(社説)皇室制度のあり方 女性・女系 将来の道閉ざさずに

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 皇族の数を確保し、皇位継承の安定につなげる方策について、与野党の協議が詰めの段階に入っている。

 象徴天皇制は、憲法に定められたものだ。憲法全体に流れ、国民が広く共有する価値観を大切にしながら、将来の女性・女系天皇をことさらに排除しない方向で議論をまとめるのが望ましい。

 ■本人の選択を尊重

 各党が参加する全体会議や個別の意見聴取を経て昨秋、衆参正副議長が、以下のような中間報告をまとめている。

 (1)悠仁さままでの皇位継承の流れはゆるがせにしてはならない点は「おおむね賛同する意見が多く述べられた」、(2)女性皇族が結婚後も身分を保つことは「喫緊の課題として認める方向でおおむね共通認識が得られた」とした。(3)「皇統に属する男系男子を養子に迎えること」は、「積極的な意見も多く述べられたが反対論もあった」とした。

 今年に入ってからも全体会議が4回開かれ、今月までに議事録がすべて公開された。

 女性皇族が結婚後も皇室に残ることにする場合、残るかどうかについて本人の選択を尊重する方向でおおむね一致した点は評価できる。表現、職業選択の自由など、さまざまな基本的人権に制約のある身分にとどまるかどうか、自ら決める自由を保障することは当然だ。

 なお、本人の選択といっても、有形無形の圧力を感じて行う場合もありうることには想像力を働かせたい。本人の意思や人権を十分に尊重する制度作りが必要だ。

 皇族も「生身の人間」(秋篠宮さまの昨年の会見)である。一人の人間として尊重することを忘れないでいたい。

 また、女性皇族の範囲を内親王(天皇の子や孫)だけか女王(ひ孫以下)も含めるかについては、女王まで含める意見が大勢を占めた。

 ■養子案に消えぬ疑問

 一方、女性皇族の配偶者と子に皇族の身分を与えるかについては主張が割れている。

 自民は「皇統に属さない男子が皇族となることはないという皇室の歴史、伝統は極めて重い」などと、男系男子でつなぐ必要を強調して反対。これに対し「身分を付与しないと政党や宗教団体、営利企業を主宰することが自由で、女性皇族の皇族としての品位や政治的な中立性に重大な影響を及ぼす可能性がある」(立憲)との指摘もある。

 身分付与の道を閉ざすことには賛成できない。

 三権の長や皇族でつくる皇室会議が、身分を付与するかどうかをその都度判断するという案も浮上している。

 戦後皇籍を離れた旧11宮家の男子の子孫を皇族とする養子案について、社説は「男系男子による皇位継承に固執した案で、国民の幅広い理解を得られるものとは言いがたい」との考えを示してきた。

 養子は、皇室典範で禁じられてきたものであり、それは歴史上たびたび起きた皇位継承順位や正統性をめぐる混乱を避けるためでもあった。また、今世紀に入って小泉内閣のもとで首相の私的諮問機関として設置された有識者会議でも、旧皇族の復帰案について「国民の理解と支持、安定性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり、採用することは極めて困難」とされていた。

 近年も憲法学者から「門地による差別として憲法上疑義がある」などと指摘されている。今回の会議でも、事実上の世襲の貴族をつくることにつながるという主張がある。こうした根源的な疑問を解消しなければ、広い理解は得られないのではないだろうか。

 ■根本の論点深めたい

 議論のまとめ方に表れているのは、小泉内閣時代の有識者会議が容認し、その後の世論の支持も高い女性天皇、そして「女系」への拡大が、議題から外されている点だ。女性天皇は過去に8人いる。いずれも父方に天皇の血を引く男系で、血筋を母方に引く女系天皇は例がないとされる。

 天皇が憲法1条にうたわれる「日本国民統合の象徴」である以上、天皇やそれを支える制度に、社会が克服しようとしている男女不平等が投影されるのは適切ではないのではないか。女性・女系天皇の可能性も排除せずに、全体として整合性のある議論を進めることが求められる。同時に、対象となる個人の人権にも十分留意する必要がある。

 象徴天皇制と、「個人の尊重」や「法の下の平等」など憲法全体に流れる「人類普遍の原理」と。憲法には異質なものが同居しており、完全に整合させることは難しい。

 新しい制度が、その不整合を逆に大きくしないか。国民統合の象徴としての天皇を支えるためのよりふさわしい方向なのか。現憲法のもと培われてきた現代社会の価値観に合致するのか。根本的な論点を、深めてもらいたい。

 社説は「広範な合意のないまま、数の力で押し切ることはあってはならない」としてきた。この立場を改めて確認しつつ、議論をいたずらに先延ばしせず、かつ、幅広い国民の腑(ふ)に落ちる結論を得るよう、詰めた検討を求めたい。

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