「愛子に天皇になってほしい」

しかし、これまでも繰り返し指摘してきた通り、秋篠宮殿下ご自身は即位されるおつもりはないと拝察できる。客観的にも、天皇陛下よりわずか5歳お若いにすぎない年齢差を考慮すると、陛下が上皇陛下の前例を踏まえて、たとえば85歳で退位される時には、すでに79歳か80歳になっておられる。なので、それから即位されることは現実味がない。

ご長男の悠仁殿下についても、その即位を望んでおられるようには見えない。

皇位継承者に求められる適性を身につける特別な教育(いわゆる帝王学)について記者会見で繰り返し問われても、これまで真正面から回答されたことはない。実際に姉宮たちと異なる教育が行われた気配もない(江森敬治氏『悠仁さま』令和7年[2025年])。 

「ジェンダー平等」を尊重される秋篠宮殿下ご自身の価値観に照らしても、敬宮殿下という直系の皇女がおられるのに、「女性だから」というだけの理由で皇位継承のラインから外されるルールに、そのまま納得されているとは考えにくい。

さらに上皇陛下は、次のようにおっしゃっていたことが伝えられている(奥野修司氏『天皇の憂鬱』平成31年[2019年])。

「ゆくゆくは愛子(内親王)に天皇になってほしい。だけど自分も長く元気ではいられないだろうから、早く議論を進めてほしい」

それが年齢を重ねられた上皇陛下の強い願いだった。

首をかしげる有識者会議の提案

ところが、立皇嗣の礼の印象操作に惑わされて、今の天皇陛下から秋篠宮殿下、さらにその次は悠仁殿下へという皇位継承の順序が、何か既定の事実であるかのような勘違いが生まれている。政府はそれを狙ったのだろう。

そのような錯覚をわざと持ち込むと、どうなるか。その後にスタートする皇位継承問題をめぐる議論も、おのずと限界が設けられることになる。それは、目の前の皇位継承順序を変更しない範囲内でしか制度改正が図れない、という限界だ。

実際に、その後に設けられた有識者会議の報告書(令和3年[2021年]12月)を見ると、みごとに(?)その限界内だけの議論に終始した。

ミスマッチな構造的欠陥を抱えるルールに基づく、今の皇位継承順序を固定化すれば、どうなるか。安定的な皇位継承を目指す当たり前の制度改正は、蓋が閉じられてしまう。

その結果、先の有識者会議の報告書では、「安定的な皇位継承」とはおよそ無縁な、首をかしげる提案しか盛り込まれていなかった。

おもな提案が2つある。

その内の1つは、内親王、女王各殿下方が婚姻後も皇族の身分にとどまられる一方、その配偶者やお子さまは国民とされる。「家族は同じ身分」という近代以降の家族の在り方についての根本原則をくつがえす、時代錯誤な制度が提案される結果になった。

社会通念上、“家族は一体”と見られがちなので、身分が異なる皇族と国民が1つの家庭を営む場合、大きな無理が生じる。憲法が皇族に求める政治的な中立性や尊厳、国民に保障する自由や権利が、どちらも深刻に損なわれる危険性が高い。