一般国民が養子縁組で皇族に

もう1つの提案も問題が多い。戦後の80年近くを民間人として暮らしてきた旧宮家系子孫の、親の代からすでに国民という男性“だけ”に、ほかの国民には禁止されている皇族との養子縁組を例外的・特権的に認め、新しく皇族の身分を取得できるようにするという。

心情的・生命的な結合と言うべき婚姻を介さずに、単なる法的手続きだけで一般国民が皇族になるのは、歴史上に前例がない。そればかりか、憲法の「国民平等」の原則に反し、禁止されている家柄・血筋=門地もんちによる差別にあたる疑いが拭い切れない。

その例外は皇統譜に登録されている皇室の方々だけ。なので、戸籍に登録されている旧宮家系国民男子の例外扱いは、もちろん憲法違反のはずだ。

そもそも、このプランの場合、「養子」になろうとする適格者が実在するのかどうか。皇室の中に、養子を迎え入れる「養親」になろうとされる皇族がおられるのかどうか。これまでまったく明らかになっていない。

議論が再び暗礁に乗り上げた原因

6月下旬までの通常国会の会期中には、衆参両院の正副議長が全政党・会派に呼びかけて、先のプランを土台として「立法府の総意」を取りまとめるべく、全体会議が開かれた。さらに、自民党の麻生太郎・最高顧問と立憲民主党の野田佳彦・代表による、水面下での交渉も続けられた。

しかし、立法府サイドでいったん合意ができた後に、政府サイドの山崎重孝・内閣官房参与が越権的に介入した。その結果、最後は麻生氏サイドの“ちゃぶ台返し”によって、振り出しに戻り、不信感だけが残った。

この残念な顚末は、衆参正副議長らのリーダーシップの欠如や、麻生氏の不誠実さなども、理由としてあげられる。だが何よりも、合意作りの前提とされている令和の有識者会議報告書の中身が、お粗末すぎる。そのことが、昨年に続いて合意作りが暗礁に乗り上げた、最大の原因だろう。

そのお粗末さをもたらしたのは、欠陥ルールによる今の皇位継承順序を「ゆるがせにしてはならない」などと、あらかじめ見当外れの“枠”をはめているからだ。

しかし実際には、そのような枠など存在しない。憲法の「皇位は世襲」という規定の範囲内であれば、皇室典範の改正はもっぱら国会の判断に委ねられる。

その世襲=皇統による継承には、男性も女性も男系も女系も含まれる、というのが政府見解であり(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』)学界の通説なので、むしろ世襲の障害になっている「男系男子」限定を解除することは憲法上の要請と言える。

それを解除すれば「直系」優先(皇室典範第2条)なので、その瞬間に直系長子の敬宮殿下が「皇太子」になられる。

西村宮内庁長官の苦言

未婚の女性皇族が婚姻後も皇族の身分にとどまるプランの結論が持ち越しになったタイミングで、宮内庁の西村泰彦長官から異例のコメントがあった。

「皇族方の減少は大変大きな課題であり、それを踏まえての議論はしっかりと進めていただきたい」
「安定的な皇統を後世につなげていくという意味でも大変重要」と。

このような重大な発言を、宮内庁長官が天皇陛下のご意思と無関係に独断でおこなうことは、ありえない。よって、陛下は敬宮殿下がご結婚後も皇室に残られることを希望しておられると、拝察できる。

もちろん、敬宮殿下ご本人のお気持ちと無関係に、陛下がそのような願いを持たれるとは想像できないだろう。