宿泊や買い物などによる地元への経済効果が高まると期待する声が上がっています。

本部町にあるホテルでは、テーマパークのアトラクションなどが描かれたフォトブースがロビーに設置され、旅の気分を盛り上げようとしています。

ホテルによりますと、ことしは、夏から秋にかけて例年よりも早いペースで予約が入っていて、開業による宿泊需要の高まりを感じているということです。

このホテルの藤井幸総支配人は「テーマパークが1つの起点になって、北部の観光がさらに盛り上がることに大きな期待をしている。パークという性質上、観光客が北部にいる時間が長くなり、いろんなスポットを見て回ってもらえることが期待できる。北部のスポットを案内して地域を盛り上げていきたい」と話していました。

隣接する名護市の住民は

このテーマパークに隣接する名護市の中山地区では、これまで8回にわたって運営会社による住民説明会が開かれ、渋滞の懸念や環境への影響などについて住民と会社側が話し合ってきました。

特に、地区からパークに向かう片側1車線の県道84号では、深刻な渋滞が見込まれるとして対策を求めた結果、パークに入るための右折帯と信号機が新たに設置されました。

ただ、右折レーンの長さは、40メートルほどで、交通量によっては渋滞は避けられないことや、地元の道に慣れていない海外や県外からの観光客による事故が増えるおそれなど、懸念は残るということです。

中山地区の川野圭輔区長は「一番懸念しているのが、渋滞が起きた際の緊急車両の通行への影響です。園内での熱中症や事故による救急搬送がスムーズにできるのか心配しています。オープンからどれくらい交通量が増えていくのか注視しています」と話していました。

一方、地元の住民が招かれたプレオープンでは、子どもたちが恐竜の迫力を楽しんでいたとして「パークの経営が持続的にうまくいって、観光客が訪れ、そこから名護市や本部町など北部が盛り上がることに期待しています」と話していました。

懸念は交通渋滞 対策は

いっぽう、テーマパークの開業後に懸念されているのが交通渋滞です。

特に、那覇空港などからパークへ向かうメインルートの県道84号は、北部観光の中心である「沖縄美ら海水族館」へ向かう観光客も多く通ります。

周辺には高校や大学があり、地元の住民によりますと、通勤や通学の時間帯は、現在でも渋滞しがちだということです。

地元の消防からは周辺の道路が混雑した場合、救急搬送に遅れが生じるおそれがあるとの指摘も出ています。

こうした中、渋滞への対策が進められ、県道84号では県が進めていた、施設に入るための右折帯を設ける工事が工期を短縮して7月に完了しました。

施設の運営会社もさまざまな対策を明らかにしています。

入園チケットは日付指定による予約販売とした上で、日ごとに上限数を設定することや、自家用車での来場を抑制するため、那覇市や名護市、本部町の各地とパークなどを結ぶバスが毎日6路線、50便から57便運行されることなどです。

駐車スペースは敷地内に事前予約制でおよそ1100台分、敷地外にも名護市と今帰仁村の5か所におよそ1100台分のあわせて2200台分を確保するということです。

こうした対策について、会社側は地元住民への説明会を開くなどしてきましたが、開業後の渋滞がどの程度になるのかは不透明で、生活への影響に対する住民の懸念は払拭しきれていないのが現状です。

開業初日 午前中は目立った混雑は見られず

開業初日となった25日の午前中は周辺の道路で目立った混雑は見られませんでした。特に懸念されていた県道84号でも開業の直前の時間帯も含めて車の通行はスムーズで、施設の入り口に新たに設けられた長さ40メートルほどの右折帯でも混雑は見られませんでした。

マイカーでの来場を抑制する渋滞対策として、那覇市や名護市、本部町の各地とパークなどを結ぶバスが運行されていて、名護市の商業施設の駐車場に設けられた乗り場には、午前8時ごろにはバスを待つ人たちの長い列ができていました。

テーマパークの計画を主導 会社CEOの今後の戦略

このテーマパークの計画を主導するマーケティング会社の森岡毅CEOは6月、パークのコンセプトや強み、今後の戦略などについて語りました。

森岡氏は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの業績回復などで知られ、今回のコンセプトについて「沖縄に来た時にやりたいことがかなうパークにしたかった。大自然の中で、興奮、ぜいたく、解放感が味わえるアトラクションを集中的に作っている」と述べました。

沖縄を選んだ理由としては「沖縄はアジアの中心にあり、3~4時間圏内に20億人が住んでいる。その中の海を越えて飛行機に乗って旅行に来る富裕層だけでも膨大な数がいる」と説明しました。

海ではなく、森にフォーカスしたことについて「沖縄に素晴らしい大森林があるということの認知は低いが、そうした場所にいままでになかった高級リゾート感のある施設を作ればすでに強い海のイメージにそれが加わり、沖縄ブランドがさらに強くなると考えた。日本が世界からシェアをとってくるためには、他が持っていないイメージでブランドを作る必要がある」と述べました。

今後の展望については「第1期がうまくいけば、次は日本のいいブランドがいっぱい集まったパークをつくりたい。日本のキャラクターが集まったパークをいまの敷地の隣に作ってもいいし、あるいはこれをテコにして、国外に出していきたいと思っている」と述べました。

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