政界の空気が一変した

ところが、秋篠宮妃紀子殿下ご懐妊のニュースが流れると、政界の空気は一変した。

当時、内閣官房長官だった安倍晋三氏が「男系男子」に強いこだわりを持っており、皇室典範の改正を先送りする上で決定的な役割を果たしたことが知られている。

それによって、せっかく気運が高まっていた皇位継承問題の解決は、頓挫してしまった。

その後、政府も国会も無為無策のまま、結果的にこの20年間、事態は1ミリも前に進んでいない。

平成18年(2006年)9月6日、悠仁親王殿下がお生まれになった時に、私はテレビ朝日の特別番組に出演した。1人の国民として皇室のご慶事を寿ぐ一方で、これによって皇室典範改正への取り組みが停滞するようなことがあれば、皇室の将来にとって喜んでばかりはいられない、との懸念を抱いた。

たったお一方の男子のご誕生によって、たちまち困難が解決するほど、底の浅いテーマではないからだ。

現に、先の有識者会議報告書にも、「今後、皇室に男子がご誕生になることも含め、様々な状況を考慮した」が(それによって構造的な欠陥が解消されるわけではないので)女性天皇・女系天皇を認めなければ皇位継承は行き詰まるとの「結論が最善のものであると判断した」と明記されていた。

宙ぶらりんのままの内親王・女王の将来

この時の上皇陛下のお気持ちについては、宮内庁長官だった羽毛田信吾氏の証言がある(日本経済新聞社社会部編『明仁上皇と美智子上皇后の30年』令和元年[2019年])。それによると「悠仁さまがお生まれになって、うれしいというお気持ちと、これとは別に問題は依然として残っているという認識を併行して持っておられた」という。

ところが当時、「これで今後、40年は皇室典範の議論をする必要はなくなった」(中曽根康弘元首相)などという、無責任な放言がそのまま通用するような空気が生まれた。これによってその後、政府・国会は問題解決の先延ばしを決め込み、時間がいたずらに空費された。

当事者である内親王・女王各殿下方は、これまで通りご結婚とともに国民の仲間入りをされるのか。それとも皇族の身分を保持し続けられるのか。その場合の配偶者やお子さまの身分はどうなるのか。将来が見通せない宙ぶらりんの状態のまま、これまで長い歳月を過ごされるはめに陥った。

政治の怠慢による、冷酷この上ない仕打ちと言うべきだろう。

皇位継承問題の解決を遅らせた要因の1つは、政治家が自分たちの責任を回避するために悠仁殿下のご誕生を悪い形で利用し、あたかも事態打開への大きな前進があったかのごとき錯覚が、意図的に流布されたことだ。

「新年祝賀の儀」に臨まれる天皇、皇后両陛下の長女愛子さまと秋篠宮家の次女佳子さま
写真提供=共同通信社
「新年祝賀の儀」に臨まれる天皇、皇后両陛下の長女愛子さまと秋篠宮家の次女佳子さま=2025年1月1日午前、宮殿・松の間(代表撮影)