拍手の正体、両手がぶつかりあう音じゃなかった 実験3年で明らかに
拍手の音の主な正体は、両手がぶつかりあう音ではない――。そんな驚きの事実を米日の研究チームが明らかにした。空きびんの飲み口に息を吹き込んだときに音が鳴るのと同じ現象だという。成果は米科学誌フィジカル・レビュー・リサーチ(https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.7.013259)に載った。
応援や共感を伝えたり、感動や喜びを表現したり、子どもたちが音楽に合わせたり、拍手や手拍子は、とても身近なジェスチャーだ。しかし、人の手のひらというやわらかいもの同士の衝突と音波の伝わりがからんだプロセスは複雑かつ不安定で、音が出る仕組みや音の特性は、詳しく分かっていなかったという。
米コーネル大などの研究チームは、人の手や手のレプリカを使い、拍手するときの動きや音、両手の間の空洞の空気圧の変化、空気の流れを、高速カメラや録音機器などで同時に記録して調べた。
その結果、手と手がぶつかった瞬間はほとんど音がせず、両手の間の空洞の空気が、親指と人さし指の根本のすき間から噴き出す時に音が生じると分かった。また、その音の周波数は「ヘルムホルツ共鳴」と呼ばれる現象の理論式から導かれるものと一致した。
ヘルムホルツ共鳴とは、開口部のある容器の中の空気が、圧縮と膨張を繰り返し、ばねのように振動することで、特定の音が大きく聞こえる現象だ。空きびんなどの容器の飲み口に、息を吹き入れたときに「ぼーっ」と音が鳴るのが身近な例だ。容器の体積や、飲み口にあたる開口部の面積などで、音の周波数が変わる。
拍手では、「両手の間の空洞」が容器、「親指と人さし指の付け根にできるすき間」が開口部に対応する。シリコーンでつくった手のレプリカで、空洞部分の体積や開口部の面積をさまざまに変えて実験したところ、ヘルムホルツ共鳴の理論式から導き出せる周波数とよく一致したという。
「物理学の美しさを再認識した瞬間だった」
目からうろこの結果だが、研…
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- 【視点】
記事を読んで、試しに親指と人差し指をくっつけて拍手してみたら、いつもの音が出せず、なるほどと思いました。また、立食パーティーなどでグラスをもったまま拍手をしたいときに、グラスをもった手の腕を逆の手でたたいてみても、「ペシペシ」と鳴るだけでいい音が出せずにいたのですが、指で腕をたたくのではなく、親指を開いて手のひらを心持ち丸めて腕をたたいてみると、拍手と同じような音が出せることがわかりました。これは今後の立食パーティー時に役立ちそうです。
…続きを読む - 【視点】
拍手の音が出る具体的なしくみが,これまで詳しくわかっていなかったこと自体が面白いと感じました。これほど身近に,未解明の現象があることにおどろきました。しかも,明らかになったしくみによれば,拍手の音には,手のひらの内側にできた空洞から,外側に空気が吹き出すときに生じる共鳴現象がかかわっていたとは。拍手を奏でる私たちの手のひらは,天然の打楽器であるだけでなく,天然の管楽器でもあったといえそうですね。 映画『X―MEN ファイナルディシジョン』のキャラクターの特殊能力からインスピレーションを得て研究が始まったという話も,思わずうれしくなります。好奇心さえあれば,科学への入り口は,私たちの身の回りにたくさん転がっているんですね。素朴な好奇心にまっすぐしたがって研究を進め,世界で誰も知らなかった科学的事実を突き止めた科学者たちに,大きな拍手を送りたいです。
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