ビジネス

2021.02.12 16:30

男性ばかりの会議から見えてくる日本の未来 食い止める術は

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東京オリンピック・パラリンピック(オリ・パラ)大会組織委員会会長であった森喜朗氏の度重なる女性蔑視発言に、日本中、世界中から非難が殺到しました。

国内外からの批判と解任を求める声は大きくなるなか、森氏は辞任の意向を示し、2月12日に辞任が正式に表明されました。

しかし今回の一連の出来事は、森喜朗氏個人の失言に留まるものでなく、日本社会に根強くはびこる様々な問題を見事に凝縮したものと言えます。その一つが、男性ばかりがメンバーや発言者である会議やイベントと、それが暗示する日本の暗い未来です。

もちろん中には、男性だけで話すことが適切な話題(例えば生物学的に男性しか経験しないようなこと)もあるのかもしれません。けれども最近私が目にして驚いたのは、日本のオリンピック評議員会のみでなく、持続可能な開発目標(SDGs)や「コロナ後の日本の社会」などについて議論する場において、見事に発言者全員、あるいは圧倒的大多数が男性のものが、当たり前のように開催され宣伝されていたことです。

時には「女性をいれればいいんだろ」と言わんばかりに、若くてキレイな女性をお飾り司会者として配し、実際の講演者はズラリ男性というような会もあります。

私が長年勤務していた国際機関では、既に10年ほど前から「男性ばかりのパネルには参加しない」という幹部が増えてきています。ロジックとしては、世の中の半分(以下)の人々の視点しか反映しない委員会やイベントは、そもそも企画の段階で不適切だしインパクトも少ないだろうから、参加するだけ自分の時間の無駄ということのようです。

また、本当に(男性である)自分に登壇して欲しいなら、パネリストの数人を女性に変えてから依頼し直してくるだろう、という自信の現れでもあるでしょう。最近は「男性ばかりのイベントには登壇しない」と表明する日本人男性が私の周りでもやっとチラホラ出てきました。

国内より海外で活躍する日本人女性


一方で、この手の議論になると必ず出てくるのが、「でも日本にはちょうど良く発言できる優秀な女性がいないから……」という反論です。上記のような課題で発言できる「優秀な日本人女性」は本当にいないのでしょうか?

私に身近な分野で言えば、Times Higher Educationという高等教育に関するオンライン記事に、少し古い数字ですが興味深い統計が紹介されていました。2014年時点で日本国内の大学・研究機関に勤める女性は1割に満たないのに、海外の大学・研究機関に勤める日本人研究者のうち6割が女性である、というのです。同様に、国際機関の職員は世界全体でみると6割が男性ですが、日本人職員に限ると逆に6割が女性というのも、長年ほぼ変わらない傾向です。
次ページ > 社会構造の問題かもしれない

文=橋本直子

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キャリア・教育

2021.02.05 16:30

しゃべり過ぎるのは女性ではない 森会長発言の誤りを示す研究結果

東京五輪・パラリンピック組織委員会 森喜朗会長(Carl Court/Getty Images)

東京五輪・パラリンピック組織委員会 森喜朗会長(Carl Court/Getty Images)

会議が不必要に長引く原因は女性がしゃべり過ぎることにあり、その理由は競争意識の高さにある──。

これは東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が示した見解だが、これまでの研究からは、森会長がどちらの点でも間違っていることが示されている。女性はおしゃべり好きだというステレオタイプとは裏腹に、実際には男性の方が競争意識が高く、発言も多い傾向にある。

問題の発言は3日、女性理事を40%以上にするという日本オリンピック委員会(JOC)の目標に関して質問を受けた際に出たもので、その場にはJOCのメンバーと記者らが同席していた。

森会長は「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。(中略)女性の理事を増やしていく場合は、発言時間をある程度、規制をしないとなかなか終わらないので困る」と発言。さらに、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げていうと、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」と説明した。

JOCの理事25人のうち、女性は現在5人。森会長は翌4日、この発言を撤回し、謝罪した。

森会長は驚くかもしれないが、この主張を裏付ける証拠はほとんどない。デボラ・ジェームズとジャニス・ドレーキッチの研究者2人は、男女の話す量を比較した56件の先行研究を分析。結果、女性が男性より話す量が多いと結論づけた研究はわずか2件で、逆に男性の方が発言が多いことを示した研究は34件あった。

実は、ある人の発言が多いかどうかは、その人の性別よりも地位に関係していた。研究チームは、発言が多い人は高い地位に就いていることが多いと結論している。仕事の場面では、地位が高い人物は男性の方が多い。男性が大多数のJOCの会議ではおそらく、男性の方が高い地位にあり、話す量も多いだろう。

女性はおしゃべり好きだというステレオタイプは世間一般に広まっており、そう考えているのは森会長だけではないはずだ。例えば、教室では女の子よりも男の子の方が発言の量が多いことが分かっているが、どちらの発言が多いかを尋ねられた教師は、女子の方が多いと回答。教師らも森会長と同じ、誤った認識を持っていることが分かった。実際には、教師から発言の機会を与えられることが多かったのは男子の方だった。

さらには、女性が発言をすると、主張が強すぎるとして反発を生むこともある。学術誌アドミニストレーティブ・サイエンス・クオータリーに掲載された2011年の論文によると、頻繁に発言する役員が男性だった場合は能力が高いとみなされる一方、女性の場合は能力が低いとみなされる傾向があった。
次ページ > 競争意識も男性の方が高い傾向

編集=遠藤宗生

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テクノロジー

2021.02.01 11:30

Clubhouseのここがすごい。Zoomとの推定差異から考えてみた

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24日のシリーズBラウンドでの資金調達の発表を受け、日本国内でもツイッターのトレンド入りなどで急速に話題になっているClubhouse。「声の扱い方が一体Zoomとどう違うのか?」を考えてみた。

下記は、一般のビジネスパーソン向けに技術的な内容を一部デフォルメしているので、技術系読者にとっては物足りない結果となるがご了承されたい。

結論から言うと、声被りをしない大きな理由はスピーカー(話者)間の遅延の小ささに由来している。インターネットを介した通話をおこなう場合、実はスピーカー間はリアルタイムに通話していない。データが世界中を飛び回って受信者に送られてきているので、テレビのニュースで海外特派員とのやり取りほどは気にならないが、若干の遅延が常に発生している。

人間の脳は10ms(1/100秒)とか20ms(2/100秒)程度の遅延から違和感を感じ始めると言われており、最近5Gの文脈で1ms(1/1000)遅延を目指すというキーワードで通信キャリア各社が努力をしていると聞くのはこれが理由である。

日常会話をしている場合、相手の発話終了などを感じ取って自分の発話を開始するし、相手の発話開始を感じ取って自分の発話を終了することによって、声被りを防いでいる。しかし、インターネットを経由してデータ受信の遅延が発生すると、コンマ数秒単位の発話終了に対する認知の遅れが発生し、これが声被りを生み出す原因となっている。

このデータ受信の遅延を減らす努力によって、インターネット通信における会話のリアルタイム性を高め、人間のコミュニケーションをより自然な声被りの少ない状態にすることができる。

どうやって遅延を減らしているのか?


では、この遅延を減らす努力をClubhouseがどのようにおこなっているか推定してみた。

周辺の技術者の間でおこなわれたパケット解析の結果や討議などを鑑みると、ClubhouseはUDPという、リアルタイム性が高く、データを垂れ流しする通信方式を利用して、通信をしていることが推測出来る。

当初、端末間を直接つなぐP2Pの仕組みでやり取りしていることが想定されていたが、パケット解析の結果、接続先がほとんど1カ所に集約されていることからこの考えは否定された。

例えば、スピーカーが「マイクのテスト」と発言した際に、通常インターネットで利用されているTCPという通信方式の場合は、何度かのデータのやり取りをした後に、「マ、イ、ク、の、テ、ス、ト」の発話データがすべて集まってから音声が再生される。一方で、UDPという通信方式の場合は「の」の発話データが欠落した場合でも、「マ、イ、ク、(無音)、テ、ス、ト」と即座に再生される。
次ページ > 送信開始までの遅延を減らすことが可能な理由

文=久池井淳 編集=石井節子

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2021.02.04 11:30

グーグルクラウドは年間5900億円の赤字、アマゾンのAWSに大敗

Photo by Adam Berry/Getty Images

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米グーグルの持ち株会社アルファベットは、2月2日の2020年第4四半期決算発表で、初めてグーグルクラウドの営業損益を公開し、同部門の年間売上高が135億ドル(約1.4兆円)で、前年比46%増だったことを明らかにした。

しかし、グーグルクラウドの2020年通年の収支は56億1000万ドル(約5900億円)の赤字だった。同部門は第4四半期にアナリスト予想の38.1億ドルを上回る38億3000万ドルの売上を記録したが、12億4000万ドルの損失を出していた。

アルファベットは、2019年のグーグルクラウドの売上が89.1億ドルで、損失が46.4億ドルだったことを示唆した。

これらの数字は、クラウド業界に詳しい人にとっては驚きではないだろう。調査企業カナリスのデータによると、2020年第3四半期の世界のパブリッククラウドコンピューティング市場において、首位のアマゾンのAWSのシェアは32%で、2位のマイクロソフトのAzure が19%、3位のグーグルクラウドのシェアはわずか7%だった。

アマゾンのAWSは収益面でもグーグルクラウドを圧倒し、2020年に約130億ドルの利益を生み出していた。

しかし、グーグルクラウドは2018年から元オラクル幹部のトーマス・クリアンの指揮下で、事業拡大に注力し、2020年に複数の大手企業と契約を結んだほか、先日はフォードと数億ドル規模の契約を締結した

グーグルクラウドは近年、ビジネスモデルを再編成し、AWSやマイクロソフトのAzureからシェアを奪おうとしている。

アルファベットのルース・ポラットCFOは2日の決算発表で、営業職や技術職の採用を継続することを示唆した。グーグルは2020年に約1万6000人の従業員を新規採用した。

スンダー・ピチャイCEOは、グーグルクラウドのスケーラビリティを拡大するために、「規律ある投資」を支持していくと述べた。

編集=上田裕資

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