トップオピニオン社説【社説】陸自小銃事件 懸念される採用や隊規の問題

【社説】陸自小銃事件 懸念される採用や隊規の問題

小銃発射事件があった陸上自衛隊日野基本射撃場前に集まった報道関係者ら=14日午後、岐阜市

陸上自衛隊の日野基本射撃場で18歳男の自衛官候補生が教官の隊員らに自動小銃を発射し、2人が死亡、1人が重傷を負った。国を守るための実弾訓練中に、個人が抱いた悪感情から絶対にあってはならない犯罪を引き起こしたのは遺憾だ。採用は適切だったのか、自衛隊内の規律に問題はなかったのかなど徹底的に検証して、再発防止に努めるべきだ。

候補生が発射し3人死傷

89式小銃の実弾訓練で射撃の順番待ちをしていた容疑者の自衛官候補生は、52歳の教官隊員に対して殺意を持って銃撃し、ほかに2人の隊員が巻き添えになって被弾した。事件により犠牲になった隊員の冥福を祈るとともに、今後の捜査により4月に入隊したばかりの若年の自衛官候補生がなぜこのような凶行に至ったのか、動機の解明を待ちたい。

銃乱射は1984年に山口駐屯地で心神喪失状態の隊員が起こした事件があるが、今回は殺意を持って撃ったことを容疑者は認めているという。感情を制御できず乱射事件が起きるリスクが現実になったのは深刻だ。

この日の訓練で、死亡した教官や候補生の隊員らは防弾チョッキを着けていなかった。安全管理をより強化するように見直す必要がある。

自衛隊では大きな事故、不祥事が起きている。4月6日には着任したばかりの陸自第8師団長、坂本雄一陸将ら10人が搭乗する多用途ヘリコプターUH60JAが沖縄県の宮古島付近の海上に墜落。師団長はじめ全員が犠牲になる前代未聞の大事故が起きたばかりだ。

セクシャル・ハラスメントも問題になっている。陸自駐屯地で、女性隊員に対する複数の男性隊員による性暴力が明るみになり、防衛省は昨年12月に5人の隊員の加害を認めて懲戒免職処分にし、セクハラに対する調査を見送っていた中隊長を停職6カ月の懲戒処分にした。

事実上の軍である自衛隊の軍規ならぬ隊規の乱れや動揺が懸念される。寝食を共にして厳しい訓練を通過する組織では、人間関係とチームワークがネックになる。有事を想定した訓練は、敵の人命を奪うことを想定したものだ。平時の通念を超えた境遇に追い込まれ、メンタルケアも重要である。隊員が殺意を抱くほどの悪感情は何が問題だったか究明すべきだ。

容疑者は候補課程を通過した後に任期制自衛官になる予定だったが、任期制は募集難と言われている。少子化の進行と有効求人倍率の上昇による雇用情勢の好転が自衛官募集に不利に作用したとしても、適性を測る適切な採用か吟味してほしい。

一方、このところ銃や爆発物による殺人、殺人未遂が起きているのは無気味である。長野での警官らが犠牲になった猟銃発射事件、和歌山で首相を襲った爆発物投擲(とうてき)事件、安倍晋三元首相を暗殺した銃撃事件などだ。

殺人は正当化できぬ悪

安倍氏殺害により起訴された被告に対しては、一部に英雄視や同情を訴えての減刑運動があり、これに便乗するマスコミもある。

銃犯罪も殺人も正当化できない悪と否定すべきだ。

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