家族らの養護者による高齢者虐待では、認知症と介護疲れが大きな要因になっており、加害者は男性が多くなっている。
厚生労働省の調査によると、2023年度は1万7455人の高齢者が家族らから虐待を受けたと判断された。発生要因(複数回答)は、最多が高齢者の「認知症の症状」で9636件、次いで、家族らの「介護疲れ・介護ストレス」が9376件と続き、半数以上を占めた。
加害者は息子7100人、夫4178人、娘3459人の順で、男性が6割近くだった。
また、14~23年度に家族らによる虐待などで死亡した高齢者は255人で内訳は、▽殺人84人▽ネグレクトによる致死70人▽虐待による致死30人――などだった。加害者は息子が118人、夫が45人で男性が7割を占めた。
介護問題に詳しい立命館大名誉教授の津止正敏さんは、「介護に直面した男性は、仕事一筋だった生活からの急激な変化や家事に悩みやすい」と指摘する。
殺人に至ってしまうケースについては、「介護そのものの過酷さに加え、孤立感を深めて絶望してしまった末の行動ではないか」と分析する。
男性が介護を担った際、真面目な人ほど周囲に頼ることができずに一人で抱え込んでしまいがちだという。
津止さんは、ケアマネジャーや家族などの周囲が介護者の状況に気を配ると同時に、男性介護者のコミュニティーに参加して、悩みを打ち明けたり、愚痴を言い合ったりすることが大事だとする。【塚本紘平】
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