若い女性がホストクラブに通い、売掛金(つけ払い)で多額の借金を抱え、国内外で売春する事態が問題視されている。女性客が被害を訴えるケースは少ないが、キャバクラは問題視されないのか。そもそも自業自得ではないか─。こんな疑問をつぶやくと、悪質ホストクラブの被害防止に取り組む立憲民主党の山井和則衆院議員が声をかけてきた。「今晩、暇ですか。歌舞伎町に行きましょう」
6月17日午後7時前。待ち合わせに指定された新宿区立大久保公園。公園は柵で囲まれているが、その中は中高年の男性がたむろしている。かなりの数だ。異様さに圧倒されていると、スーツ姿の山井氏が駆け寄ってきた。
「少し歩きましょうか」
公園の周囲には若い女性が等間隔に立っている。スマートフォンをいじったり、隣同士で会話したりしている。中年男性に話しかけられている女性もいる。彼女たちは売春相手を探す「立ちんぼ」だった。
数歩先をスタスタ歩く山井氏が「解説」する。
「彼女らにとって人気が外国人客。日本語をしゃべらないから私服警察官ではない可能性が高いんです」
立ちんぼは取り締まりが強化されたと聞いたが─。
「事前に情報が出回るんです。『19時に来るぞ』みたいに。そこの時間は移動して、また元に戻ってくるんです」
苦い表情を浮かべる山井氏。立民は昨年秋以降、国会質疑で悪質ホストクラブ問題を繰り返し取り上げ、歌舞伎町で国会議員による視察も重ねている。
山井氏は「立ちんぼ」の表現についても違和感を唱える。「差別用語で、被害者の方々が怒っている。好きで売春しているというイメージがあるからです。正確には『ホストから性を売るように強いられている女性たち』なんです」。
公園を一周すると、山井氏が「おおっ」と清掃活動する一団にしゃべりかけた。その1人、清水葵さんは一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会」(青母連)で広報を担当している。青母連は悪質ホストクラブを巡るトラブル相談に応じる団体で、現在同時並行的に70件以上の案件を抱えているという。
公園前の事務所の中で清水さんに実態を聞いてみた。
──女性たちが公園の周囲に立っていました
「だいたいの子がホストにはまっているんです…」
──相談はどんな人ですか
「『ホストから抜けたい』という相談も増えているが、8割は保護者が占めます」
──「自業自得論」をどう思いますか
「一般にメンタルが弱い子、家庭環境が悪い子がホストにはまるイメージを持たれがちですが、どんな子がはまってもおかしくない。医学部の学生、親が裕福な子、教師の家庭の子もいるんです」
──どんな手口なのか
「ホストクラブは『初回無料』と入りやすい環境を用意して、SNSを使って女の子の心に入り込んで…はまらせる手法はシステム化されている。10代や20代の女性に風俗以外で返せない借金を抱えさせて。ホストにはまって日本人女性が海外で売春婦としてみられる状況になっているんです」
清水さんも苦い表情を浮かべつつ、淡々と説明する。
海外への出稼ぎ売春は香港や韓国、マカオ、豪州、米国で多いといわれる。韓国やマカオで海外売春した人の報告は現地は花魁(おいらん)のようなミニスカートをはいた日本人女性しかいなかったという。
「昔のホストは女性社長などお金を持っている人を選んでいました。それが新型コロナウイルス禍を機にガラッとターゲットが変わって、若年の女性を狙う状況になっている」
山井氏は事務所の外で別件で「陳情」を受けていたというが、戻って、切り出した。
「風俗で働かざるをえなくなった女性が増えている。しゃれじゃない。飛び降り自殺した女の子もいる。そこまで報道してもらわないと。それだけ恐ろしい世界なんです」
山井氏が問題視するのが、ホストを美化しているメディアの風潮だという。(奥原慎平)=(下)は7月2日正午にアップします。