夕方、不安になるほど真っ赤になった空
横を向くと彼女はにこやかに笑い、どうしたのと聞く。なんでもないと目を逸らし俺は前を向いた。膝下まで伸びた甘いピンク色の絹のように艶やかな長い髪をもつ彼女と黄昏時の赤い空が合わさり、その姿が余りに幻想的に美しく、この世の者のように見えなくて、何処か遠い常世に行ってしまうのではないかと不安になる。その所為で頻りに彼女の存在を確認をしてしまう
恋人であれば、離れて行かないよう手を繋ぐ事が出来たが生憎、彼女に恋情を知られてはいるがまだ恋人にはなれていない。好色的な男ならば恋人になれてなくても彼女の手を捕まえられるだろうが、俺は恋愛に対して生半熟な男だった。
ふと彼女が一歩前に歩み出し、こちらを見上げた
「今日の夜、花火を打ち上げるんだって」
「花火か、人里でやるのか?」
彼女は「そうみたいだよ」と頷き、再び口を開いた。その様子はどこか緊張していたが、まっすぐ俺の目を射止めた
「ねえ、…2人で一緒に見に行かない?」
「…行く。一緒に行こうか」
予想外の誘いだったので返事が数秒遅れてしまった。返事を言ったら彼女はありがうと嬉しそうに微笑んだ。その表情が可愛くて喉から変な声が出そうになった。
しばらく歩いていたが気づいたら家に着いていおり、ただいまと呟き一緒に家に入った
手を洗ってすぐキッチンに行き買って来た食材を袋から取り出し、今日使うものと使わないものを分け、使わないものを彼女に渡し冷蔵庫に入れるようお願いした
彼女が冷蔵庫に入れてる間に使う調理器具を準備して、野菜を洗った。冷蔵庫に入れ終わった彼女が来て、一緒に料理を始めた。
出来上がったものを食べる頃には外が暗くなっていた。だが花火の時間ま余裕がある。俺はシャワーを浴びる事にした。
「はあ、」
暑めの湯を浴び、夕方の事を思い出し、反省する
修行に専念しすぎていた所為で花火の事など知らなかった事。それに、彼女に言わせてしまった事。最近少しそわそわと落ち着かない様子だったのは俺に誘って欲しかったんじゃないか?知っていたら俺から誘ったのに…と思いかけたがすぐに訂正する。告白すらも出来てない意気地なしの俺に誘えたのだろうか…と…そこまで考えて俺はシャンプーを流し、意図して別の事を考え始めた。
体を流し終わり、置いていたタオルで体と頭を拭き衣服を着けた。いつも通りの服だったが2人で出かけるという事を考え、少しは着飾ろうと思い自分の部屋に行った
いい感じの服装を揃え、ヘアスプレーで髪を少し整えた
大丈夫だろうかと全身鏡で自分の姿をチェックしていたら部屋のドアからノックが聞こえた
「要くん、そろそろ行こう?」
ああもうそんな時間か…俺は返事をして部屋から出た。すると彼女も着替えていたらしく、可愛らしいワンピースを着ていた。その服装に相まって彼女が余計に可愛く見えてどきりと緊張した。
「わあ、要くんカッコいいね」
彼女はふわりと笑い言った。『カッコいい』と言われ、内心ガッツポーズをしつつ桜花の服装に対して俺も思った事を言った
「桜花も、すごく可愛いな…」
少しもたついたがちゃんと言えた。そう言うと彼女は頬を染めてありがとうと破顔した
「私、花火がよく見えそうな所見つけたから付いてきてね。」玄関を出た時に彼女はそう言い歩き出した。俺も彼女の後に続いて歩いた。
歩いていると森に入り、少し崖に近い所まで登り、その場所はあった
人里、遠くの森、山、見晴らしがいいその場所はそれらが暗闇でもよく見えた
「こんな所あったんだな」
俺が感慨深く言うと彼女が誇らしげに笑った
「えへへ、いいで所でしょ〜」
長めの風呂敷を敷き、座って待ってると数分も経たないうちに花火は上がり始めた。色は赤色だけだったがその迫力は言葉に表しきれなかった。惚けて花火を見ていたら花火は数十分くらいで一旦終わり、けどこれで終わる訳では無く、しばらくしたらまた上がるらしい。
「飲み物持って来ようか」
「そうだね」
喉が渇いて来たので飲み物を取りに行く事にした。自販機があればいいのだが、森以前にここは幻想郷でありそんなものはある訳ない。
森を出て、家からペットボトルの飲み物を取り出してから生地が硬めの袋に入れて肩にかけた。そして先ほどの森に向かった。今度は俺が先頭にして森を歩いた。
歩いてると花火が再び始まったらしく音が聞こえて来た
「あ、始まったみたいだな。」
「残念、間に合わなかったね」
少し駄弁りながら進み、先ほどの場所まで辿り着いた。
座って花火を見ながら持ってきた飲み物を飲んだ。酒も持って来ようとしたが彼女に叱られてしまい断念した
しばらく花火を見ていたら、彼女が肩にもたれて来た。俺はびっくりして体を突き放してしまった。一瞬沈黙が続き、彼女は作り笑顔をして言った
「あ…ごめんね…嫌だったよね急に…ほんと何してるのって感じで…」
「いや、びっくりしただけで嫌とかじゃ」
俺が言い切る前に彼女は立ち上がった
「ごめん、ちょっと先帰るね」
彼女は小走で森を下った。
ああ、誤解をさせてしまった。拒絶した訳ではないのに…嫌われてしまうかもしれない…もう素直に笑いかけてくれないかもしれない…そんな事を思い、絶望した。
いや、何を考えているんだ。自分の事ばかりじゃないか!!
走っていく彼女の表情を思い、俺は彼女を追いかけた
まだ森にいるはずだと俺は走った。暗くて遠くまで見えなかった。花火が打ち上がるたびに一瞬だけ森が光り、その一瞬で周りを見る事しか出来なかった。
「桜花…っ!」
ドンとのぼる花火の光の照らされ、赤い光に照らされる桜花を見つけた。逃がさまいと手を掴み、そしてそのまま桜花を後ろから捕まえた
「ごめん、本当に誤解なんだ。…ただびっくりしただけで…俺、嬉しかったから…」
最初に謝り、言葉を間違えないように、しっかりと桜花に言った
ここからは桜花の表情が見えないが、声はちゃんと聞こえた
「うん……私もごめんね、逃げちゃって…」
よかった…転んだりしてないようだ…それに、俺を嫌ってもないようだ…
「あの…それより…苦しいから腕緩めてほしいな…」
そう言われて俺は始めて桜花を抱きしめている事に気付いた
「ああっ!悪い!!今離れるから!」
俺は慌てて桜花から離れた。顔を覗くと桜花は何故かむくれてており、目が合った瞬間プイっと顔を背けられてしまった
「や、やっぱり嫌だったのか…」
嫌われた…終わった…と俺はがっくりと落ち込んだが桜花は俺の腕に抱きついてきた
「ちーがーうーの!!私は腕を緩めてって言ったのになんで腕を離しちゃうかなあ!」
「えっ…わっ…!」
桜花に抱きつかれ、頭がショートした俺は顔を真っ赤にして脳内パニックになった。それに気づいた桜花がすぐに腕を離してくれたが少しだけ勿体無いと思い、耐性のない自分を恨んだ
「花火、まだやっているし、もっかい見に行かないか?」
「でも、もう終わるんじゃないかな?」
「せっかく桜花が誘ってくれたんだ。最後まで桜花と一緒に見たくて…あ、嫌なら全然いいんだけど…」
「ううん嫌じゃないよ、最後まで見よっか一緒に!」
先ほどの場所を目指し、俺と桜花は歩いた。桜花を見失わないように、離れないように、確かめるように、そっと手を握り、繋いだ。
要が手を繋げるようになるまでの話を妄想してみました
ギャグっぽくは無いです。かと言ってシリアスでも無い。