「石破首相では勝てないという民意」 4者会談、口火を切った麻生氏
23日午後2時、歴代総裁の肖像写真がぐるりと囲む自民党本部4階の総裁室。石破茂首相は麻生太郎、菅義偉両元首相、岸田文雄前首相の3氏と向き合った。現職首相と歴代首相経験者が一堂に会するのは極めて異例だ。
室内に緊迫した空気が流れる中、麻生氏が口火を切った。
「石破首相では選挙に勝てないという民意が示された」
首相が「これから選挙の検証、分析を行う」と釈明すると、出席者からは「党内で色んな意見が出ており、選挙の総括に時間をかけていては党内に亀裂が入る」「バトンタッチするにしても、続けるにしても、この先どうするのかを示さないといけない」といった厳しい声が相次いだ。
出席者の1人は首相との会談後、こう語った。「首相は辞めるとも続けるとも言わなかったが、続投を容認する雰囲気では全くなかった」
退陣論を和らげたい思惑だったが
石破茂首相と歴代首相経験者による異例の4者会談は冒頭、同席した森山裕・自民党幹事長の説明から始まった。まず両院議員懇談会を開くこと、そこで参院選の総括をする組織について諮ること――。今後予定するスケジュールを述べていった。
参院選で大敗し、「必達目標」としていた与党過半数を維持できなかった首相としては、党内の有力者から続投への理解を取り付けて、吹き荒れる退陣論を少しでも和らげたい思惑があった。首相側近は前日、「よかった。なかなかあの4人が集まることはない」と会談の日程が決まったことに安堵(あんど)していた。
だが会談は、首相がもくろんだ、続投を容認するような雰囲気ではなかった。
「参院選の総括はできるだけ早くしなければならない」「党員や地方組織、友好団体にもいろいろな意見がある。丁寧に耳を傾けるべきだ」。出席者からは意見が相次いだ。
参院選の分析や検証を進めると繰り返し説明する首相に対し、この先どうするのか見通しを示す必要があると迫った出席者もいた。
会談後に記者団の取材に応じた森山氏によると、4氏は「党の現状に強い危機感を持って臨み、党の分裂は何としても避けるべきだ」との考え方を共有した。最後に森山氏が「今後も必要に応じ、総裁経験者の方々に協議をお願いしたい」と呼びかけ、会談を終えた。
森山氏は首相の進退が議論されたかを記者団に問われ、「全く議論になっていない」と否定。「首相はいつまで政権を続けるべきだと考えるか」との質問には、「いま申し上げることは遠慮する。そんな簡単な話ではない」と語気を強めた。
誤算だった関税交渉の決着
首相にとっては、この日朝にもたらされた思わぬ「吉報」も誤算だった。首相が、「国難とも言うべき厳しい状況」として続投する理由の筆頭に挙げていた日米関税交渉の決着だ。
参院選翌日の21日の記者会見で首相は、米国の関税措置、物価高、首都直下型地震などの自然災害、安全保障環境を挙げて、「このような厳しい状況の中にあって、いま最も大切なことは、国政に停滞を招かないことだ」と強調していた。
そのわずか2日後、トランプ米大統領が日本への相互関税を15%とすることなどで合意したと発表した。自民党内では政権にとって最大の懸案事項に道筋がついたことで、首相の続投理由は失われたとの見方が一気に広がった。
歴代首相経験者との会談に先立って読売新聞や毎日新聞が「首相が退陣の意向を固める」などと報じると、首相は周囲に「辞めるなんてことはどこにも言っていない。誤報だ」といらだちをあらわにした。
ただ、退陣を求める党内の動きは日増しに強まりつつある。会談で首相と麻生太郎元首相らが一致した「党の分裂を避ける」には、首相が続投の意向を改めるしかなくなる可能性も高まっている。
仮に党内の反発を収めたとしても、野党各党が参院選で大敗した石破政権への協力を否定するなか、衆参で過半数割れした国会を切り抜けるのは困難だ。側近の1人は「普通は、続けるなんてとても言えない状況」と心配する。
首相と向き合った首相経験者の3氏も濃淡はあるものの、続投は厳しいとの認識だ。
党内唯一の派閥を維持する麻生氏は、昨年の自民党総裁選の決選投票で首相ではなく、高市早苗前経済安全保障相を推した。次期総裁選の出馬に意欲を示す高市氏はこの日、4者会談を終えた麻生氏の国会内の事務所を訪ね、約20分、意見交換した。
関税交渉という大義名分を失い、続投容認と退陣要求とで党が引き裂かれる事態を避けるために、首相に残された道は確実に狭まりつつある。
4者会談後、首相は退陣論を牽制(けんせい)するかのように記者団に「私の出処進退については一切、話は出ていない」と強調した。だが裏を返せば、続投を支持する声もなかったことを意味している。2分ほどの記者団とのやりとりの最後に、首相は退陣報道について、「報道されているような事実は全くございません」と改めて強く打ち消し、わずかに笑みを浮かべて党本部を後にした。
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