燃える街、人々の泣き叫ぶ声。これはまるであの時のようだった
記憶が断片的で何があったのか分からない
「嘘だ…嘘だ…」
「これ全部…俺がやったのか…?」
俺はただ現状を否定するしか出来なかった
「…要くん」
愛しい人の声が聞こえた
それだけで俺の中に救いが芽生えた
「桜花!?無事だったか!?」
「状況を説明してくれないか?」
俺は桜花の肩を掴み必死に聞いた
だが彼女は何も言わなかった、何もしなかった
ただ俺に肩を揺さぶられてるだけだった
「……」
「桜花…?」
桜花は俺の問いかけに反応して
虚ろな目で俺の目を見た
「裏切り者」
…その言葉で全てが壊れた
「……ぁ」
俺から出たのは嗚咽にもならない吐息だけだった
「無事だったかって…?何言ってるの?」
ああ、嫌だ。聞きたくない。辞めてくれ…
「全部」
ふと耳元に声が重なる
『全部』
聞きたくない言葉が俺を定める
『お前がやったんだ』
耳元に悪魔の様な声が聞こえた
見たく無い光景、知りたく無い現実、聞きたく無い声
目を逸らしたくて、俺はしゃがみ込み、耳を塞ぎ、目を瞑った
人が焼け焦げる臭い、叫び声、それらが消えるまでどれくらい経っただろうか
恐ろしくなるほど静かになり、俺は恐る恐る目を開けた
暗い、暗い、何も無い…全ての空間が闇に包まれていた
俺は困惑していたがそれはすぐに恐怖に変わった
指先、足元、俺の手が、闇に溶け出した
闇にはとてつもない憎悪と怒りが込められており、一体化すると自分の心が無くなる気がして、それがとても怖かった。
逃げようとしたが足が既に溶けたせいで動けなかった
俺は抵抗虚しく闇に包まれ憎悪と怒りの渦に取り込まれた
たったそれだけ。それだけなのに…
「うわあああ!!!」
俺は飛び起きた、ドクドクと全身が脈打ちまともに呼吸が出来なくて嫌な汗が出る
そうだ。夢だ。理解しようとしているのに心が現実と夢を重ねてしまう
腹部から猛烈な吐き気が込み上げてきて急いでベッドから出ようとしたが
足が毛布にもつれてベットから床に倒れこんでしまった
「ど…どしたの要くん…?」
俺の大声にベットの軋み、横で寝ていた桜花を起こしてしまい
俺はさらに焦った。だがどうする事もできなかった
「う…げぇ…っ」
ゲポゲポとえずき俺は床に胃の内容物を吐き出してしまった
「要くん!?大丈夫!?」
桜花は飛び起き、俺の背中をさすったが気づいたらその手を払い除けていた
「……あ、……悪い、そんなつもりじゃ…」
「ううん、ごめんね。びっくりしたよね」
違う。怖かったんだ。俺を取り込んだ闇が、触れた事で桜花に移っていかないか…
いや、あれは、ただの…悪い夢だ。まだ混乱しているのか?
「とりあえず、水持ってくるね。あと吐いたのも片付けるから座ってて。大丈夫だから」
桜花にそう言われたのに俺はその場から動けなかった。戻って来た桜花は水を俺にわたし、吐いたそれを片付け、俺の横に座った
「嫌な夢みたの?」
「………すごく嫌な夢だった」
情けないが怖かったとは言えなかった
桜花が俺の手に触れた。それだけで俺の体は強張り、震えた
「大丈夫、大丈夫だから…」
俺に言い聞かせ、しっかりと俺の手を握った
『大丈夫』そう言われてるたびに心が落ちを取り戻してきた
大丈夫…なのかな…いいや、違うだろ
町を燃やし、人の人生を壊し、人を殺した俺に幸せが来るなんておかしいだろ
今更更生したって罪は消えない。消える訳が無いのだから
見た夢はきっと警告だ。
けれど、俺はきっと彼女の慈愛を食い続け、彼女を愛し汚し続けるのだろう。それが尽きるまで、ずっと
光に触れるには穢れすぎているのだから、どんなに償っても足りないのだから…だから、
彼女も望んでいるのだ。優しい光を愛してもいいだろう
俺は桜花の手を握り返した
傲慢な考え方を書くの難しいですね
嘔吐表現あるので注意